バレエ歴20年の女子プロレスラー・Chi Chiが創立30年NBAバレエ団の魅力に迫る!

埼玉唯一のバレエ団として創立から30年、定期公演はじめコンクールも精力的に開催するNBAバレエ団。大好評のガラ公演『Grace & Speed』がバージョンアップされたと聞き、バレエ経験20年の女子プロレスラーChi Chi選手と共に宮内浩之さん、山田佳歩さんにお話を伺いました!
(聞き手:スレンダー川口 @slender_kg

――皆さま今日はよろしくお願いします。NBAバレエ団さんから「Grace & Speed 2024」に出演される山田佳歩さん、宮内浩之さんにお越しいただきました。Chi Chi選手は女子プロレスラーでありつつ、実はクラシックバレエを20年やってらっしゃるということでお声がけさせていただきました。
Chi Chi「よろしくお願いします。バレエの方はプロレスの合同練習日と全部重なってしまっててほとんど行けてないんですけど、ぼちぼちやっております(笑)いろいろお聞かせください」
宮内「それにしても、アザすごいですね(汗)」
Chi Chi「はい、全身アザがひどくて。特にヒジのとこは実際場所違ってるんじゃないかとは思うんですけど、トミー・ジョン(※)って呼んでます(笑)」

※トミー・ジョン手術:肘関節の腱や靱帯の損傷や断裂に対して腱や靱帯を再建するための術式。初めてこの手術を受けた野球選手の名前で呼称されるようになった。

宮内「しかもバレエシューズまで履いてもらって。バレエとプロレスって筋肉の使い方が全然違うでしょうから、辛かったりしないですか?」
Chi Chi「全然違いますよね。頭も打ったりするし、危険な競技だな~って。もう感覚おかしいのかもしれない(笑)」

――先ほどリハで宮内さんが山田さんをリフトされてましたけど、プロレスはそこから落としますから。
宮内「確かにバレエで落とすなんてことはしないですね(笑)落ちても自分が下敷きになって守る、プリンシパルをケガさせるなんてタブーですから」
山田「はい、安心して任せてます」

――バレエで良く聞く「プリンシパル」というのは?
宮内「階級みたいなもので、フランス語かな?最高位として『プリンシパル』、その下に準主役の『ソリスト』、群舞は『コールド』とかですね。団体の中での階級であったり、踊る役であったり」
Chi Chi「お二人はもうプロレスで言う『四天王』みたいなもんです」

――なるほど!(深く納得)では山田さんは若くしてプリンシパルに選ばれたというのはかなり早いのでは?
山田「去年12月の「ドンキホーテ」の舞台上で発表されたんですけど、ビックリでしかなかったです。入団して間もないというかまだ3年、この4月でやっと4年目になるんですけど、こんな早く上げていただくなんて」
宮内「かなり早いですよ」
Chi Chi「デビュー三年で三冠ヘビー級獲った!みたいなものです」

――なんですって!(直後のプロレスの例え話は割愛)
山田「嬉しいっていうよりも不安のほうが多かったんです。どうしたらいいんだろうって。まだ入団3年ですから、プリンシパルでやってきた先輩を長い間見れてないというか、どう自分をその位置に持って行かないといけないのかっていうのは日々考えます。年齢もバレエ団の中ではまだ低いので、それでもやっぱり真ん中をやる以上はみんなに付いてきてもらいたいっていうのもあるし。でも、不安の後に『ありがとうございます』って、いろんな人に感謝の気持ちが出てきたんですよ。不安もあるけど、今は『あれしてみよっかな』『こうしてみよっかな』って考えるのが楽しいです(笑顔)」

――練習中、横で見てるとそんな雰囲気は感じますか?
宮内「そういう感謝しながら頑張ってるなっていうのは感じます。もうバレエを何十年もやってる人たちがいっしょにいるわけですから、みんな感じてますよ。やっぱり心情は踊りに出ますから、じっと見てなくても何となく情報として入ってきますね。そういう意味ではNBAバレエ団って練習の雰囲気良いと思います」

――練習の雰囲気が良いってめちゃくちゃ大事ですよね。プロレスなんて雰囲気悪かったら大ケガしますもんね。
Chi Chi「私達の団体『エボリューション』も練習の雰囲気はどこよりも良いと思います。団体自体が出来たばっかりで3月でようやく1年、私の代が一期生なので先輩がいなくて、付いていく人がいないっていう不安もありますけど、自分たちしかいないからむしろ理不尽なこともないし。雰囲気、自信があります!」
宮内「男子プロレスは肉体と肉体のぶつかり合い、女子プロレスは感情と感情のぶつかり合いって感じがして『あの間に入りたくねえ~』って思います(笑)それなのに雰囲気が良いってすごいことですね」
Chi Chi「当然厳しいところは厳しいんですけど、師匠たち(※諏訪魔&石川修司)が面白いんですよ。現役選手でもありますし、師匠に恵まれてます」

――ここちゃんと書いときます(笑)舞台は正面でリングは四方ですが、観衆の前での表現としてはだいぶ違ってくるのでは?
Chi Chi「四方にお客様がいらっしゃると、リングの隅だけを使わないようにって意識してます。戦いは相手がいることなので上手くいかないこともありますけど、自分が攻めて余裕がある時は練り歩いてみたりも。私、バービー人形をモチーフに頑張って似せてるんですけど(笑)、入場の時に投げキッスのアピールをしてて、これはバレエのコッペリアからインスピレーションを受けてるんです。なるべく後ろも向いてお客様を意識したりとか」
宮内「バービー人形、似てます(笑)そうか、リングは周り全体お客様ですね。バレエは斜めにクロワゼをやっても後ろから見たら背中しか見えないし。舞台から客席に向けた形、流れっていうのを日々研究されてきたものだから、周り全体がお客様ってスゴイな」

――ちなみにChi Chi選手はまだデビューして1年なんです。
宮内「え?バレエ歴のほうが全然長いじゃないですか(笑)」
Chi Chi「はい、全然長いんです。実はさっきお会いした河野先生(※河野崇仁さん。2014年NBAバレエ団入団)と中学生のころライモンダを踊ったことあるんです。建物入ったら『あ!河野先生!』って」
山田「感動の再会だ!しかも今回の私達の演目(笑)」
Chi Chi「来月のお二人の演目も『ライモンダ』、運命感じます(笑)」

――宮内さん、山田さんの役どころや見どころを教えてください。
宮内「『ライモンダ』は1898年初演で、もう100年以上の歴史があるんです。なかなか全幕やらない作品で、今回も3幕の一部、ほんと最後の方の結婚式のシーンをやるんです」
山田「1幕の中でも場が細かく分かれてるんです」
宮内「より深く踊りたいから、役柄もどういう人間かってことをすごく考えるんですよ。今回だとジャン・ド・ブリエンヌがどういう人間か、ライモンダはどういう人間か。例えばストーリーを全部やるんだったら最初の登場シーンから役を自分に入れていけるんですけど、今回はいきなり『物語があった後の結婚式』から始まるので、役をどう入れて行こうかなって試行錯誤してますね」

――いきなり「どん」と始まるわけですね。確かに難しそうです。
宮内「諸説あるんですけど、今回の3幕の中の『グラン・パ・クラシック』って、ライモンダがマリッジブルーになってるんじゃないかって説もあるんですよ」

<ストーリーメモ>
婚約者であるジャンが軍役につく。その間アブデラフマンに求愛され恋するライモンダ。そこへジャンが帰還し、婚約者を賭けてアブデラフマンと決闘する。アブデラフマンに勝ったジャンとライモンダは結婚式を挙げる。

山田「結婚式なんだけど、すごく暗いっていう演目なんです」
宮内「古典作品が好きでいろんな役をやってきたんですけど、表現っていう意味をもっと出していければ面白いんだろうなって思うんですよ。テクニックとかパフォーマンスっていうのが最近重視されている中で、もちろんそれも大事なんですけど、一般のお客さんにも伝わるような人間味のある表現がしたいなって思うんです。さっき話したように、どうやって役を作ろうって思いながらも、もっと表現したいからすごく難しくて。課題がいっぱい(笑)」

――宮内さんのその葛藤がそのまんま見どころですね。山田さんのライモンダも心の揺れ動きがなかなか難しそうです。
山田「ライモンダは自分の中で哀しいほうの決心をして表現するのか、物語にもいろいろ種類があるから、どの物語が自分の中でしっくりくるのか、それこそこのNBAバレエ団でのライモンダの全幕っていうのが無いので、どう演じるか悩みどころです(笑)いろんな方がやってるのを映像で見ると、女性のズッシリした芯のある表現をされていて。自分もそんな演技をしたいとも思いますし、ちゃんと自分の表現したいことを乗せていけるようにやってきたいと思ってます」
宮内「でも、バレエっておもしろくて、リハーサルして動いてるうちに『あ、私こっちだな』って動きから感情を得るみたいなのがあるんですよ」
山田「うふふ、ある~(笑)確かにこっちの方がやりやすいかも、表現しやすいかもってあります」
宮内「バレエってセリフが無いんで抽象的に見えるじゃないですか。でも音楽と踊りで雰囲気を表現するっていうのが逆にいいところでもありますし、今回の切り抜いた3幕を見て『ぜひNBAバレエ団の全幕見てみたい!』って思ってもらえたら大成功ですね(山田さんも頷く)」
Chi Chi「私、バレエの先生から『舞台は魔物だよ』ってよく言われてたんですけど、『リングも魔物だな』って、共通点あるなってひとりですごく思ってます。練習通りできないことがあるよ、お客さんの前だと出来ないことってあるよって。リングでも練習してたのに出なかったり、出来ても上手くできなかったり、『あ~これか~』って感じてます」
宮内「僕は少し違ってて、『舞台には魔物が棲んでるけど、守ってくれるのも舞台』だと思ってるんですよ。絶対一番裏切らないのは平らな舞台なんです。ロシアの舞台はちょっと斜めだけど(笑)」
山田「あははは!(思った以上の爆笑)」
宮内「ロシアはね、7度くらい斜めなんです。でも日本は平らだし、照明とかで目やられちゃったり、三半規管がやられる時あったりするんですけど、、地震でも起きない限り平らですから。確かに魔物は棲んでますけど、一番信じられるのは床なんですよ」
Chi Chi「すごくイイ教訓いただきました。今度ぜひ観に行かせてください!」

※この後、Chi Chi選手がバレエとコラボレーション!ぜひ両者のSNSでご確認を!

■プロフィール
<Chi Chi>
女子プロレス団体「エボリューション」所属、第一期プロレスラー。女子プロレス界のバービー人形目指しデビュー1年、3月27日(水)旗揚げ1周年記念大会では同期のZONESと一騎打ちが控えている。
instagram:chichi_evo
Twitter:@ChiChi_evo

『EVOLTION 1st ANNYVERSARY』
日程:2024年3月27日(水)
開始:19:00
会場:東京都・新木場1st RING
チケット:https://www.ticketpay.jp/booking/?event_id=49589

<宮内浩之>
1994年カヨ・マフネクラシックバレエ スクールにてバレエを始め、カヨ・マフネに師事。2007年ボストンバレエ団に留学。2014年よりNBAバレエ団所属。2018年プリンシパルに昇格し数々の公演に主演。趣味は釣り、自然観察。
instagram:hiroyuki_0524

<山田佳歩>
4歳より白鳥バレエ学園にて塚田たまゑ・塚田みほりに師事。2017年〜2019年フランス リヨン国立高等音楽・舞踊学校に首席・飛び入学。2021年NBAバレエ団入団、2023年12月プリンシパルに昇格。趣味は料理。
instagram:kaho_yamada

<公演概要>
NBAバレエ団大好評のガラ公演、2024年4月『Grace & Speed』再び!ゲストにヤマカイさん&ネレアさんを迎え、バージョンアップされた優雅かつ疾走感溢れる5演目をお楽しみください!

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