父殺害の元医師「無罪主張」も控訴棄却 二審も懲役13年判決

山本直樹被告の控訴を棄却した大阪高裁(3月6日 大阪市/若林理央)

ALS患者を本人の依頼で殺害したとして嘱託殺人の罪に問われている元医師が、この事件とは別に自分の父親(当時77)を殺害した罪に問われた裁判で、6日、大阪高等裁判所(長井秀典裁判長)は控訴を棄却、一審判決と同様の懲役13年を言い渡した。

この事件は、山本直樹被告(46)が自らの父親である靖さんを殺害した疑いで起訴されたもので、医師の大久保愉一被告(45)とともに嘱託殺人の罪に問われている終末期医療の倫理性を問う「ALS患者嘱託殺人」の審理とは異なるものだ。

これまでの概要

事件の背景にあったのは、被害者で山本被告の父親である靖さんの精神や歩行に障害があり、母親の山本淳子被告(79)と共に疎ましさを感じていたことである。

のちにALS嘱託殺人でも共謀することになる大久保被告から父親の殺害を提案された山本被告は淳子被告、大久保被告と共に計画を立てた。入院していた靖さんに対し、「転院する」と嘘をつき退院させ、なんらかの形で殺害するに至った。

山本直樹被告(SNSより)

一審京都地裁で懲役13年の判決を受けた山本被告は、判決を不服として本年2月20日までに控訴。大阪高裁で開かれた控訴審で、弁護側は改めて山本被告の無罪を主張し、検察側は控訴棄却を求めて即日結審していた。

無罪を主張し控訴

山本被告は事件当日、大久保被告に対し殺害計画の中止を提案したとして、靖さんは大久保被告が単独で殺害したと無罪を主張。

検察側は「大久保被告が山本被告に説得されたにもかかわらず、山本被告の父親と大久保被告が2人きりになった短時間で殺害に及んだのは不自然であり、なおかつ事件後、メッセージで山本被告と母親は喜びの意を分かち合い、山本被告から大久保被告に感謝の意を示していた」と指摘していた。

医師の能力を悪用した犯罪

6日に開かれた判決期日で裁判長は、「長年の父親の入退院など動機・経緯に同情の余地はある」と述べた上で、「医師としての知識と技術を使い、安易に人の命を奪ったとして殺人の有期刑は妥当だ」と判決文を締めくくった。

判決を聞いているあいだ、山本被告は時に小さく相づちを打ったり、首をかしげたりしていた。傍聴席から見ると、うなだれた様子にも感じられたが、裁判長が、最高裁に上告できることを告げた時、かすかにうなずいた。

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