『相棒』最終回SP前編、右京×亀山が政界の闇に切り込む フェイク動画にはまさかの人物が

初代“相棒”の亀山(寺脇康文)が5代目“相棒”としてシリーズに復帰して2年目となった『相棒 season22』(テレビ朝日系)もあっという間に最終回間近となった。最終回スペシャルの前編となる第19話で、右京(水谷豊)たちはとある事件を発端に政界の闇に切り込んでいく。

法務大臣の下川(黒谷友香)が自身が個々の事件について検事総長を指揮することのできる指揮権を発動し、与党幹事長の収賄容疑に関する強制捜査が見送られることになった。裏で糸を引いていたのは内閣官房長官の武智(金田明夫)だったが、官邸の横暴をほとんどのマスコミが黙殺。捜査を指揮していた特捜部長の尾上(甲本雅裕)も、圧力に屈さざるをえなかった。

唯一噛みついたのが、「特捜部長の気骨に期待する」とテレビで発言したベテラン政治学者の乙部(佐戸井けん太)だった。そんな中、乙部が未成年に襲われる事件が発生。興味を持った右京と亀山が共に動き出すと、被害者である乙部から、意外な証言が飛び出す。少年は乙部を襲った後、「ごめんなさい」と言ったと言うのだ。2人が少年の自宅を調べると冷蔵庫から2000万円の現金を発見。少年は誰かに頼まれて犯行した疑いが強まった。

亀山の妻でジャーナリストの美和子(鈴木砂羽)もこの事件に興味を持ち、乙部に会ってインタビューを行っていた。その中で、乙部はあるプロデューサーの名前を挙げた。政権批判を控える番組が多い中、そのプロデューサーだけは「好きなだけやっていい」と言っていたのだという。さらに取材を進めようとそのプロデューサーと会う約束を取り付けた美和子。だが、その日に彼を訪ねると、矢で胸を射抜かれた状態で死亡していた。

事件の裏に政治が絡んでいることから、何を考えているかを巧妙に見せない人間同士の駆け引きが随所に登場する。たとえば指揮権発動によって捜査を免れた与党幹事長は、“恩人”である下川と食事に行き、2人は「君の犠牲に」「ええ、私の犠牲に」と恭しく乾杯した。また、武智はわざわざ衣笠副総監(杉本哲太)を呼び、いくらか雑談を挟んだのち、「ところで副総監が終着駅とは思ってないでしょ? 当然もっと、上を」とニヤついた。「私も人並みの欲はありますからね」という衣笠の答えにも満足そうだった。なんとも生々しい。

一方、下川たちが豪華なレストランで食事をしているのと同じ時間に、乙部を襲った少年は暗い刑務所で食事をかき込むように食べており、武智と衣笠副総監が会っている頃、右京と亀山は真実を求めて地道に捜査を進めていた。今はそれぞれが点であるが、いずれは事件を中心に繋がって行くのだろう。でもまだそのヒントさえうまく掴めない。これらが全て同じ世界の中で起こっているということだけでも大きな衝撃を感じてしまう。

最終回が近いということもあってか、いつもとはちょっと違う遊び心も感じられたのが、今回の『相棒』だった。右京たちは先に捜査を進めすぎ、ついに内村刑事部長(片桐竜次)に呼び出されてしまった。特命係には捜査権がないので本当は捜査をしてはいけない。内村は右京と亀山を立たせ、怒号を浴びせるかと思いきや「(捜査ができないのは)赤子でもわかる理屈だ。それがわからんお前は赤子以下! うーよしよし、べろべろばぁ」と言ったのだ。

予想外の言葉に亀山と同じく吹き出してしまった人もいたのではないだろうか。続けて内村は「言うことを聞かんとゲンコくれてやるぞ!」とも。終始、目を伏せていた右京だったが、流石にこれには、笑いを堪えきれないように見えた。

捜査により、少しずつわかってきたことも増えてきた頃、ある動画がネット上にアップされた。それは右京が2つの事件の黒幕を匂わせるというもの。ドラマを観てきた人なら、右京がそんなことをする人間ではないことがすぐわかるはず。おそらくこれはフェイク動画だろう。そんな動画の題材に、こともあろうに右京を使うなんて犯人もいい度胸である。一際濃い大人の駆け引きが展開されそうな次回は後編であり、最終回。どんな闇が待ち受けていようが、右京と亀山なら対峙できる。そう期待して、楽しみにしていたい。

(文=久保田ひかる)

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