運転免許返納、減少続く 茨城県内、23年は8000件割り込む 移動手段、生活に必要

茨城県内で運転免許証の自主返納が減少している。2019年に1万件を超えていた返納件数は4年連続で減少し、23年は8千件を割り込んだ。県は運転免許を返納した高齢者に対するサポート事業を進めているが、返納後の移動手段に不安を感じたり、生活のため手放せなかったりする人も多いとみられる。

県内の運転免許の返納件数は、東京・池袋で19年に起きた高齢ドライバーが母子をはねて死亡させた事故を契機に、前年の約7800件から約1万800件に急増。しかし、20年以降は新型コロナウイルスの感染拡大などの影響で減少傾向が続き、23年は17~18年とほぼ同水準だった。

県警交通総務課によると、23年の運転免許返納7960件のうち、80歳以上が55%を占め、75歳以上は24%、65歳以上は18%だった。一方、運転免許保有者に占める高齢者の割合は、12年の18.7%から23年には28.6%と約10%増。高齢ドライバーが主な当事者となった事故も増加し、23年は前年比142件増の1740件に上った。死亡事故は22件で、死亡事故全体の23.9%を占めたという。

県は18年以降、運転免許を返納した高齢者に、免許の代わりとなる「運転経歴証明書」を提示すれば協賛事業者から割引などを受けられるサポート事業を展開。市町村でも公共交通機関利用の優遇制度を設けたり、バスやタクシーの利用券を交付したりして、自主返納しやすい環境づくりを進めている。

免許返納減少の背景について、県警は、県内の道路総延長が全国2位の5万9千キロと長いことや、公共交通機関がカバーしきれない空白地域の存在を指摘する。

県警は「返納すれば生活の足がなくなる人は多いが、交通安全教育を地道に進め、高齢者には定期的に自分の運転を見直してほしい」(同課)としており、自動ブレーキなど運転補助機能があるサポートカーの同乗体験や教習コースでの実車講習などの受講を呼びかけている。

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