1食、100円です…手取り19万円、東京で1人暮らしのサラリーマン、「昼食は手作り弁当」に漂う悲壮感

会社のお昼休憩に、家から持ってきた「手作り弁当」を広げる新卒社員。もちろん「料理が趣味なんです!」という人もいるでしょうが、よく聞くのが「節約のため」。「削れるといえば、まずは食費」という若手サラリーマンの実態をみていきましょう。

手作り弁当をもって出社する「新卒社員」の実態

昼休み、社内の食堂でお弁当を食べる新卒社員。「若いのにこれだけで足りるんだろうか……」と心配になるような大きさだったと、20代の先輩社員。

――それだけで足りるの?

と聞くと

――ちょっと足りないですね

――手作り?

――そうです、自分で作ってます!

――へぇ、偉いね

――1食100円くらいなんです!

元気よく答える一方で、どこか悲壮感漂う新卒社員。話を聞くと、その新卒社員は大学生時代に住んでいた都内アパートにそのまま住み続け家賃は月7万円。新卒社員の給与では生活は厳しく、基本的に昼食は手作り弁当。夕食も自炊して節制をしているとか。

厚生労働省『令和4年 賃金構造基本統計調査』によると、新規学卒者の平均給与は、大卒男性で22.9万円。東京都であれば24.0万円です。手取りにすると19万円ほどになります。そこから家賃や光熱費といった固定費を払い、残ったお金は日々の生活費に、交際費に……決して生活は楽ではありません。削れるところといえば食事なのでしょう。

【東京在住20代「月収額面24万円」の手取り額】

額面:240,000円

所得税:4,291円

住民税:9,425円

健康保険:12,000円

厚生年金:21,960円

雇用保険:1,440円

手取り額:190,883円

お昼をコンビニで買おうとしたら、おにぎり2個でも300円ほど。そこにお茶をつけたら400円。手作り弁当を持ってきたら、その4分の1で済むわけですから、節約効果はバッチリです。

ただ、新卒社員の努力を褒めた先輩社員。心の中では「可哀そう……」と思ったといいます。さらに話を聞いたところ、奨学金の月の返済が2万円ほどあり、それがかなり厳しいといいます。一方、先輩社員は都内の実家から大学に通っていたこともあり奨学金の利用はなし(しかも今も実家暮らし)。後輩に抱いた、可哀そうという気持ちと、申し訳ないという気持ち……思わず後日、夜ご飯を御馳走してあげたといいます。

人生設計が大幅に変わる「奨学金返済」の苦労

労働者福祉中央協議会が日本学生支援機構の貸与型奨学金を利用し、現在返済中の人に対し行った『奨学金や教育費負担に関するアンケート』によると、奨学金の平均借入額は300万円強、月々の返済額は1.5万円ほど。平均返済期間は平均14.5年です。

さらに返済の負担感を聞くと、「余裕がある」は9.6%と1割を割り込み、「何とかなっている」が45.9%、「苦しい」が44.5%。さらに「苦しい」と回答した人のうち、「かなり苦しい」が20.8%でした。

奨学金の返済が生活設計に影響しているか聞いたところ、「影響があった」という回答が最も多かったのが「貯蓄」で65.6%。「レジャーや交際」48.4%、「仕事や就職先の選択」46.1%、「ひとり暮らしの選択」46.0%、「日常的な食事」42.2%、「車の購入」42.0%と続きます。さらに「結婚」37.5%、「出産」31.1%、「子育て」31.8%、「住宅購入」32.8%と、多くの人が経験するライフイベントにも、奨学金の返済は大きな影響を与えていることが分かります。

そして現状の家計について聞いてみると「貯蓄ができるぐらいの余裕がある」が30.9%、「収支トントンである」が48.1%、「貯蓄を取り崩してやりくりした」は21.0%でした。

返済の必要がある貸与型奨学金の利用は、卒業と同時に数百万円の借金を抱えることと同じ。その返済は、これから先の長い人生に大きな影響を与えるものです。もし返済が苦しい場合は、「減額返還制度を利用」するのも手。これは月々の返済額を減らして、返済期限を延長できる制度。また「返還期限猶予制度を利用する」という手もあります。これは奨学金の返済が困難な場合に返済期限を一定期間延長できる制度です。どちらも返済総額が変わるわけではありませんが、返済負担の軽減には効果的です。

また奨学金の返済に関して不安や悩みがある場合は、日本学生支援機構の奨学金返還相談センターなどに相談することもおすすめです。

[参考資料]

厚生労働省『令和4年 賃金構造基本統計調査』

内閣府『生活設計と年金に関する世論調査(令和5年11月調査)』

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