ウーピー・ゴールドバーグにアポなし直談判へ 神戸拠点バンドの新曲、ハリウッド映画の挿入歌なるか

米ハリウッド映画の挿入歌を目指して単独で渡米するクマガイタツロウさん=神戸市中央区東川崎町1

 やることすべてに本気なのがバンド「ワタナベフラワー」のクマガイタツロウ(44)。神戸市の全区に住み、神戸まつり応援隊長を務める神戸の「顔」が7日、単身渡米する。手がけた新曲をハリウッド映画の挿入曲にするためだ。主演俳優に自作のミュージックビデオを見てもらう作戦だが、アポなし、ツテなし。「空振り三振でもネタになればええねん」。一発逆転のホームランはあるのか。

 曲は「いかにかっこつけずに素直な言葉で表現するか」が信条。NHK「みんなのうた」での採用実績はあるが「このままでは世界がうねる曲は生まれへん」。もんもんとする中、動画投稿サイトで人気が爆発した歌手のピコ太郎を見て「これしかない」とある作戦を思いつく。

 昨年、大好きな映画「天使にラブソングを」に続編ができるとの報道を知り、完成させたばかりのゴスペルソング「泣きなさんな」を映画の挿入歌に-と考えた。手段は、主演のウーピー・ゴールドバーグさんにネット上で「いいね」とつぶやいてもらうしかない。名付けて「ピコ太郎作戦」。

 海外で暮らす妻と長男に歌詞を英訳してもらい、「通知表が1だった」英語のレッスンを受ける。映画をモチーフにミュージックビデオも制作。「否定から入る歌は嫌い」と「泣きなさんな」との歌い出しを「Show me your smile」に変えた。

 目指すは、ロサンゼルスで開かれる「第96回米アカデミー賞授賞式」の会場近く。真っ赤な侍装束と番傘姿で1週間通う。ゴールドバーグさんが日本好きとの情報が頼りだ。関係者や観光客の写真撮影に応じ、スマホでミュージックビデオを見せる。「アメリカ人の話題になればもうけもん」

 周辺の封鎖を見越して会場に隣接するホテルを抑え、ラジオなどでつながった協力者が案内役を務めてくれるが、費用はすべて自腹。「こんなしょうもないことを応援してくれる人がおる。それがたまらん」

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 西宮市今津出身。小5の時に母親が家を出て行き、トラック運転手の父親は3日に1回しか帰ってこない。弟と2人で「近所のおじちゃん、おばちゃんに育ててもらった」。

 阪神・淡路大震災では自宅アパートが半壊。激震で目を覚ますと、父親が倒れかかった柱を一人で支えていた。命を失っていたかもしれない経験に「いつ死んでもええようにやりたいことをやる」と考えるように。大学を中退して音楽の道に進んだのもそのためだ。

 「神戸の顔」から「世界の顔」になれるか、ここ一番の正念場でも笑いは絶えない。(小西隆久)

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