双葉に届く復興の便り 郵便局13年ぶり営業「この日を待っていた」 福島県の避難区域全てで再開 #知り続ける

双葉郵便局の窓口に立ち、笑顔で応対する佐々木さん(左)。町の復興に貢献する誓いを新たにする

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故により営業を休止していた福島県双葉町の双葉郵便局は町内長塚地区に移転し、7日に約13年ぶりに営業を再開した。これにより、原発事故で避難指示が出た全ての市町村で郵便局が再開した。「この日を待っていた」。震災と原発事故の発生から間もなく丸13年、生活に欠かせない機能が地域に戻り、住民は利便性向上を喜んだ。

 営業開始と同時に再開を待ち望んだ10人以上の町民が訪れた。無職谷津田陽一さん(72)は郵便物を送るため来局した。「今までは隣町の浪江郵便局に通っていた。生活が便利になる」と喜んだ。古里に帰還し、町営住宅に暮らす無職山崎ノブ子さん(78)は「少しずつだが、震災前の日常が戻っている」と笑顔を見せた。

 現地で記念式典が催された。日本郵便の小野木喜恵子常務執行役員東北支社長が「末永く愛される郵便局を目指していきたい」とあいさつした。伊沢史朗町長が「生活環境が改善し、復興が前に進む」と期待を寄せた。関係者がテープカットして再開を祝った。

 郵便窓口や貯金・保険窓口は平日のみ対応し、ATMは平日も含め土、日曜日、祝日も受け付ける。配送業務は引き続き、南相馬市の原町郵便局が担う。

 双葉郵便局は町内新山地区にあったが、原発事故で営業を休止。日本郵便によると、郵便局が一つもない市町村は全国で双葉町のみだった。移転後の住所は双葉町長塚字鬼木34。

■地域のよりどころに 局長 佐々木範雄さん 異動を志願

 「いらっしゃいませ」。大勢の町民が訪れた双葉郵便局に局長の佐々木範雄さん(51)の声が響いた。

 郵便事業を通して、町の復興に積極的に関わっていく決意を胸に刻む。志願して異動してきた。「住民の期待に応え、地域のよりどころを目指していきたい」

 南相馬市の原町郵便局の総務部課長を務めていた約3年前、年に数回双葉を訪れていた。立ち入りができる地域に入り、原発事故の影響で使われなくなった郵便ポストの回収業務などに励んだ。住民が帰還できない町で作業する中、原発事故の影響を痛感するとともに、寂しさを感じた。

 月日が経過し、ニュースなどで町の一部地域で避難指示が解除され、少しずつ復興が進む様子を目にした。「復興途上の町に貢献したい」との思いが強まった。昨年、上司に双葉郵便局で働きたいとの思いを伝え、南相馬市の鹿島郵便局から着任した。実家のある相馬市から通う。

 現在、町内には約100人が暮らす。徐々に居住者が増える中、「住民の利用機会が多い郵便局が、交流の場としても活用してもらえるようにしたい」と思い描く。

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