20袋限定って…そんなに買うの? 昼には完売…流行とは真逆なクッキーに行列ができる理由

趣向を凝らした多様な種類が、かわいい缶に詰められて、年々人気が高まるクッキー。パティスリーはもちろん、ホテル・飲食店での販売も増えて、催事やイベントも続出。そんななか流行とはある意味、真逆なシンプルなクッキーが、昼には完売するほど話題に。なぜそんなに人気となっているのでしょうか?

催事の初日(3月6日)、オープン直後には行列が(左側)。3月6・7日は12時には完売

行列ができる「pâtisserie SAKIMOTO(以下パティスリーサキモト)」(大阪市生野区)で購入できるのは、1人合計20点まで、うち塩クッキーは10点まで。そんなに大量には買わないのでは…と疑問を抱き、開店前から並んでみると最大限買っている人が続々。塩クッキーが圧倒的に人気で、ピスタチオ、ほうじ茶、紅茶、黒糖などさまざまな種類が並び、1袋501円という明快さで、次々と手に取ってしまう気持ちを実感。お店、催事担当者、並んでいるお客さんに話を伺いました。

塩クッキーははキューブ状で、サクホロ。ひと口サイズで、1袋はあっという間に食べきってしまいます

行列に並んでいる理由を聞いてみると…?

関西でクッキー人気を牽引した百貨店「阪急うめだ本店」(大阪市北区)の催事『クッキーの魅力』に、3月6日から初出店した同店。「食感・厚さ」をテーマとしたコーナーで、「人気を知り数年前からお声がけさせていただき、今回ようやく実現しました。うすいクッキーが多いなか、分厚く四角い形含めて特徴的な商品だと思います」と催事担当者の中塚比呂記さん。初日はオープンと同時に長蛇の列ができました。

購入する上での注意事項、1人いくつ買うのかわからず完売タイミングが読めないことも。塩は数多く準備しているそうですが、早めになくなってしまいます。

初めて買いに来たという吹田市の40代女性は、列に並びながら「人気と聞き、ホームページで調べて『ホロホロサクサク』という響きに惹かれました。ここまでとは驚きです。友達にも渡したく、6〜7個買えたらとは思っています。催事にはよく来るので、行列には慣れています」と、1時間以上並ぶのも辞さない様子。

贈答用のパッケージは、2、3、5、6、10袋入り用があり

そして、開店前から並び早々に購入できた大阪市の40代女性は、「購入は3回目です。甘いものは好きではなく、ケーキも苦手なのですが、こちらの塩クッキーを友達にもらって感動したんです! 塩加減のバランスが良くって、今日は塩クッキー10袋、あとはヘーゼルナッツ、チーズ&ペッパーなど。このおいしさを、友達にも共有して欲しくって、会う人にプレゼントして広めていっています」と、笑顔で話してくれました。

リピーターの方は行列覚悟で並び、さらに周囲にも薦めていき、また噂になったことから新たな客層へ…と、広告などはまったく必要なく広まっているようです。

今後のクッキートレンド、塩系が増えそう!?

今回の催事では、「トレンドのきざし!サレクッキー」として、塩系のクッキーも登場し、新たに新商品で挑戦するブランドも。「以前から出店のフレンチシェフによる『たかやマルシェ』さんはじめ、少しずつ増えています。おつまみとしてもお菓子としても楽しめるので、将来性を感じています。クッキーですが”甘くない”という需要はあると思います」と催事担当の中塚さん。

また、これまでは缶のデザイン性も重視されていた印象だったそうですが、「最近はお客さまの目がシビアになり、量と値段のコストパフォーマンスも大事になっています。またパティスリーでは缶にこだわらず、シンプルな透明のプラスチックケースで、中身がわかりやすいものも増えています」とのこと。

催事『クッキーの魅力』(〜3/11)では人気のクッキー缶が集結したコーナーも、見た目も味もバラエティ豊か

最近のクッキー缶は3000〜5000円と高級なものが増え、手土産にするには相手を選びますが、「パティスリーサキモト」はかわいい絵柄ですが紙パッケージでシンプル。しかも1袋501円という価格も、ほかと比べるとかなりお手頃です。

いつ頃から、こんなに人気になったのか?

1950年に創業した崎本食品有限会社として焼き菓子・パンを取り扱い、2005年に、街のケーキ店としてオープンした「パティスリーサキモト」。クッキーの卸も行っていたことから、お店ではクッキーを販売しつつも、主力商品はケーキだったそう。そんななか、塩パンが人気となってきたタイミングで、塩を使ったクッキーも人気が出る可能性があるのではないかと、レシピを開発。まさに今ポピュラーな、甘いとしょっぱいを同時に味わえる”あまじょっぱ”です。

塩クッキーを生み出したパティスリーサキモトの専務取締役の崎本明男さん

最初はひとつずつ手で丸めて形を作っていたところ、次々と売れて作業が間に合わず。「もっと効率的に作れる形としてたどりついたのが、キューブ状でした」と専務取締役の崎本明男さん。そのタイミングで材料もマーガリンからバターに切り替えて、サクサクしながらも口のなかでほろっとくずれる食感に、かつ塩の粒をしっかりと効かせた、今の塩クッキーが2006年に完成したのです。

テレビでの紹介も手伝って、ほかの商品を製造する時間はなくなり、クッキーに専念して現在に至るそうです。キューブ状の種類も徐々に増やすとともに、ナッツ系は丸い形にし、「オレのクッキー」シリーズに。そして、崎本明男さんのお父さんが作っているアメリカンチョコレート、マーブル、コーヒーなどサクサク食感の「オヤジのクッキー」シリーズとなっています。

ちなみに見分け方は、パッケージのクマのイラスト。前者はクマがコック帽をかぶっており、後者はメガネをかけています。

左が父が作った「オヤジのクッキー」、右が息子こと崎本明男さんが作った「オレのシリーズ」

どうしても行列ができてしまう理由は?

催事・イベントで購入できるのは計20点、種類も豊富な上、複数組み合わせた缶タイプもあるため、悩むのは必至です。「せっかく並んでいただいたからには、慌てずに好きな味を選んでもらえたら。事前にどれを買うと決めていた人がクッキーを前にして『頭がまっしろになったの!』とおっしゃったことも」と崎本さん。販売スペースは少人数でゆっくり選べるスタイルで、どうしても時間がかかってしまうのです。しかし、そのおかげで取り合いになることや焦る必要もありません。

ちなみに、他店の数量限定と比べると多いと思われる20点になった経緯は、「かつては1000点や箱買いしたいというお声もあり、それではほかの方々が購入できなくなってしまうため設けました。お友達や知人の方へのプレゼントが多いので、ご自分用とお渡し用を考えて、これぐらいは必要なのではないかと」。

品質をキープするために生産数を増やすことや、他店舗展開も検討されておらず、今後も変わらず、店舗、催事出店、オンラインでの販売を予定。また店舗は、行列ができて近隣の迷惑にならないよう平日に不定期でオープンし、こちらでは30点まで、手焼きするバウムクーヘンも数量限定で販売しています。

大阪市生野区にある店舗では、バウムクーヘンの販売も(オープン日などは公式サイト、インスタグラムにて確認を)(提供:パティスリーサキモト)

今後の予定については、インスタグラム、公式ホームページで告知。インスタグラムのストーリーでは、売り切れたタイミングを報告しているのでご参考に。阪急うめだ本店の出店は、3月11日まで。

■pâtisserie SAKIMOTO(パティスリー サキモト)
公式ホームページ https://p-sakimoto.com/
Instagram https://www.instagram.com/patisseriesakimoto/

■阪急うめだ本店催事『クッキーの魅力』
「サレクッキー」「食感・厚さ」「世界のクッキー」「クッキー缶」をテーマに、約30ブランドが集結。サレクッキーでは、ワインにも合うサレ系を高山シェフが手がけた「たかやマルシェ」、ショコラティエとしても活躍する辻口博啓シェフが考案したトリュフ、塩昆布を使った「ル ショコラ ドゥ アッシュ」含む3ブランドが「ビスキュイワールド」に登場。「食感と厚さ」のコーナーでは、「pâtisserie SAKIMOTO」のほか、ガレットブルトンヌ専門店の「ピースオブケイク」、名パティシエによる「patisserie Sadaharu AOKI paris」、香港の「ジェニーベーカリー」、チョコレートで有名な「DEMEL」が登場。クッキー缶の種類も幅広く、通常はオンライン限定ものや、今回の限定品もとりそろえる。

期間:後半3月6日(水)〜11日(月) ※3月11日は17:00まで
会場:阪急うめだ本店 9F(大阪市北区角田町8−7)
https://website.hankyu-dept.co.jp/

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース)

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