壮絶! まさかの兄弟間トラブルの原因に…子の結婚・独立を祝った父親の「愛情ゆえの行動」

親の生前、兄弟姉妹の間で1人だけやたら親からお金の支援を受けていた子がいる。そんな家庭は珍しくないだろう。だがしかし、それが相続において大きなトラブルへ発展することがある。

中でもマイホームの購入を支援してもらった子が兄弟姉妹間で1人だけいる場合は特に問題となりやすい。今回は、そんな生前贈与が“壮絶な相続争い”へ発展した村田さん一家の事例を紹介する。

村田さん一家が抱えていた事情

村田さん一家は平凡なサラリーマン家庭だ。70代の敏夫さんに40代の智徳さん(長男)、同じく40代の啓さん(次男)、そして30代の正一さん(三男)という家族構成だ。敏夫さんは早くに妻を亡くし、男手ひとつで3人の子を育て上げてきた。

幸い3人とも結婚して家庭を持ち、安定した職にも就いてそれぞれの道を歩んでいる。

ただ、現在に至るまでの道は決して平凡だったわけではない。学生時代の次男の啓さんは勉学が苦手で無気力なタイプだった。時折アルバイトをするも長くは続かない。学校を卒業してからも数年は定職に就くことをせずふらふらしている日々が続いていた。

「いつまでそんなことやってるんだ!」

敏夫さんからはそのように叱られる日々だったようで、智徳さんや正一さんは啓さんのことを気にかけ、家を出てからも定期的に啓さんの様子を見に来ていたという。

そんな啓さんも30歳ごろを機に一念発起。今や独立して結婚。自分の家庭を守っている。独立にあたっては結婚が重なっていたため、父の敏夫さんから住宅ローンの頭金として400万円の支援を受けていた。いわゆる「生前贈与」だ。智徳さんや正一さんも父の支援には大賛成。みなで啓さんの独立を祝ったと聞いている。

だが、その生前贈与こそが今回の相続トラブルの原因となってしまうことにその時は誰も気づいていなかった。

相続財産がすっからかん……憤る長男

トラブルが起こったのは父の敏夫さんが亡くなってすぐのこと、遺産の分配について話し合った時だ。敏夫さんの遺した財産は500万円程度。決して大きな額ではないが3人で分けてもそれなりの額にはなる。ここは仲良く3人で均等に分けるものかと思いきや、異を唱える者がいた。長男の智徳さんだ。

「啓、お前は俺たちにおやじの遺産を返すべきだ。民法には特別受益がある」

ぽかんとする啓さんと正一さん。それに対して智徳さんは淡々と続ける。

「啓、お前はおやじから遺産の前渡しを受けていたようなものだ。これまでさんざんお金を出してもらっていただろう。おまけに家を出る際は住宅ローンの頭金ももらっただろ。それは特別な利益として、少なくとも住宅ローンの頭金400万円は俺たちに返還するべきだ」

確かにそうだ、啓さんへの支援400万円がなければ、遺産の総額は900万円になっていたはず。兄弟3人で300万円ずつ分けられたわけだ。それが現状は遺産が500万円のみ。兄弟1人あたり170万円弱になってしまっている。

智徳さんは相続の現状について考えた時、啓さんだけが遺産の大部分を独り占めしているように思え、個人的に法制度について調べていたようだ。そこで特別受益の存在について知り、先の発言に至ったようだ。

●対する啓さんの反論とは? また、静観していた正一さんにも「1人だけいい人ぶってんなよ!」とまさかの飛び火が……。後編【長男が激怒…「親から支援を受けるのは当然」父親の遺産を減らした次男の「身勝手な言い分」】で詳説します。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。

※登場人物はすべて仮名です。

柘植 輝/行政書士・FP

行政書士とFPをメインに企業の経営改善など幅広く活動を行う。得意分野は相続や契約といった民亊法務関連。20歳で行政書士に合格し、若干30代の若さながら10年以上のキャリアがあり、若い感性と十分な経験からくるアドバイスは多方面から支持を集めている。

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