夫婦2人の年金額は「月23万円」が標準的!? 現役時代の年収はいくら必要?「専業主婦世帯」「共働き世帯」で試算

共働きなら年収400万円でもじゅうぶん可能、夫だけなら…

本記事では、夫が会社員で妻が専業主婦(第3号被保険者のパート勤務を含む)の場合(ケース1)と、夫婦ともに共働きの場合(ケース2)で考えます(図表1)。また、年金の仕組みとして、3階建て構造で説明されることがありますが、本記事では1階部分である国民年金と2階部分の厚生年金をベースに説明します。

ケース1の場合、夫は国民年金と厚生年金を受給できますが、妻は国民年金のみの受給となります。専業主婦ではなくパートなどで働いている場合でも、130万円の壁といわれるような一定の年収までは夫の社会保険の扶養対象となるため、厚生年金は対象とならないことがあります。ケース2の場合は、夫婦どちらも国民年金と厚生年金の受給対象とします。

2024年度の国民年金の満額は月6万8000円(年間81万6000円)となりました。前年から2.7%(月額1750円)の増額です。そのため、残りを厚生年金でまかなうことができれば月額23万円を年金として受給することができます。

図表1

筆者作成

厚生年金の大まかな計算方式は以下のようになります。計算を簡略化していますので、実際の金額とは多少異なる点にご注意ください。

【厚生年金額=平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者月数】

40年間(480ヶ月)働いて、厚生年金を9万4000円(年間112万8000円)受け取りたい場合、平均年収(ボーナスなどを含む)は515万円となります。この金額は、入社から退職までの平均金額を意味しています。年齢が上がるにつれて年収も増えるような給与体系の場合だと、最終的な年収は600~700万円程度必要になるかもしれません。

__112万8000円=標準報酬月額×5\.481/1000×480
標準報酬月額≒42万9000円(/月)≒515万(/年)__

次に、夫婦で9万4000円について考えてみましょう。夫の年収を450万円、妻は家計を助けるために20年間働き、その間の平均年収は150万円とします。この場合、夫の厚生年金は月8万2000円、妻の厚生年金は1万4000円となり、夫婦合わせると9万4000円を超えます。この金額であれば難しくないと感じる人は多いのではないでしょうか。

__<夫の厚生年金額>
450万円÷12×5.481÷1000×480=98万6580円≒月額8万2000円
<妻の厚生年金額>
150万円÷12×5.481÷1000×240=16万4430円≒月額1万4000円
__

年金をできるだけ増やしたいなら

さらに年金を増やしたいのであれば、大きく分けると3つの方法が考えられます。

__●年収を増やす
●働く期間を延ばす
●年金の受給開始時期を遅くする(繰下げ受給)__

年収を増やす選択肢は、個人の努力だけでは難しい場合もあると思います。そのため、現実的に実現しやすいのは「長く働いて、年金を繰下げ受給する」という方法です。

長く働くと、厚生年金の被保険者月数が増えるため厚生年金の金額が増えやすくなります。また、年金受給開始までの収入源を確保できるので、年金の繰下げ受給がしやすくなります。

年金の繰下げ受給をする場合、繰り下げた月数×0.7%増額された金額を生涯受け取ることができます。23万円の年金を70歳から年金受給開始(5年の繰下げ)した場合、32万円まで年金額が増えるので、年金受給開始までの生活資金に余裕があればぜひ利用したい制度です。

__0\.7%×60ヶ月=42%(増額)
23万円×1.42≒32万6600円__

まとめ

標準的な金額の年金を受け取るためには、夫だけが働いている場合は比較的高い年収が必要になることが分かります。一方、夫婦共働きであればじゅうぶん達成可能な水準です。

さらに年金受給額を増やすために年金の繰下げ受給も検討しましょう。その場合は、年金受給開始まで退職後も働き続けなければなりませんし、受給開始までの間に資産が底をつかないようお金を貯めておくなど工夫が必要です。

年金についての知識を学ぶことで、将来のお金に関する不安をある程度は解消できるかもしれません。現役世代である今から準備しておくことで、選択肢を増やすこともできます。1度将来の年金について考える時間を作ってみてはいかがでしょうか。

出典

厚生労働省 令和6年度の年金額改定についてお知らせします
日本年金機構 は行 報酬比例部分
日本年金機構 年金の繰下げ受給
国税庁 令和4年分民間給与実態統計調査-調査結果報告-

執筆者:御手洗康之
CFP

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