【独占インタビュー】監督・木下絵李&ニック・マカーゴ「一緒に作品づくりをするのは久しぶり」音楽を担当したあのアーティストについても語る!――​​​「サイエンスSARU×MBSオリジナルショートアニメ大作戦!」

MBS/TBS系では、スーパーアニメイズムおしり枠にて「サイエンスSARU×MBSオリジナルショートアニメ大作戦!」(金曜深夜1:50ごろ)が絶賛放送中。アニメ「DEVILMAN crybaby」(Netflix)、「平家物語」(フジテレビほか)、2024年10月に放送が決定したアニメ「ダンダダン」(MBSほか)を制作するアニメーション制作会社「サイエンスSARU」イチ押しのクリエーターたちが手掛けた珠玉の90秒アニメーションを全4回にわたってお届けします。

3月8日放送の第2回「MOON Episode 1 Sandwich」と3月15に放送の第3回「MOON Episode 2 Camping」の監督を務めるのは、東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了後、サイエンスSARUに入社し、「映像研には手を出すな!」(NHK総合)で絵コンテ・作画監督、映画「犬王」(22年)で演出補佐・プロップデザインを務め、その手腕を発揮してきた木下絵李さんです。

「MOON」は、宇宙のどこかある星で、大きな荷物を抱えた「月」が、宇宙服を着た犬の「エイキン」と出会うところから物語がスタート。種族の異なる「月」と「エイキン」が自由気ままに暮らす様子を描くハートウオーミングな作品です。

TVガイドWebでは、「MOON」にて満を持して商業作品監督デビューを果たした監督・木下絵李さんと、第3回の演出とアニメーションを担当したニック・マカーゴさんに独占インタビュー。見どころや制作の秘話などについて語っていただきました。

――MBSとのコラボ企画ということですが、この企画が生まれた経緯や、話が来た時のお気持ちをお聞かせください。

木下 「2022年の夏頃に、MBSさまの放送枠で90秒のショート作品の企画案を募集する社内コンペがあり、『MOON』の原案を提出したのがきっかけです。企画が通った時は、自分が出したアイデアで気に入ってもらえるところがあったのかなと、とてもうれしかったです」

マカーゴ 「私の参加は皆さんよりも少し遅いタイミングで決定しました。ショートアニメ4本分のうち1本だけが決まっておらず、1話分をどうするかというところで『ニックさん、やってみませんか?』とお声がけいただき、木下さんが監督されている『MOON』のEpisode 2で参加という形になりました」

――ちなみに、お二人は過去に制作で一緒に関わったことがあったのでしょうか。

木下 「『SUPER SHIRO』(TELASAほか)などで一緒にお仕事をしたことがあります」

マカーゴ 「私がサイエンスSARUに入社したばかりの時、木下さんが『SUPER SHIRO』で演出をご担当されていて、私は原画担当としてそこで初めて一緒にお仕事をしました」

――本作で久々に一緒に制作することになったのですね。

木下 「同じ作品で、かつ割と近い距離でご一緒するのはすごく久しぶりでした」

――音楽を担当された米国アーティストのルイ・ゾングさんは、木下さんがオファーされたとお伺いしました。

木下 「ルイさんの楽曲やイラストレーション作品が以前から大好きで、本作の企画を考える際にもたくさんのインスピレーションを受けました。その時はまさかご本人に音楽を担当していただけることになるとは思っていなかったので、後日オファーを受けてくださったと聞いた時は信じられない気持ちでいっぱいでした。一緒に創作ができる機会をいただけて感謝しています!」

――マカーゴさんにお伺いします。Episode 2を制作されるにあたり意識されたことを教えてください。

マカーゴ 「木下さんのしっかりとした原案がすでにあったので、その雰囲気に合わせることが重要だと思いました。キャラクターデザインや音楽に漂うような雰囲気がありましたので、キャラの動きや仕上げに関しては、その雰囲気に近づけるよう意識しました」

――今までさまざまな作品に携わられてきたと思いますが、ショートアニメの魅力を教えてください。

木下 「作り手の作風や個性、人柄が割とそのまま画面に出ているところがショートアニメの魅力だなと感じます」

マカーゴ 「ショートアニメの魅力は“少し遊べるところ”だと思います。1クールのアニメに取り掛かるとなると責任が重くなりがちですから、そういうことを気負わずに新しいことにもチャレンジできるのも魅力の一つですよね」

――どんな思いを込めて本作を制作されたのかお聞かせください。

木下 「深夜で放送することが最初から決まっていたので、大人の方々が寝る前に見てもらう作品になるのかなと意識していました。リラックスした状態で楽しんでいただける作品になればいいなと思っています」

マカーゴ 「僕は逆に思いを込めすぎず、落ち着いた作品を目指しました。登場するキャラクターたちは特に深く考えずに楽しんでいたり、くつろいでいたりしています。考えた上で行動するのではなく、本能で動いていると思ってください。ですので、落ち着いた世界観で時が流れていく雰囲気を目指して制作しました」

――制作中に印象に残ったエピソードがあればお聞かせいただけますでしょうか。

木下 「印象的だったのは、やはりルイさんが音楽を担当してくださると決まった時ですね。あの時が最もテンションが上がっていました(笑)。あとは、自宅でEpisode 1の作画作業をしていた時に、2歳の子どもに初めて私がアニメーションを描いている様子を見せたら、『MOON』の絵を『すき!』と言ってくれたのがうれしかったです」

マカーゴ 「Episode 1で犬のキャラクター(エイキン)を見た時、そのアイデアにとても魅了され、自分でアニメーションにしてみたいと強く思いました。そこでEpisode 2ではエイキンをストーリーに登場させたいと木下さんに提案し、快諾していただきました。木下さんからエイキンのモデルになった犬種の参考動画もいただき、犬らしい動きや表情などにこだわって制作しました」

――お二人ともさまざまな作品を手掛けられていますが、作品づくりにあたり、これだけは大切にしていることをお聞かせください。

木下 「普段は監督以外のポジションで作品づくりに参加することがほとんどですが、その場合は作品の監督をされている方が表現したいことを理解することが一番大事だと思っています」

マカーゴ 「作画を担当していると、キャラクターの表情やアクションに愛着が生まれてくることが多いので、その気持ちを大切にしています」

――今後、サイエンスSARUが「こんなクリエーター集団になったらいいな」など思いをお聞かせください。

木下 「制作チームもクリエーターチームも、それぞれの個性ややりたいことを生かして、作品づくりができる環境であればいいなと思います。今回のショートアニメで、私自身、伸び伸びと作らせてもらい、とてもよい経験ができたため、そういう機会が今後も増えてほしいと感じました」

マカーゴ 「今後もオリジナルの作品の制作を続けてほしいなと思っています。サイエンスSARUから生まれたオリジナル作品は、やっぱり魅力的で面白いなとあらためて思います」

――最後に視聴者へ見どころやメッセージをお願いいたします。

木下 「1日の終わりに全身の力を抜いて楽しめる作品になるといいなという思いで制作に臨みました。眠る前などにぜひ、ゆったりとたくさんの方々にご覧いただけたらうれしいです」

マカーゴ 「少し落ち着いた雰囲気のアニメーションと、ルイさんが手掛けられた音楽のマリアージュで、ぜひ本作をお楽しみください!」

――ありがとうございました! 久々にチームを組んだお二人が生み出したかわいらしいキャラクター、楽しみにしています。

【プロフィール】

木下絵李(きのした えり)
2016年にサイエンスSARUにアニメーターとして入社。映画「きみと、波にのれたら」(19年)、「映像研には手を出すな!」(NHK総合)などに原画・フラッシュアニメーター・作画監督・絵コンテなどとして深く関わる。映画「犬王」(22年)では、演出補佐だけではなくプロップデザインも担当。
◆最初に夢中になったキャラクター:「『ルパン三世』の石川五ェ門です」


Nick McKergow(ニック・マカーゴ)
オーストラリア出身。オーストラリアのスタジオで経験を積んだのち、2019年にサイエンスSARUにアニメーターとして入社。「映像研には手を出すな!」(NHK総合)、映画「犬王」(22年)、「四畳半タイムマシンブルース」(Disney+)では原画を、「スコット・ピルグリム ティクス・オフ」(Netflix)では作画監督も務める。
◆最初に夢中になったキャラクター:「ディズニー映画『バンビ』に出てくるバンビのかわいらしい表情にときめいて心ひかれました」

【番組情報】

「サイエンス SARU×MBS オリジナルショートアニメ大作戦!」
MBS/TBS系全国28局ネット スーパーアニメイズムおしり枠
金曜 深夜1:50ごろ〜全4回(3作品)

AT-X
「MOON Episode 1 Sandwich」
「MOON Episode 2 Camping」
3月30日(土)午後9:05~9:15
4月1日(月)深夜4:35~4:45
4月6日(土)午前7:05~7:15
※TVer、MBS動画イズムほかにて配信あり

取材・文/山本恵代(TBS・MBS担当) 撮影/蓮尾美智子

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