[社説]国際女性デー 権利のために声上げる

 「まちを変えるため。黙ってはいられない」

 結成の理由を尋ねるとこんな言葉が返ってきた。南城市の女性たちが先月「ハートのまち南城 人権ファーストの会」を立ち上げた。

 きっかけは昨年12月に新聞報道で知った市長のセクハラ疑惑。運転手として働いていた女性が市に被害を申告したものの、市は第三者調査を実施せず「セクハラは判断できなかった」と結論付けた。

 市議会では百条委の設置を与党の反対で否決。一方、その後に市議有志が実施した市職員対象のアンケート調査では、市長からセクハラを受けたとする記述が複数あった。

 市長は疑惑を否定している。「それであれば、なおさら調査が必要だ」と女性たち。調査に後ろ向きな市や議会に市民の不信感は広がっており、解明を望む声は当然だ。

 会の中心は8年前、市が公立保育園の全廃を決定した際に反対の署名活動を率いた女性たちだ。

 公立が全くなくなることで子どもの育ちを保障する場の多様性が地域から失われるとの危機感があった。「不安に思う母親たちの声を行政に届けなければと思った」と語る。

 今回も、セクハラ被害を訴え第三者委員会での調査を望む女性を支援したいと自然発生的に集まった。会には男性も参加する。

 「事実なら人権にも関わる事態だ。公正公平な手段で疑惑が解明できない市や議会の下では、住みよい町づくりはできない」

 女性たちは権利獲得のため声を上げたのである。

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 女性たちの行動はこれまでも社会を変えてきた。

 2018年には女性記者に対する財務事務次官(当時)のセクハラ発言を受け、メディアで働く女性たちが連帯し声を上げた。

 性暴力の無罪判決が相次いだことをきっかけに19年からは「フラワーデモ」が各地で始まった。

 性被害者に寄り添う意味を込めて参加者が花を持ち、性暴力の不処罰に抗議するスタンディングは、県内でも行われている。

 活動は昨年、同意のない性行為を罰する刑法改正につながった。

 一方、女性差別が解消されたとは言えない。

 自民党副総裁の麻生太郎氏が上川陽子外相の容姿について「そんなに美しい方とは言わない」などと述べたことは記憶に新しい。

 後に発言を撤回したが、根底には仕事の成果以前に女性は外見が重要とする差別がある。

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 日本の男女平等を表すジェンダー・ギャップ指数は低い。共同通信がまとめる都道府県版では、経済や教育分野に比べても特に政治と行政分野で男女平等が進んでいないことが明らかとなった。

 国際労働機関(ILO)は21年、職場でのハラスメント行為を禁じる初の条約を発効したが、日本は国内法の不備で批准できていない。

 きょうは国際女性デー。女性の社会進出を促すためにもハラスメント行為自体を禁じる法整備が必要だ。

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