豪政府、次期フリゲート候補に海自もがみ型護衛艦を選出 海幕長「日本の装備品への高い信頼の表れ」と評価

By Kosuke Takahashi

海上自衛隊のもがみ型護衛艦1番艦(FFM1)の「もがみ」(海上自衛隊)

海上自衛隊トップの酒井良海上幕僚長は3月6日の記者会見で、オーストラリア政府が同国海軍の水上戦闘艦隊の見直しの中で、次期フリゲートの候補として海上自衛隊のもがみ型護衛艦を選出したことについて、「我が国の装備品に対する高い信頼と評価の表れであると受け止めている」と述べた。

オーストラリア政府は2月20日、昨年4月の国防戦略見直しの勧告に応じて、豪海軍の水上戦闘艦隊能力についての独立した分析報告書を発表した。その中で、豪海軍艦の増強を目指して11隻の調達を計画する次期汎用フリゲートの候補として、ドイツのMEKO A-200型、三菱重工業が建造する日本のもがみ型護衛艦、韓国の大邱級フリゲートBatchIIとBatchIII、スペインのナバンティア ALFA3000の4つを順に挙げた。以下の画面がその部分の記述となる。

オーストラリア政府が2月20日に発表した同国海軍の水上戦闘艦隊能力についての独立分析報告書の中で、次期フリゲートの候補の1つとして名前が挙がった海自のもがみ型護衛艦(オーストラリア政府報告書より)

オーストラリア政府は分析報告書の中で、ドイツが設計して老朽化したアンザック級フリゲートに代わる、より高性能な新しい汎用フリゲートの取得を加速していると指摘、「この新しい汎用フリゲート艦の選択プロセスの基礎となる模範」として日独韓スペイン4カ国の艦艇を特定したと述べた。

「豪海軍の再編計画の中で、次期フリゲートの候補としてもがみ型護衛艦の名前が挙がっていることについてどう思うか」との筆者の質問に対し、酒井海幕長は6日の記者会見で、以下のように答えた。

オーストラリアは、地域の戦略環境が一層厳しくなっているという認識の下、海洋国家として水上艦隊の能力を強化し、開かれた安定的な海洋秩序に貢献をすると表明している。我が国とオーストラリアは基本的価値や戦略的利益を共有しており、今回の水上艦隊見直しについても、オーストラリアが地域の平和と安定に一層の役割を果たす上で極めて重要な取り組みと高く評価をしている。海上自衛隊としてもオーストラリア海軍と積極的に意見交換を図っていく所存だ。

なお、今回ドイツ、スペイン、韓国、日本のフリゲートが候補に挙げられたことについては報道でも承知をしている。

オーストラリアとして独自の情報でこれらの国のフリゲートをピックアップしたものと考えている。もがみ型について今回言及があり、候補にあがったことについては、我が国の装備品に対する高い信頼と評価の表れであると受け止めている。

●豪シンクタンクの見方

オーストラリア政府の分析報告書を受け、豪シンクタンクのローウィ国際政策研究所は3月1日、「オーストラリア海軍は10年後、日本のフリゲートを運用することでうまくいくかもしれない」と前向きに評価。過去10年間の日豪関係の着実な進展を踏まえ、「戦略的観点から見て、日本のフリゲートの選択は両国間の緊密な連携を強化することになるだろう」と指摘した。

さらに「もがみ型は、選ばれた4隻の中で最も速く、最も操縦しやすい船の1つであり、必要な乗組員の数も最少である」とも称えた。

マイナス面としては「日本には防衛輸出の実績があまりない」と指摘。しかし、「日本は米国と協力してきた長い歴史があり、オーストラリアと同様、装備の大部分が米国製だ。日本はまた、英国およびイタリアと提携したグローバル戦闘航空プログラム (GCAP)による主要な国際能力開発プログラムの分野にも参入している。おそらく、インド太平洋における均衡連合を拡大するための次のステップは、もがみ型を中心に構築された日豪フリゲート計画を通じたものとなるだろう」との見通しを述べた。

●朝鮮日報「豪政府、韓国の造船業界に参加を要請」

次期フリゲートをめぐって、オーストラリア政府は既に韓国にアプローチを始めたようだ。韓国紙、朝鮮日報は2月22日、「オーストラリア政府が、新型フリゲート3隻を海外に発注するなど、海軍戦力を強化する計画を明らかにし、韓国の造船業界に参加を要請したことが確認された」と報じた。

具体的には「オーストラリア政府は、新型フリゲート11隻のうち、まず必要な1次調達分3隻は韓国・ドイツ・日本・スペインの造船会社から調達する計画だといわれている。オーストラリア政府は、韓国企業としてHD現代重工業特殊船事業部にフリゲート事業関連の招請を行った」と伝えた。

韓国とオーストラリア両国の防衛・軍需産業協力が拡大する中、韓国外交部は4日、新しい駐オーストラリア大使に李鐘燮(イ・ジョンソプ)前国防部長官を任命したと発表した。韓国メディアは、国防部長官を務めたばかりの前長官が重要国の大使に抜擢されるのは極めて異例だと報じた。

豪州との関係においても、防衛産業を輸出産業の一大柱にしようとする韓国政府の並々ならぬ意気込みが感じられる。次期戦闘機の海外輸出など日本が防衛装備品の輸出問題でなかなか国内コンセンサスを得られずにもたつく中、防衛産業の海外進出をめぐっては韓国との差が開くばかりだ。

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© 高橋浩祐