フーシ派の船舶攻撃で初の死者　アデン湾航行の貨物船にミサイル

アメリカ中央軍（CENTCOM）は6日、イエメンを拠点とする武装組織フーシ派が同国南部沖を航行していた貨物船をミサイル攻撃し、乗組員3人が死亡したと発表した。フーシ派は昨年11月から、同海域で船舶への攻撃を続けているが、死者が報告されたのは初めて。

攻撃を受けたバルバドス船籍の「トゥルー・コンフィデンス」の乗組員は船を放棄して避難した。船は炎上したまま漂流した。

この貨物船はサウジアラビア・ジッダから中国・連雲港市に向かっていたことが、追跡データで示されている。

中東での作戦を統括するCENTCOMによると、貨物船は現地時間6日午前11時30分ごろ、アデン湾で攻撃された。乗組員3人が死亡し、少なくとも4人が負傷したという。

「フーシ派によるこうした無謀な攻撃は、国際貿易を混乱させ、世界の船員たちの命を奪っている」と、CENTCOMはソーシャルメディアに

した。

船の所有者と管理者のスポークスマンは声明で、攻撃があったのはイエメンの都市アデンの南西約50カイリ（約93キロ）の海上だと説明した。

イランの後ろ盾を受けるフーシ派は、パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスを支持している。同地区ではハマスとイスラエルとの戦闘が続いており、フーシ派はパレスチナ人を支援するために船舶を攻撃していると主張している。

フーシ派は声明で、当該船舶の乗組員が、フーシ派の海上部隊からの警告を無視したと主張した。

貨物船が攻撃された後の6日夕、フーシ派が運営するイエメンのテレビ局「アルマシラ」は、フーシ派が支配する紅海に面したイエメン・フダイダにある国際空港が2度、米主導の空爆の標的になったと報じた。

在イエメン英国大使館は、船員の死は「フーシ派が国際海運に対して無謀にもミサイルを撃ち込んだことによる、悲しく、しかし避けられない結果」だとし、攻撃を止めなければならないと強調した。

米英当局は当初、2人が死亡し、6人が負傷したと報告していた。

貨物船の乗組員はインド人1人、ヴェトナム人4人、フィリピン人15人の合わせて20人。ほかに、スリランカ人2人とネパール人1人の武装警備員も乗船していた。

進路変更を要求か、現場海域で衝撃音と煙

イギリス海運貿易オペレーション（UKMTO）によると、トゥルー・コンフィデンスは「イエメン海軍」を名乗るグループからVHF無線で、進路を変更するよう指示された。

その後、付近を航行していた複数の船舶から、大きな衝撃音がして煙が上がっているとの報告があった。

貨物船は被弾して損傷を受け、米主導の国際海上連合の艦艇が貨物船と乗組員を支援していると、UKMTOは説明した。

欧州連合（EU）の「アフリカの角海事安全センター」（MSCHOA）も、救助と引き揚げ作業が進行中だとした。

フーシ派は声明で、トゥルー・コンフィデンスは「アメリカの船」だと主張しているが、管理者のスポークスマンは「現在、アメリカのいかなる団体とも関係がない」としている。

貨物船は現在、リベリアの海運会社が所有し、ギリシャ企業が運航している。AP通信によると、以前はアメリカの投資会社「オークツリー・キャピタル・マネジメント」が所有していた。同社はAP通信へのコメントを拒否した。

米国務省のマシュー・ミラー報道官は、米政府は引き続き、フーシ派の攻撃に対する責任を追及し、世界各国の政府にも同様の対応を求めると述べた。

「フーシ派は紅海を通過する罪のない民間人の安全を顧みず、無謀な攻撃を続けている。そしていま、フーシ派は、不幸なことに、悲劇的にも、罪のない民間人を殺害している」

イギリスのデイヴィッド・キャメロン外相は、「フーシ派による国際海運に対する無謀かつ無差別な攻撃を非難するとともに、攻撃の停止を求める」と述べた。

「我々は航行の自由のために今後も立ち向かっていく。我々の発言が本気であることを、行動で証明していく」

同海域で活動する米主導のタスクフォースは、できる限り多くのミサイルやドローン（無人機）を撃墜しているが、数があまりに多く、そのすべてを破壊することはできていない。

フーシ派はミサイルなどを無尽蔵に保有しているとみられる。そのため、フーシ派の発射場や弾薬庫、指揮統制所を標的にした米主導の空爆に効果があるのか、疑問が浮上している。

米軍は5日、イエメンから米駆逐艦「カーニー」に向けて発射された弾道ミサイル1発とドローン3機を撃墜した。

先月18日には、アデン湾でベリーズ船籍の貨物船がフーシ派のミサイル攻撃を受けた。貨物船は今月3日に沈没した。昨年11月から続くフーシ派の攻撃で船舶が沈没したのは初めて。

この貨物船には21トンの硝酸アンモニウム肥料が積まれており、環境に影響をおよぼす可能性を米軍は指摘している。