今年、株式投資で「新興国企業」を組み入れたいこれだけの理由【投資のプロが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

日経平均株価が史上最高値を更新するなど、盛り上がりをみせる株式市場。しかし、今年の世界経済は「大幅な成長率の低下」が見込まれています。こうした市場環境のなか、投資対象として「新興国企業が注目」だというのが、アライアンス・バーンスタイン株式会社のシニア・インベストメント・ストラテジスト穂谷栄一郎氏です。良好な運用成果を得るため「新興国企業」への投資が魅力的な理由をみていきましょう。

2024年のグローバル経済は「低成長」の見込み

――2024年のグローバル経済をどのように見ていますか?

穂谷「世界的に低成長になる年だと考えています。グローバルでのGDP成長率予想をみると、2023年が2.4%であるのに対し、2024年は2.1%に減速する見込みです[図表1]。とりわけ米国は大幅に低下する見通しです。

[図表1]ABによる世界の実質国内総生産(GDP)成長率(%)予想 過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。予想は今後変更される可能性があります。
2024年1月15日現在。数値は修正される場合があります。GDPは年率、前年比。
*東欧、中東、アフリカ(ハンガリー、ポーランド、トルコ、ロシア、南アフリカを含みます。)
出所:IMF(国際通貨基金)、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」。アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です)。

主要国の中央銀行はこれまで、高いインフレを抑えるために利上げを続けてきたわけですが、その影響が顕在化し、景気は減速する方向に進んでいるようです」

――いまだ利上げに至っていない日本のように、国や地域によって事情は異なりそうですね。

穂谷「そうですね。たしかにテーマとなる問題は各国で異なります。たとえば、日本は実質所得の減少を解消できるかが消費の動向を左右します。欧州は景気が低迷するなかでの緊縮財政がテーマです。

一方、デフレに陥る中国は、不動産セクターや地方政府の救済に時間を要しそうで、金融緩和といった景気下支えが予想されます。米国は消費が減速しつつも資産効果の残存などで堅調さもみられます。ただ、債務上限問題の再浮上といった財政不安も抱えているといった具合です」

国別ではなく、グローバルにまたがる成長分野に着目を

――世界経済が低成長であるなかで、着目すべき投資テーマはありますか?

穂谷「国別ではなく、グローバルにまたがる成長分野に着目すべきでしょう。たとえば、AI(人工知能)や自動運転、IoT、宇宙、次世代ヘルスケアといった新しいテーマは、たとえ国や既存の産業が低迷していても、投資が活発化し、関連企業のビジネス機会は堅調に推移するとみています。

成長分野は他にも多々あり、フィンテックやデジタル・トランスフォーマーション、次世代インフラ、最先端半導体などが期待を集めています[図表2、左]。

こうした成長分野はグローバル規模で成長するため、国をはるかに上回る成長率が予測されています。たとえば、ロボティクスに関連する市場は、2025年までに年率26%で成長を遂げる模様です[図表2、右]。

[図表2]各国/地域の主要な問題 過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。予想は今後変更される可能性があります。
2023年12月現在。
出所:AB

成長が期待できる企業は、新興国にも点在

――なるほど。こうしたグローバルで成長する分野に着目すると、大きな成長が期待できる企業がいろいろとありそうです。

穂谷「そうですね。成長分野で欠かせないキーとなる企業は、先進国のみならず新興国にも広く点在しています。むしろ新興国企業を中心とした分野もたくさんあり、たとえば最先端半導体で圧倒的な存在感を持つ台湾セミコンダクター(TSMC)は、その象徴的な企業です。

電気自動車(EV)のサプライチェーンを1つ取っても、代表的なプレイヤーの多くは中国をはじめとした新興国企業で、なかには新興国企業しかない工程すら存在します[図表3]。

以前であれば完成車メーカーは先進国企業が多くを占めていましたが、いまはサプライチェーン全体に新興国企業が広がっており、その分、ビジネス上の交渉力も増しています。

[図表3]中長期的なグローバル成長テーマ/各テーマの成長予測* 上記は例示目的であり、必ずしも達成されることを保証するものではありません。予想は今後変更される可能性があります。
*年平均予想成長率の各計算期間は、ロボティクス:2022~2025年、太陽光発電:2021~2030年、南米のオンライン旅行市場:2021~2026年、バッテリー需要:2021~2050年、新興国(除く中国及びスロバキア)のeコマース売上:2021~2026年、南米のデジタル決済:2021~2027年。
出所:バーンスタイン、ブルームバーグ MIR Databank, SNE Reserch,AB

――グローバル規模での成長テーマでは、影響力の強い新興国企業への投資も大切になりそうですね。

穂谷「次世代を意識した産業分野はそれぞれ異なるサイクルで成長していくため、たとえば、ビジネス特許や最先端技術を持つ先進国企業のポートフォリオに新興国企業を加えることで、投資における分散効果の高まりが期待できます。

また新興国は、現地市場の発展という面でも注目できます。たとえば、所得が軒並み伸びている新興国では、eコマース(電子商取引)が著しい成長を遂げています。それでもまだまだ市場は黎明期にあり、1人当たりの利用額でみると、中国と韓国を除く新興国は、先進国の約17分の1程度に過ぎません。

特に、南米は成長が期待されるエリアで、2027年の流通取引総額は約2,000億ドルと、2022年比で倍増する予想です[図表4]。

[図表4]各グローバル次世代分野のインベストメントチェーンにおいて欠かせない主要な新興国企業の例 上記の個別の銘柄・企業については、あくまでも説明するための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。
2023年9月現在。
出所:AB

――5年で倍増とはすごいスピードでの成長ですね。市場をつぶさに見ていけば、高成長が期待できる企業はまだまだありそうです。

穂谷「そうですね。世界株や国別の株価指数に連動する形で投資するだけではなく、世界経済が低成長でも期待が持てる分野やテーマの企業に厳選して投資することが、将来の良好な運用成果につながるのではないでしょうか」

――ありがとうございました。今回のお話からは、イノベーティブな投資機会がグローバルに点在し、インベストメントチェーンを見渡しながら、要となる企業に注目することが大切であることがわかりました。2024年は、成長テーマを考え、厳選した銘柄への株式投資を意識したいですね。

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穂谷 栄一郎

アライアンス・バーンスタイン株式会社

運用戦略部/責任投資推進室 シニア・インベストメント・ストラテジスト

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