滋賀・湖東病院国賠訴訟で証人尋問始まる 検察官が起訴判断の妥当性について証言

会見で証人尋問を振り返る西山美香さん(左から2人目)と弁護団=7日午後、大津市梅林1丁目・滋賀弁護士会館)

 滋賀県東近江市の湖東記念病院の患者死亡を巡り、再審無罪が確定した元看護助手西山美香さん(44)=彦根市=が国と滋賀県に賠償を求めた訴訟の第10回口頭弁論が7日、大津地裁(池田聡介裁判長)で開かれた。この日から証人尋問が始まり、西山さんの起訴を判断した検察官(当時)と遺体を解剖した医師が判断の妥当性などについて証言した。

 元検察官への尋問は、自白の信用性の判断が焦点の一つ。人工呼吸器を外した際に鳴るアラーム音を継続的に消す機能について、同僚が人工呼吸器を使うのを見て事前に知っていたという西山さんの自白を巡り、裏付けがないまま信用性を認めたのはなぜかと問われると、「捜査する中で自白が出たので信用できると判断した」と述べた。

 「チューブのたん詰まりにより心臓停止したことも十分考えられる」とする解剖所見が書かれた捜査報告書を県警が検察に送っていなかったことを問われると、「全ての捜査資料を送っていると理解していた」と証言した。「もし送られていたら殺人罪の起訴を見送っていたのではないか」という西山さん側からの質問に対しては、「答えようがない」と答えた。

 一方、解剖医は、解剖所見について「たん詰まりを採用すると、他の所見と合わなくなる」と証言。さらにその真意を問いただされると、たん詰まりによる死亡の可能性はないという趣旨の発言をし、自身が作成した所見の内容を否定するかのような証言をした。捜査報告書については「記憶がない」と述べた。

 弁論後の会見で弁護団の鴨志田祐美弁護士は、「この事件がどれだけ自白に寄りかかり、自白にさしたる裏付けもないのに起訴に突っ走っていたことがあぶり出された」と振り返った。

 西山さんは次回の証人尋問で取り調べを行った刑事が出廷することに触れ、「正直に話してほしい。それが悪いことでも責めもしないし、ちゃんと謝ってくれたらそれでいいと思っている」と話した。

 次回5月23日に取り調べを行った警察官が出廷。同30日に捜査を指揮した元警察官の尋問が行われ、6月27日の西山さん本人の尋問を経て証拠調べを終える見通し。

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