岡田将生『ゴールド・ボーイ』と併せて観たい!同原作の中国ドラマ『バッド・キッズ 隠秘之罪』のイッキ観必至な魅力

『ゴールド・ボーイ』©2024 GOLD BOY『バッド・キッズ 隠秘之罪』©Beijing iQIYI Science & Technology Co., Ltd.

中国発クライム・エンターテインメントが日本で映画化

入念な計画のもと決行した“完全犯罪”が、偶然居合わせた少年たちに目撃されていた――。義父母を崖から突き落とした事業家の婿養子と、その姿を偶然にもカメラでとらえた少年たち。男は一体何のために妻の両親を殺したのか? 彼を強請る少年たちの目的は? 映画『ゴールド・ボーイ』は、世代も立場も異なるクセ者たちのスリリングな攻防が繰り広げられる、衝撃のクライム・エンターテインメントだ。

原作は、中国のベストセラー作家・紫金陳(ズー・ジェンチン)によるミステリー/サスペンス3部作の真ん中にあたる 「坏小孩(悪童たち)」 。殺人犯と少年たちの頭脳戦を描いた本作は、動画サイト<iQIYI(アイチーイー)>でドラマ化され、総再生回数20億回を超える大ヒットを記録。そんなアジア最高峰エンタメ作品の舞台を沖縄に移し、日本映画化に挑んだのが『ゴールド・ボーイ』である。

岡田将生と子役陣の競演に注目! 偽装殺人犯VS狡猾少年団

この映画化にはSNS等で大きな反響が寄せられている。本国版ドラマ『バッド・キッズ 隠秘之罪』(2020年)は近年の華流ドラマでも特に評価が高く、当然ながら日本にも熱心なファンが多いのだ。あの魅力的なドラマを日本で映画化――そこに期待と不安の声があがるのは当然だが、この機会に『バッド・キッズ』を鑑賞しようと考えている邦画ファンも少なくないだろう。

なにしろ若手実力派の筆頭である岡田将生が主演するのだから、本作への期待値はすこぶる高い。そもそも『バッド・キッズ』は原作からかなり改変されていて、むしろ『ゴールド・ボーイ』で描かれる人物像ほか基本設定+αは原作準拠と言ってもよさそう。とはいえ映画の尺にギュッと収めるためのアレンジは不可欠で、主人公の東昇(岡田)と少年チームを率いる安室朝陽(羽村仁成)のヒリヒリするような頭脳戦、という側面を大きく打ち出しているようだ。

「何をしたとしても14歳までは捕まらないよ。少年法で決まってるから」――複雑な家庭環境や貧困にあえぎ、お金さえあれば解決するのではないか? と考えてしまう健気さと浅はかさ。弱みを握られながらも挽回の機会を狙うワケあり男。両者の二転三転する駆け引きの末に待ち受ける結末とは……。

『バッド・キッズ』はどんなドラマ? イッキ観必至の魅力

毎話のイントロ・アニメーションだけでも、日本のドラマにはないセンスの鋭さが伝わってくる『バッド・キッズ 隠秘之罪』。Prime VideoやU-NEXTで全話観ることができるので、「『ゴールド・ボーイ』公開前に」と、すでに完走した人もいるだろう。まだ未見の人も、1話1時間超で全12話というボリュームだが全く苦痛に感じることはないので、これまで華流エンタメにノータッチだった方も、ぜひ鑑賞してみてほしい。

身寄りのない児童養護施設を抜け出してきた少年・厳良(イェンリャン)と、その妹分である普普(ブーブー)。二人は病気の弟を救いたいという一心で街をさまよい、厳良の幼なじみで母子家庭で暮らす朝陽(チャオヤン)を頼るところから物語が回り始める。近年のサクサク観られる軽めのドラマ作品に慣れていると、本作の1話1時間超は長いと感じるかもしれない。しかし、主人公の少年少女3人とその家族や取り巻く人々をざっと紹介していく第1話こそゆっくりまったり進むものの、偶然“殺害現場”を映してしまってからの展開は本当にアッという間で、終始ドキドキ・ザワザワが止まらない。

しかも『ゴールド・ボーイ』と同様の“メイン事件”のほかにも登場人物全員が振り回される厄介な事故・事件が玉突き的に発生し、深いひっかき傷のようにジクジクとした人間ドラマが子ども目線・大人目線で全12話をかけてじっくり描写されていく。また貧富の格差など登場人物の立場を丁寧に描いていて、事実上の孤児たちやシングルマザー家庭、崩壊新婚カップルらが、ニュートンのゆりかごよろしく各々の狙いに則ってぶつかり合う。

監督は元バンドマン!油断できないスリラー演出と不穏な劇伴

そんな本作の一筋縄ではいかない独特な空気感を担っているのが、ダークサイドの主人公と言える東昇(ドンション)だ。義父母を殺した彼はサスペンス要素を高める存在でありながら、同時に強烈なコメディリリーフでもあるのが驚き。思わず「えっ……!?」と硬直してしまう唐突なパーソナリティ紹介シーンがいくつかあるので、飲み物を吹き出さないよう要注意である(塩顔イケメン俳優チン・ハオのプロ根性に拍手)。

また、規模感までは分からないが静かな田舎町が舞台で、中国南部らしきロケーションがなんとも美しい。80~90年代の台湾映画が好きな人もハマりそうだ(そういえば岡田将生は台湾映画のリメイク『1秒先の彼』[2023年]にも主演している!)。そうしてすっかり感情移入した頃には、ぺたんこの胸板に細長い手足、ランニングに短パン姿の少年たちがキャッキャしあう姿を見るだけで泣けてきて……。

ちなみに本作は視聴者の不安を煽る音楽も秀逸なのだが、監督のシン・シュアン(1981年生まれ)は00年代初頭には本格的にバンド活動をしていたというから、巧みな音楽使いにも納得。しかもミニシリーズの次に手掛けた『バッド・キッズ』が初の長編ドラマだというのだから、要注目な才能であることは間違いない。

とにかく華流ドラマの進化に驚かされるとともに、輸出やリメイクではなくローカライズ、独自映画化という形での日本進出も視野の大きさを感じさせる同シリーズ。『ゴールド・ボーイ』と併せて必見だ。

『ゴールド・ボーイ』は2024年3月8日(金)より全国公開
『バッド・キッズ 隠秘之罪』はAmazon Prime Videoほか配信中

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