家賃4,700円は破格だが…東大の「三鷹国際学生宿舎」が学生から「監獄」と呼ばれるワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもを東京大学に通わせるとなると、家賃、授業料、教科書代と、大学に通うための費用など、気になる人も多いのではないでしょうか? 都内は家賃が高いなかで、4,700円で暮らせる東大の「三鷹国際学生宿舎」があります。安さの裏側にはいったいなにがあるのか……著書『東京大学に3人の子どもを入れた 強い脳をつくる育て方――いつからでも、才能は伸ばせる! 』(自由国民社)より、高木美保氏が解説します。

東大での4年間に必要なお金

授業料と入学金は、受験料同様ほかの国立大学と同額です。

2023年現在、入学金は28万2,000円の一括納入。授業料は年間53万5,800円で、前期・後期に分けての納入となります。

我が家の場合、実際に支払ったのは長男の入学金と1年前期の授業料のみでした。次男と長女は入学金と授業料が全額免除でしたし、長男も1年後期から卒業までは、申請をして授業料は全額免除となったからです。

後は教科書代で、1冊数千円します。新品でそろえると結構な金額になるので、次男と長女はメルカリの古本を利用していました。大学構内でも、教科書の古本販売があります。古本でも、講義を受けるのに支障はありませんから十分です。古本を利用することで、教科書代はかなり安くおさえられました。

2次試験時には、すでに始まっている「家探し」

1番金額がかさむのは、家賃です。大学に近い立地だと、狭くて古いワンルームでも5万円はします。

東大の女子学生は、セキュリテイーのよい月8〜9万円のマンションに住んでいる人が多いようです。月々の家賃に加え、入居時にかかる礼金・敷金は家賃の4〜5カ月分です。

ですから入居の時は、大変な出費となります。

通学できない距離の地方に住んでいる受験生の多くの保護者は、2次試験時に一緒についていき、子どもの試験中に住まい探しをします。

東大に限らず多くの大学生協が「住まい探し」と称した催しを、2次試験の時に大学構内で開きます。たくさんの不動産屋さんが集まっていて、学生向け物件を数多く知ることができます。その時に下見もして、仮押さえをする人が多いようです。

高木家は親戚と学生宿舎を頼りに

我が家の場合、長男は自分で交渉して、元夫の実家に住まわせてもらっていました。高齢の義母が埼玉で一人暮らしをしていましたので、長男は家賃や光熱費用がかからず、義母にとっては安心というお互いにメリットがあったのでは、と思います。

次男は東大の学生宿舎に申し込みました。

東大には前期課程(1・2年生)生向けの「三鷹国際学生舎宿舎」と後期課程生(3年生以上)向けの「豊島国際学生宿舎」と「追分国際学生宿舎(現在は募集停止)」そして2020年に新しくできた全課程向けの「目白台インターナショナルビレッジ」があります。

編入生は3年生扱いになるため、後期課程生向けの宿舎に申し込みました。2021年秋で募集停止になった追分国際学舎と、豊島学生学舎に申し込み、本郷キャンパスから徒歩圏内の追分国際学生宿舎に入居できました。

宿舎に入れるかどうかは、経済困窮度によるようです。

追分国際学生宿舎は入居時の保証金が5万円で、家賃は月3万6,000円です。

我が家は「特に経済困窮度が高い」と認定され、大学から月1万6,000円の支援を受け、家賃は月2万円でした。

本郷キャンパスから徒歩圏内、管理人さんもいてオートロックというセキュリテイーばっちりのマンションで月2万は、破格です。本当にありがたいです。

ネット環境は整っているのでルーターをつなぐだけ、費用もかかりません。水光熱費は個別契約・個別支払いで、月1万円ほどらしいです。各部屋にお風呂・トイレ・IHクッキングヒーターがあり、各階に共同の広いキッチンや冷蔵庫もあります

使い勝手の良くない「女子学生向けの支援制度」

長女は、現在は前期課程学生向けの「三鷹国際学生宿舎」に住んでいます。ここは家賃4,700円と都内とは思えない破格の寄宿料ですが、安いのには理由があり、後述します。

ここで、東大の女子学生向けの支援制度について触れておきたいと思います。

東大には女子学生を増やす目的で創設された、女子学生向けの住まい支援制度があります。駒場キャンパスから通学時間が90分以上の女子学生に月3万円の家賃補助が出るのです。

でもこの制度は、残念ながら使い勝手が良いとは言えません。

まず、合格発表の前に、大学側がリストアップした住まいの中から、10戸まで希望を挙げます。つまり、補助を受けたい場合は、リストアップされた住まいの中から選ぶしかないのです。

リストにある物件は、「女子学生向けの住まい」ということでセキュリテイーは万全ですが、家賃が8万から12万と高額なところばかり。月3万円の補助を受けても、家賃だけで毎月5万円以上はかかります。

入居時の礼金敷金が30万円以上、さらに管理費や維持費も支払わなければなりません。

また、採用システムも微妙で、希望の提出期限は合格発表より前です。

3月10日、合格発表の後に合格者の中で抽選が行われます。補助が受けられるか受けられないか、さらにどの住まいになるか、が抽選で決まるのです。

そして3月10日午後、抽選結果の連絡が入ります。もし抽選から外れたら、3月10日以降に、自分で住まいを探さなくてはなりません。

東大の合格発表は、国立前期日程の大学の中で最も遅い日です。3月10日までには東京の他の大学はほぼ発表が終わっているため、東大の発表の時には、学生向けの物件はかなり少なくなっているのです。

さらに、支援を受けられるのは、前期課程の2年間だけです。3年生以上は、全く補助はありません。

このように微妙な点もある制度ですが、長女は現役の時は申し込みました。2回目の挑戦の時は「浪人で余計にお金がかかったし、三鷹でいい」と、はじめから「三鷹国際学生宿舎」一択でした。

この、東大生からは「監獄」とも呼ばれている「三鷹国際学生宿舎」。まず立地が悪い。どの最寄り駅へも徒歩40分。駒場へは自転車20分で吉祥寺まで行き、井の頭線で25分。

周辺に店もなく木と草ぼうぼうの広い敷地に、鉄筋3階建ての6棟。効きが悪く電気代のかかる古いエアコン、硬いベッド、机、クローゼット、ミニキッチンが備品。極めつけは狭いシャワー・トイレユニット。シャワーを使う時はトイレの上に洗面台を移動させるという謎の構造で、シャワーすると洗面台はびしょぬれ。

寄宿料4,700円、水光熱費を含めても1カ月で1万円ほどで、ハードな環境と格安さが「三鷹に住むことがアルバイト」と言われるゆえんです。

留学生が多く日本人女子学生は少ないのですが、1・2階が男子用で、女子用の3階入口はオートロック。事務員も常駐しているので、女子にとって安心感はあります。

もし、東大受験で寮住まいを考えているなら、見学することをお勧めします。事前に予約をすれば、見学することができます。

見学した上で、住むことができそうで、不便さを我慢できるなら、我が家のように経済的に厳しいご家庭は、候補に入れられても良いかと思います。門限がなく自由度は高い上、家賃は破格の安さですから。

高木 美保

学習塾・スクールオーク代表

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