「月15万円あればしあわせ」…仕事を「早々にやめてしまう」“Z世代”の〈本音〉とは

少子高齢化が進む現代において、若者は「働き手」としてもはや貴重な存在といえますが、せっかく就職した会社を早々に辞めてしまう人も少なくありません。”Z世代”と称されることも多い彼らを「いい意味でも悪い意味でも頭の回転がよく、切り替えが早い」と、自身もZ世代である、株式会社OMOCHI代表取締役である白附みくる氏は評します。白附氏の著書『Z世代の取扱説明書 Z世代社長が語るリアルな本音』(サンクチュアリ出版)より、Z世代の「働くこと」に対する考え方を詳しく見ていきましょう。

「Z世代」は高望みをしない?

ここ最近、10代、20代の声を聞く機会が増えています。

たくさんの悩みを聞くなかで思うようになったのは、若者の声を世の中へ届ける代表者になりたいということです。

多くの企業も、若手の声を取り入れて活躍してほしいと思っているはずですが、若者の「生の声」が届いていないのではないでしょうか。

実際に「悩み相談」をSNSで実施すると、10代、20代の人たちから「夢の見つけ方がわからない」「やりたいことを、どう見つけていいかがわからない」「仕事やお金への欲もないし、何のために生きているのかわからない」といった声を聞くことが多いのです。

わがままに映るかもしれませんが、会社に縛られたくない、自分の時間もほしい、高い収入は望まず最低限生活できればいい、という声が目立ちます。

最近、わたしが講師を務めている専門学校の授業で、学生たちに「社会人になったら、最低でもどれくらいのお給料がほしい?」と質問しました。

するとみんな、「月15万円あればしあわせ」というのです。

わたしは驚いて、「本当に? 1LDKのマンションでひとり暮らしをすれば、15万円じゃ足りないよ」と投げかけたところ、「ひとり暮らしができるなんて、いいなぁ…」という反応が返ってきました。

また、わたしのSNSをフォローしてくれている生徒が、「この間、おいしそうに食事をしていましたね。うらやましいな…」ともいっていました。

わたしが「おいしいものを食べたいと思っているやん」といったら、「食べたいけど、欲をいってもどうせ叶わないし…」との答え。どうも「叶わない欲を持つよりも、もっと現実を見ろ」とずっといわれて育ってきたようです。

「無理なものは無理」と切り替えが早い

ところが、みんな「ほしい」と思っているものはたくさんあります。化粧品もほしい、毎月マツエクにも行きたい。それなのに「足りないから、それをいかに安くできるかを考えるしかない。どこを節約できるかばかりを考えてしまう」とのことでした。

「いまの若者たちがこんなことをいっているのなら、将来はどうなるのだろう」と、とても怖くなってしまいませんか?

もっとも、「月に15万円あれば十分」といっている学生たちも、「本当はほしいものがあるのに、考えないようにしている」という印象を受けます。

好きな人と結婚し、一緒に暮らしていくのが理想なものの、自分には無理だろうと思っているのでしょう。

実際、結婚となると、どうしてもお金の話が出てきます。女性は「早く結婚したい」「旦那さんの収入で暮らしたい」と願う一方で、男性は「給料が低いから自分で精一杯」「奥さんまで養うのは無理!」という人が多いのです。

キャリアアップとともにお給料は少しずつ上がっても、税金や社会保険の負担が増えているので、手取り額が数年変わらず生活できない、という話をよく聞きます。

彼らの楽しみは、いかに安くクオリティの高いものを見つけられるか、といった部分が大きいと感じます。コストパフォーマンスを重視する世代なので、お金を使わずに満足できるものを手に入れることが楽しみになっているのでしょう。

いい意味でも悪い意味でも頭の回転がよく、切り替えが早いのがZ世代です。

「どうしよう…」と悩むよりも、「無理なものは無理だ、次へ行こう」と諦めも早いので、「コツコツと努力していこう」と考えている人は少ないかもしれません。

[図表]Z世代の考え方 出所:『Z世代の取扱説明書 Z世代社長が語るリアルな本音』(サンクチュアリ出版)より抜粋

考え方が両極端で「中間層」がいない

Z世代のなかには、「ギラギラ」している人もたくさんいます。

ギラギラしている人とそうでない人が両極端で、「中間」がいないのが、Z世代の特徴のようです。

わたしのまわりの「ギラギラした」人の多くは、学生のときに起業して会社を持っています。

ブランド品を身につけて派手な車に乗り、文字通り「ギラギラ」しています。

おそらく、企業が本当に採用したいのはこちらの人たちなのでしょう(ギラギラはさておき、優秀なので)。

でも、まわりにいる経営者の友人たちは、一度も就職したことがありません。「別に就職しなくてもいい」と思っているので、逆に彼らは企業を必要としておらず、なかなか入社してはくれないでしょう。就職を希望するのは「ギラギラしていない」層の人たちなので、「いまの若者は欲がない…」といわれてしまうのです。

もちろん、後者のほうが圧倒的多数です。

会社は「したいこと」より「名前」に惹かれて就職

「ギラギラしていない」同年代の人たちには、それなりにいい会社、有名な会社へ就職できたらそれでいいかな、と思っている人が多く見られます。自分が会社でしたいことよりも、会社の名前に惹かれて就職しているのでしょう。

知人が、有名な会社に就職した1〜2年目の社会人たちと話したときに、「まったく目標がないので驚いた」といっていました。とにかくいわれたことだけに取り組んで、これからその会社で自分がどんなキャリアを積んでいきたいか、どんな人生を歩んでいきたいかをまったく考えていなかったそうです。

わたしの同級生は大卒なら2年目なのですが(2023年時点)、同級生たちに「働いてみて、どう?」と聞くと、「まあ、とくには…」と返ってくるので、淡々と日々の仕事をこなしているようです。

さらに、「これからどうするの?」と聞くと、「いまはとりあえず、このままでいいかな」と返ってきます。すでに何回か転職をしている人もいますが、「楽に生きたい」「お金は少なくてもいいから、時間があって、ストレスがなくて、上司から文句をいわれない環境にいられたらいいな」という返答です。

「どうしてその会社にしたの?」と聞くと、とくにその仕事が好きだったわけではなく、「アルバイト経験があるから楽だし、シフトもきちんとしているから、なんとなくいいかなって思った」とのことでした。

こういった人は、早々にやめてしまうでしょう。

そもそも、売り手市場で20代を採用したい企業がたくさんあることをわかっているので、「合わなければ別のところへ行けばいい」と考えているように見えます。

このように、ギラギラしている人、あっさりしている人、両極端のタイプが存在しているのです。

白附 みくる

株式会社OMOCHI代表取締役

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