種市篤暉「一番得意球ですし、練習してきたボール」侍ジャパンで光った今も“進化”を続けるフォーク

◆ フォークで圧巻の3者連続三振

「一番得意球ですし、練習してきたボール。自信を持って投げられたと思います」。

ロッテの種市篤暉が、日の丸のユニホームで自身の武器であるフォークで日本の野球ファンを魅了した。

7回が終了した時点で侍ジャパンの投手陣は、欧州代表打線をパーフェクトに抑えていた。8回に登板した種市は先頭のチェルベンカを144キロのフォークで三ゴロに仕留めると、続くベルトレを143キロのフォークで一ゴロ、代打・パオリーニの打球を種市がグラブで弾くもショート・源田壮亮(西武)が難なく処理し、遊ゴロに打ち取り完全試合を継続。

イニング間に「初回の感じが良くなかったので、もうちょっと人差し指を使っているイメージだったのを変えたらだいぶ落ち幅が良くなったのでイニング間に修正できたのは良かったかなと思います」とフォークの握りを修正。

9回先頭のエンカルナシオンを142キロのフォークで空振り三振に仕留めると、続くムジクを143キロのフォークで空振り三振、最後は代打・プロファーを147キロのフォークで試合を締めた。侍ジャパンで初めて投じた初球と最後を締めた球種はいずれも、これまでこだわってきたフォーク。意図があったのか聞くと、「そんなことないです」に続けて出てきた言葉が冒頭のコメントだ。

侍ジャパンで過ごした期間について種市は、「楽しかったですし、一流の選手の話をたくさん聞くことができたので、チームに戻っても還元したいと思いますし、シーズンに繋げていきたい」と、一流の投手から色々なことを聞き刺激を受けた。

◆ 新人時代から磨いてきたフォーク

種市、最大の武器となるフォーク。17年12月13日の新入団会見で種市は「自分のアピールポイントは、フォークボール。マリンスタジアムで三振をいっぱい獲れるように頑張っていきたい」と決意表明。

新人時代からフォークを磨いてきた。一軍でプロ初勝利を含む8勝を挙げた19年に「カウントを取るときはキャッチャーの頭を投げる意識で投げています」と、カウント球にストライクゾーンのフォーク、追い込んでからストライクゾーンからボールゾーンに落ちるフォークを本格的に投げ分けるようになった。当時種市は「握りは変えていないですね。意識を変えています」と話していた。

トミー・ジョン手術から本格復帰した23年4月27日の取材では、ストライクゾーンに投げるフォークについて「ど真ん中くらいの意識です。ど真ん中に全力で投げて勝手に落ちてくれる感じです。落としにいったら落ちないので、その中で腕振って落ちているのが一番空振りとれている要因かなと思います」と明かしている。

昨季は左打者にシンカー系のフォークで空振りを奪うこともあった。昨季4月9日の楽天戦の4回に小深田大翔から空振り三振を奪った139キロのフォークがそうだ。「シンカー気味に投げました。左バッターは気持ち、投げた瞬間、フォースラだと見切られるイメージがあるので、ちょっと体から離れていくイメージで投げています」としっかりと意図を持ってシンカー気味に落とした。

「フォークもそうなんですけど、その日に調子が悪いとわかった瞬間に感覚的に何かを変えるのをしていかないと思います。その中でノートを書くのが一番大事かなと思います。“こういう時はこうなる”、“力んだらフォークが落ちない”とか、“突っ込んだら落ちない”とか試合中にわかっていたら試合中に修正ができる。もっと自分に敏感になっていきたいなと思います」。

ノートに書くことで自身の振り返りに役立ち、イニング間での修正を可能にしている。同年4月23日のソフトバンク戦では「試合中にもっと敏感というか、嗅覚というか、イニングごとに“こうしよう”、“ああしよう”とイニング間のキャッチボールはやっているので、その中でなんとかしようと思っています。なんとかできていない部分が多いですけど、もうちょっと試合中に良くなれば。その中で、フォークは改善できたのは良かったです」と、4回以降フォークの握り方を変えて、4回と5回の2イニングだけでフォークで5つの三振を奪った。

同年5月9日の西武戦では、2-1の4回二死走者なしで中村剛也に1ボール2ストライクから投じた4球目など、シュート気味に落ちるフォークも投げたことも。意図的にシュートさせているのか訊くと「はい」と答え、「個人的に(シュート系のフォークを)投げているというか、もうちょい多めに投げたいというか、スライダーが曲がらない分、もう少しフォークのシュート幅を大きくしたいというか、そういうイメージで投げています」と当時話していた。

そして、 昨年秋の取材でフォークについて種市は「ハイブリット型を作りたい」と130キロ、140キロの2種類を作りたいと意気込み、春季キャンプ時点では「個人的に落差が欲しいなと思った中で、速くて落ちるのが一番良いんですけど、挟まないことにはそんなに落差が出ない。それも試しながらという感じですね」と試行錯誤。

練習試合が始まってからは、ストライクゾーンに投げるフォークが例年に比べて多い。今季初実戦となった2月23日の楽天との練習試合では、0-0の初回一死一塁で島内宏明をストライクゾーンのフォークで二ゴロ併殺、3月2日の西武とのプレシーズンマッチでも1-0の4回一死一塁でコルデロに2ボール2ストライクから5球目143キロのストライクゾーンのフォークで見逃し三振、1-0の5回先頭の佐藤龍世に3ボール2ストライクから6球目に140キロストライクゾーンのフォークで見逃し三振に仕留めた。種市は「フォークの状態が良いので、コースの投げ分けもできるくらいの精度じゃないかなと思っています。ゾーンに投げて、自信を持って投げていました」とその理由を説明した。

フォークの状態が良かった中でも、7日の欧州代表戦のように1イニング目の8回の投球に納得がいかなければイニング間に修正していく。以前種市に変化することに怖さがないのか聞いたことがある。「よくないことはやめていった方が僕のほうは新しい発見がある。それがダメでもダメでOKだと思っているので、いろいろ挑戦していきたいと思います」。今回フォークを修正したことと直接関係はないが、変化を怖れることはない。

種市はフォークの握りだけでなく、3月2日の西武とのプレシーズンマッチでは「足の上げ方をちょっとだけ。意識的では無いんですけど、そっちの方が自分は合っているのかなと思います」と修正した。とにかく常にその時の良い形を選択し、“進化”をしている。もっともっと良いフォークを投げるため試行錯誤しながら、さらなる高みを目指しいく。

取材・文=岩下雄太

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