ハワイのはずが近場の温泉旅館に…月収「52万円」退職金「1,900万円」勤続「38年」のサラリーマン、妻に懺悔したワケ

学校を卒業して以来、大変なこと、苦しいことばかりのサラリーマン。勤め上げたことのご褒美が、退職金です。「定年退職を迎えたら、退職金で何をしようか」と夢を語っている人も多いでしょう。しかし夢を実現できる人は限られているようです。みていきましょう。

大卒サラリーマンの定年退職金「平均1,896万円」…何に使ってる?

学校を卒業したら会社に就職し、40年余りの勤め上げ、「ご苦労さま」と退職金を手にする。これがサラリーマンの定型でした。しかし、昨今は誰もが退職金を手にできる、というわけではなさそうです。

厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』によると、退職給付金制度がある企業は74.9%。「従業員1,000人以上」の企業では90.1%、「従業員300~999人」で88.8%、「従業員100~299人」で84.7%、「従業員30~99人」が70.1%と、規模の小さな企業ほど、定年時に退職金がもらえない、ということになっています。またいまや転職が当たり前。十分な退職金がもらえるほどの勤続年数を満たしている人は、以前と比べてだいぶ少なくなっているでしょう。

それでも、40年近く会社人として歯を食いしばり頑張ってきたご褒美として、退職金を期待している人も多いはず。

定年退職金の平均額は「大学・大学院卒」で1,896万円、「高校卒」で1,682万円。月収換算でそれぞれ36.0ヵ月分、38.6ヵ月分です。つまり定年直前の月収は、大学・大学院卒サラリーマンで52万円、高校卒サラリーマンで43万円ほどだったと推測されます。

大学・大学院卒の退職金について勤続年数別にみていくと、「勤続20~24年」で1,021万円、「勤続25~29年」で1,559万円、「勤続30~34年」で1,891万円、「勤続35年以上」で2,037万円となっています。大学卒業以来、1社ひと筋であれば、2,000万円ほどの定年退職金が期待できます。

退職金、いくらもらえるか人それぞれですが、実際に何に使っているのでしょうか。一般社団法人投資信託協会『60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査(2022年3月)』によると、最も多いのが「預貯金」で59.3%。続いて「日常生活費の充当」が25.6%。「旅行等の趣味」21.7%、「住宅ローンの返済」が20.3%、「資産運運用のための金融商品の購入」が20.3%、「住宅のリフォーム」が19.0%、「家電など、耐久消費財の購入」が11.0%と続きます。

定年退職したら、退職金でハワイに行こう!夫婦で夢を語っていたが

退職金を受け取ることのできる人たちの半数以上は、もらった退職金をまず「預貯金」。そして“ご褒美”に使っている人は5人に1人程度。意外と少ない印象です。

――定年を迎えたらハワイでものんびり行こうか

そんな会話を妻としていたという60代の男性。大学卒業後に就職してからは長い休みを取ることはできず、結婚後も家族とゆっくりと遠出をすることはできなかったとか。長年、支えてくれた妻への労いも込めて、定年退職を迎えたら退職金を使ってゆっくりと海外旅行にでも行こうと夢を語っていたといいます。

そして60歳で定年退職。手にした退職金は平均的なものでしたが、ハワイに旅行に行くには十分すぎる金額です。しかし実際に行ったのは近場の温泉旅館。いつもより長めの2泊3日だったといいます。

――ごめんな、ハワイって行っていたのに……

妻に懺悔したのは、定年後を考えると、生活費が不十分だと判断したから。「とてもハワイといえるほどではなかった」と男性。

実際に前出の調査でも、60代の62.1%は「早めに資産形成をしておけばと後悔している」と回答。老後を見据えたとき「退職金でパーッと」といえる状況にない人が多いのです。

資産形成のコツのひとつは、時間を味方につけ、複利効果で資産を増やしていくこと。そして余裕資産があるなら、預貯金以外に目を向けても。たとえば大手銀行の普通預金の金利は0.001%。2倍に増やすとなると7万年以上の時間が必要。老後を見据えて資産を増やしたいという場合、少々ゆっくり過ぎるのです。

金融庁『高齢社会における資産形成・管理』によると、「(現役時代から投資を行い)退職金で投資をした」という60代70.3%、「(現役時代は投資を行っておらず)退職金で投資をした」という60代は11.9%。10人に1人は60代で投資デビューをしています。

もちろん、若いうちから資産形成を進められていたら御の字。退職金を活用して投資にチャレンジするのも、長い老後を考えると有効です。もちろん、投資は元本を保証するものではありません。退職金のすべてを投資に……というのはかなり危険。まずは、どれくらいリスクを取ることができるのか、冷静に分析することが第一歩です。

[参考資料]

厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』

一般社団法人投資信託協会『60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査(2022年3月)』

金融庁『高齢社会における資産形成・管理』

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