クリナップと武蔵野美術大学が次世代型の「移動式キッチン」をお披露目!

■水道がない場所でも給排水を可能に

東京・新宿区にある武蔵野美術大学で7日、システムキッチンメーカーのクリナップが主催する「未来キッチンプロジェクト」産学共同発表会が開催された。会場ではクリナップと武蔵野美術大学が産学共同研究した『モビリティキッチン』のプロトタイプがお披露目された。

『モビリティキッチン』は持ち運びが可能な移動型のキッチンセットで、循環ろ過装置を搭載したシンクユニット、調理スペースと収納が行えるワークユニット、バッテリー内蔵のIHコンロなどで構成される。クリナップの竹内宏氏は「コロナ禍をきっかけに人々の暮らしが多様化した」と、時代の変化を口にし、脱LDKを最初の開発テーマに掲げて、移動式キッチンの研究開発を2019年から行ってきたことを紹介する。

同社ではキッチンが様々な社会課題へ貢献する可能性を秘めていることを念頭に、LDKの中で固定されたキッチンをもっと自由にすることで未来のライフシフト対応や災害支援に貢献できるのではと、武蔵野美術大学との産学共同開発に踏み切ったという。

場所を選ばない移動式キッチンの実現で最大の課題となるのが水の給排水だが、ろ過装置を製作している三美製作所との共同開発により、水道がない場所でも水を循環させることができるシンクを製作したといい、リビングや屋外での実用例を具体的に紹介しながら、開発の経緯などを振り返った。

キッチン以外の場所での調理が可能になると、家庭でのライフサイクルにも大きな変化が出るといい、主婦が別の家事をしながら、“ながら料理”をするという具体的な使用例も紹介。他にも『モビリティキッチン』を活用してのベランピング(お家キャンプ)や、小型車両に積み込んでのアウトドアでの使用例、災害時の活用例なども紹介された。

ろ過装置に関しては、使用する水の容量が1.5リットルであるとのこと。移動先でコンビニのペットボトルの水を使って給水することができる利点を挙げ、フィルターを逆洗浄する機能の搭載により、フィルターの取り替えが不要なモデルの開発も今後目指しているとのこと。商品化の計画に関してはまだ具体的なプランはないというが、2030年までに何らかの形で事業化に繋げたいと話していた。

会場には武蔵野美術大学の若杉浩一教授 ソーシャルクリエイティブ研究所 所長ほか、山﨑和彦特別研究員 ソーシャルクリエイティブ研究所 特別研究員、田村義希(造形構想学部 クリエイティブイノベーション学科)、横田爵巳(造形構想学部 クリエイティブイノベーション学科)、株式会社三美製作所の佐藤允壱社長、クリナップの藤原亨常務執行役員 開発担当、間辺慎一郎開発戦略部 商品戦略課 課長、近岡咲開発戦略部 商品戦略課 主任も登壇した。

また、クリナップが開催した「未来キッチン イラストコンテスト」の最優秀賞作品もお披露目され、受賞者の西岡蓮さん(小学三年生)に記念品が贈られた。同コンテストには242校・団体から募集した3003作品の応募があった。(取材・文:名鹿祥史)

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