焦点:トランプ氏の資金集めに訴訟費用の逆風、大口献金獲得がカギ

Alexandra Ulmer

[ロサンゼルス 6日 ロイター] - トランプ前米大統領は、大統領選の共和党候補指名争いで15州の予備選などが集中した5日のスーパーチューズデーで圧勝し、厚い支持層が存在することを改めて証明して見せた。しかし、自身の訴訟費用や広告費用が膨らみ続ける中で、11月5日の本選で民主党候補指名が確実な現職バイデン大統領との本格的な対決に備えるためには、新たな大口献金者の取り込みが欠かせない。

これまでトランプ氏を支える力となってきたのは、多くの小口献金者たちだ。ただ、既に法廷で5億4000万ドル強の賠償を命じられている上に、なお係争中の訴訟における費用負担が増大するトランプ氏は、本選までのまだ長い選挙戦を乗り切る資金の確保に苦戦している。

トランプ氏支持者の大半は白人の勤労者層だが、保守的な社会価値を信奉するか、税制優遇措置を期待するような一部富裕層を引きつけているのは間違いない。メロン銀行創業者の子孫であるティモシー・メロン氏も、トランプ氏の大口献金者の一人だ。

また、共和党候補指名争いからの撤退を表明したヘイリー元国連大使への献金者も、トランプ氏にとっては目の前にぶら下がっている「獲物」と言える。

もっともロイターが取材した十数人の献金者や選挙資金担当者の話では、ヘイリー氏に対する献金者のうちトランプ氏に献金を始めたのは一部だけで、残りは連邦議会選挙での共和党候補を応援するか、トランプ氏に投票はするが献金はしないことを決めているという。

ヘイリー氏を応援しているスーパーPAC(政治行動委員会)のある幹部は、ヘイリー氏への献金者の間では、トランプ氏支持に回るかどうか方針が分かれる公算が大きいとの見方を示した。

ヘイリー氏に献金してきたエリック・レビン氏は「今後は共和党が上院を奪回するのを後押しすることに全力を注ぐ」と言い切った。

共和党大口献金者の一人でヘイリー氏に500万ドルを献金したヘッジファンドマネジャーで富豪のケン・グリフィン氏は、トランプ氏には全く資金を投じていない。選挙資金動向を追っている「オープンシークレッツ」の見積もりでは、グリフィン氏は2020年の大統領選では個人として共和党の上から3番目の大口献金者だった。

そのグリフィン氏も1月にロイター向け声明で、今回は議会選を重視する態度を示していた。

他の4人の主要なヘイリー氏への献金者はロイターに対して、いずれもトランプ氏には献金しないと明言。5番目の献金者は、まだ態度を決めていないと述べた。

<訴訟費用等への流用懸念>

トランプ氏にとって難しい問題の一つは、より多くの訴訟費用が必要になるほど、献金者たちが提供をためらうようなる点にある。選挙資金のつもりで献金したのに、訴訟費用に回されてはかなわないと考えるからだ。

カリフォルニア州のある大口献金者は「トランプ氏が弁護士に支払うか、使い道が分からないような状況で、彼のために5万ドルの小切手を切ることはない。私が献金者らから聞いた最大の不満は、トランプ氏が自分の訴訟費用に流用する金は与えたくないというものだ」と語った。

事情に詳しい関係者によると、トランプ氏は今後数週間、資金調達のためにカリフォルニアを訪れる予定だ。

電気自動車(EV)大手テスラなどを率いる起業家イーロン・マスク氏は6日、今年の選挙では民主・共和どちらの候補にも献金しないと述べた。

関係者が伝えたところでは、この週末にマスク氏がトランプ氏と面会しており、もし、マスク氏がトランプ氏に献金すれば、トランプ氏は選挙資金でのバイデン氏に対する劣勢をあっさり覆せるかもしれない。

トランプ氏は16年の大統領選でも、当時の民主党候補ヒラリー・クリントン氏より選挙で使ったお金は少なかった。だが、最後には勝利できた。ただ、その時は数々の訴訟という逆風もなかった。

法律専門家によると、トランプ氏がニューヨーク州の民事訴訟で支払いを命じられた賠償金については、選挙戦や自身の大統領としての行動と何も関係がないため、選挙資金を充当することはできない。

それでもトランプ氏が集めた選挙資金の10%を握るPACの「セーブアメリカ」は昨年以降、法的な問題に5000万ドル余りを支出していることが、連邦選挙委員会の開示情報で判明している。

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