公取委、日産に下請法違反で再発防止勧告 36社に30億円超減額

Maki Shiraki

[東京 7日 ロイター] - 公正取引委員会は7日、「割戻金」の名目で一部下請け業者への支払いを減額していたことが下請法違反に当たるとして、日産自動車に再発防止などを勧告した。日産は約2年間、部品メーカーなど下請け事業者36社に対し、一度決まった支払い代金から「割戻金」として総額30億2367万6843円を減額していた。日産は減額分をすでに下請け業者へ支払い、割戻金の運用も廃止したとしている。

公取委によると、2021年1月から23年4月の間、コスト削減目標を達成するため、両社間で一度決めた支払い代金から数%を減額していた。約30億2367万円の減額は1956年の下請法施行以来、最高額といい、1社当たりの最高額は約11億円だった。

減額の幅は下請け事業者の意向も踏まえて両社間で協議して決めており、覚書として書面にも残していた。下請法では、下請け側に責任がある場合などを除き、両社間の合意があっても発注金額から減額することを禁じている。公取委は社長を中心とする法律順守の管理体制を整備するよう日産側に求めたほか、業界団体の日本自動車工業会にも再発防止を申し入れるという。

公取委の片桐一幸・取引部長は会見で、今回の違反は「不適切な原価低減活動であり、原価低減活動の失敗例」と指摘。現在、春闘が行われ、中小企業の賃上げ実現のためコスト上昇分の取引価格への価格転嫁が強く求められる中、「サプライチェーン(供給網)の頂点に立つ完成車メーカーが下請法違反を行ってきたことは非常に遺憾だ」とし、「問題のある悪質な事例に対しては法律に基づいて厳正に対処していく」とした。

今回違反の認定をした期間は約2年間だが、調査責任者である菅野善文・上席下請取引検査官によると、違法な商慣行は「カルロス・ゴーン氏が経営に関わる以前から慣行的に行われていた」といい、日産側も違法性を認識していなかったと述べた。

日産は「たいへん重く受け止めている」とのコメントを発表。法令順守と再発防止を徹底するとした。

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