飲食業倒産、2月で年度の過去最多を抜く コロナや物価高、人手不足の影響で842件

2023年度(4-2月)「飲食業の倒産動向」調査

2023年度の「飲食業」倒産(負債1,000万円以上)は、2月までに842件(前年同期比65.7%増)に達し、年度で過去最多だった2019年度の841件を上回った。このまま2023年度の飲食業倒産の月間平均76.5件で3月も倒産が発生すると、年度では初めて900件を超えることになる。
飲食業は、「新型コロナ」関連倒産が478件(同44.8%増)、「物価高」関連倒産が54件(同260.0%増)、「人手不足」関連倒産が53件(同96.2%増)と急増、取り巻く厳しい環境が倒産を押し上げている。

業種別では、すべての業種で前年同期を3割以上上回った。特に、コロナ特需で好調だった「持ち帰り飲食サービス業」が前年同期比121.7%増(23→51件)、新しい生活様式の浸透により接待需要の低迷が続く「すし店」が同107.1%増(14→29件)で、大幅増が目立った。
手厚いコロナ関連支援が奏功し、飲食業の倒産は2022年度まで3年連続で減少したが、今年度に入り増加に転じた。インバウンド需要はあっても客足がコロナ禍前に戻らず、食材費や光熱費の上昇、人手不足や最低賃金の上昇などによる人件費の高騰で、採算悪化が深刻さを増している。

東京商工リサーチが2月に実施したアンケート調査で、コスト上昇分を価格に転嫁できていない飲食業は41.6%を占めた。物価高でも客足減少の懸念からメニュー価格の改定に踏み切れないケースもあるが、倒産が増えてきた飲食業界にとって、価格転嫁が死活問題になっている。

※本調査は、日本産業分類の「飲食業」(「食堂,レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場,ビヤホール」「バー, キャバレー,ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2023年度(2023年4月-2024年2月)の倒産を集計、分析した。


2月で年度最多を更新、2023年度は900件台に乗せる可能性が高まる

2023年度の「飲食業」倒産は、2月までに842件(前年同期比65.7%増)発生し、4年ぶりに前年同期を上回った。また、これまで年度で最多だった2019年度(841件)を超えた。
コロナ禍の飲食業倒産は、手厚い支援もあって低水準で推移していた。しかし、2023年に入り、コロナが5類に移行した一方、各種支援策の縮小・終了を受け様相が一変。好調なインバウンド需要を取り込めなかった事業者や業績回復が遅れた事業者を中心に、倒産が急増している。
「新型コロナウイルス」関連倒産は478件(前年同期比44.8%増、前年同期330件)発生し、2月時点で年度の最多を更新した。また、物価高や人手不足の影響も深刻さを増している。「物価高」関連倒産は54件(同260.0%増、同15件)、「人手不足」関連倒産は53件(同96.2%増、同27件)と急増した。
経済活動が再開し、インバウンド需要が盛り上がるが、人件費や食材費、電気代などの加速度的なコストアップが飲食業者の利益を圧迫している。コロナ禍で悪化した財務の立て直しが進まず疲弊した事業者や、ゼロゼロ融資で借入負担が重い事業者も多く、飲食業の倒産は今後も増加が続く可能性が高い。

業種別 「持ち帰り飲食サービス業」 「すし店」が大幅増

最多は日本料理店や中華料理店、ラーメン店、焼肉店などの「専門料理店」の203件(前年同期比70.5%増)。以下、「食堂,レストラン」が188件(同66.3%増)、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」が155件(同42.2%増)と続く。
増加率では、最大が「持ち帰り飲食サービス業」の前年同期比121.7%増(23→51件)。次いで、「すし店」の同107.1%増(14→29件)、「バー,キャバレー,ナイトクラブ」の同89.6%増(29→55件)の順。コロナ禍の参入が増加したが、需要が一巡し競合から淘汰が進む「持ち帰り」業態や、インバウンド回復の一方で、接待需要がコロナ禍前の水準に戻らず苦戦する「すし店」「バー,キャバレー,ナイトクラブ」の倒産が目立った。
コロナ関連倒産が占める割合が最も高かったのは、「そば・うどん店」の69.2%(コロナ関連9件)。以下、「専門料理店」(同140件)と「すし店」(同20件)の68.9%、「居酒屋」の63.8%(同99件)と続く。上位4業種で、倒産に占めるコロナ倒産の割合が6割を超えた。
物価高倒産の割合が最大だったのは、「宅配飲食サービス業」の16.3%(物価高関連10件)だった。

形態別 民事再生法と取引停止処分が2.5倍

最多は、「破産」の797件(前年同期比66.0%増)で、飲食業倒産の94.6%を占めた。以下、「民事再生法」の25件(同150.0%増)、「特別清算」の15件(同15.3%増)と続く。
飲食業は小・零細規模が中心で、経営体力に乏しく、コロナ禍では消滅型の破産を選択するケースが大半。ただ、アフターコロナの人流回復もあって、再建型が占める割合は2.9%と3年ぶりに上昇した。

負債額別 規模が二極化

最多は「1千万円以上5千万円未満」の610件(前年同期比85.4%増、構成比72.4%)。次いで、「5千万円以上1億円未満」が119件(同26.5%増、同14.1%)だった。飲食業倒産では、負債「1億円未満」が86.5%を占めた。
増加率では、「10億円以上」の前年同期比150.0%増(2→5件)が最大。
飲食業者の倒産は引き続き小・零細規模が中心となっているが、一方で中堅以上の規模でも増加の兆しがみられる。

都道府県別 増加28、減少15、同数4

件数が「増加」は28都道府県、「減少」は15県、「同数」は4県だった。
件数が10件以上の都道府県では、増加が山口450.0%増(2→11件)、群馬325.0%増(4→17件)、兵庫245.0%増(20→69件)、福岡241.1%増(17→58件)、三重200.0%増(5→15件)、広島127.2%増(11→25件)、東京101.4%増(69→139件)、愛知91.6%増(36→69件)、神奈川82.3%増(17→31件)、栃木77.7%増(9→16件)、奈良75.0%増(8→14件)、静岡63.6%増(11→18件)、和歌山62.5%増(8→13件)、大阪51.6%増(62→94件)、滋賀44.4%増(9→13件)、北海道40.0%増(15→21件)、京都39.2%増(28→39件)、千葉30.7%増(13→17件)、茨城18.1%増(11→13件)。
一方、減少は、埼玉18.7%減(16→13件)のみ。宮城は前年同期と同件数(14件)だった。

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