大企業と中小企業で「生涯賃金」にどれくらいの差がある?

生涯賃金とは

人が一生の間に稼ぐお金を生涯年収と呼んでいますが、生涯賃金という表現になると給与所得者が勤務している間に稼ぐ賃金の総額になります。生涯賃金は、入社から退職までの期間に平均給与をかけることで計算します。

そのため、生涯賃金は勤務先や職種、業種、最終学歴などによって大きな差があります。つまり、生涯賃金の違いは勤続年数だけでなく、複数の要素が影響しています。

生涯賃金の計算

生涯賃金は、一般的に以下の計算式で計算します。

生涯賃金=平均年収×勤務年数

たとえば高卒の場合、「高卒の平均年収」に「19歳から定年退職年齢までの年数」をかけて計算します。勤務年数は、退職年齢が65歳であれば46年、大卒は42年となります。

大卒で65歳定年、平均賃金36万2800円、賞与割合18.5%と仮定すると、大卒の生涯賃金は以下のとおりです。

(36万2800円×12ヶ月+36万2800円×12ヶ月×18.5%)×42年=2億1667万8672円

生涯年収と生涯手取り

生涯賃金の他に、生涯年収や生涯手取りという指標もあります。生涯賃金は給与所得者を対象とした指標で、生涯年収は個人事業主なども含めた指標です。

また、生涯手取りは給与所得者の手取り金額をもとに計算したものです。収入や手取り、所得などの違いは以下を参考にしてください。

__◆収入

・給与所得者……会社からもらうすべての金額(源泉徴収票の支払金額)

・個人事業主……事業によって発生した売上金額

◆手取り……給与所得者の収入から税金と社会保険料を差し引いた金額

◆所得

・給与所得者……給与収入から給与所得控除を差し引いた金額

・個人事業主……収入から事業にかかった経費を差し引いた金額__

生涯賃金の条件別特徴

独立法人労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2022 ―労働統計加工指標集―」によると、学歴別・性別別の生涯賃金は以下のとおりです。

__◆学歴(60歳まで、退職金含まず)

・大卒……男性:2億6190万円、女性:2億1240万円

・高卒……男性:2億500万円、女性: 1億4960万円__

大卒・高卒別の差額は男性5690万円・女性6280万円、男性・女性別の差額は大卒4950万円・高卒5540万円です。つまり上記の統計では、性別よりも学歴による差額のほうが大きいことが分かります。

大企業と中小企業での生涯賃金の違い

性別や学歴によっても生涯賃金には格差が生じていますが、大企業と中小企業ではどれくらいの格差があるのでしょうか。性別や学歴も含めて図表1で比較したので参考にしてください。

【図表1】

独立法人労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2022 ―労働統計加工指標集―」生涯賃金など生涯に関する指標 をもとに筆者作成

※生涯賃金は「60歳で退職するまで同じ企業で働くフルタイムの正社員」が対象、 カッコ内は大企業との差額

もっとも大きな差額となったのは、大卒男性の大企業と小規模企業との差額8090万円です。これに性別と学歴も考慮すると、最大で1億4800万円(大企業・大卒・男性と、小規模企業・高卒・女性)も差があります。

また、中規模企業の大卒・男性と大企業の高卒・男性を比較すると、1320万円の違いしかありません。高卒は大卒と比べて4年多く賃金を得ていることを考慮するとほとんど差がないと言えるでしょう。

今回は比較していませんが、職種や職業によっても生涯賃金に差があるので、中小企業でも大企業以上の生涯賃金を得る可能性はあります。

大企業は平均の生涯賃金が高いが、中小企業でも学歴や職種によっては遜色ない生涯賃金

一般的に、大企業は中小企業よりも生涯賃金は高い傾向にあります。それはベースとなる賃金が高いからですが、生涯賃金が高くなる要素は企業規模以外にもあります。

性別や学歴、職種によっても賃金は大きな違いがあるので、中小企業に勤務していても大企業と遜色がない生涯賃金をもらえる可能性はあります。中小企業に就職するときは、安定性だけでなく将来性も考慮して選択しましょう。

出典

国税庁 民間給与実態統計調査
厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況 学歴別
厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況 学歴別
独立行政法人労働政策研究・研修機構 ユースフル労働統計2022 ―労働統計加工指標集―生涯賃金など生涯に関する指標

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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