介護支援やグルメイベント企画、弁護士も 沖縄の各分野で活躍する女性たち【3・8国際女性デー2024】

 3月8日は、女性の社会参加や地位向上を目指し国連が定めた「国際女性デー」です。沖縄県内の各分野でそれぞれの力を発揮し、活躍する女性たちを紹介します。

 

介護通し社会明るく

大城五月さん(43)ハレルヤ社長

 居宅介護支援や病院付き添いサービスを展開するhareruya(ハレルヤ)の社長として日々、高齢者やハンディキャップのある人と社会とを橋渡しする。社名に「明日が晴れやかになるように」との願いを込めた。「今あるものをつなげ、ないものはつくる」と常に前向きだ。

 幼少期は祖父母に育てられた。祖父母が入所する施設で出会った職員の元気で明るい姿が、介護を志すきっかけとなった。20歳で結婚。出産を経てヘルパーの資格を取得した。シングルマザーになり、子育てをしながらの勤務も「子どもたちと元気に暮らせるなら」と発想を切り替えた。

 ケアマネジャーになって以降、利用者との対話を通して「できないではなくて、何ができるか」を常に考えるようになった。

 2016年に独立してハレルヤを設立。高齢者やハンディのある人が、医療機関の受診に二の足を踏む姿を目の当たりにした。病院につなぐ役割が必要だと痛感し、すぐに病院付き添いサービスに着手した。「早期の受診で、病状が悪化せずに済むケースも多い」と話し、今ではひと月に約80件の利用がある。

 介護に携わる一人として、離職者をなくす活動にも取り組む。「女性と男性それぞれに強みがある。弱い立場の人を含め、それぞれの得意な点を見つけて認め合えば、社会はもっと良くなるのではないでしょうか」と投げかける。(学芸部・天久仁)

「男女がそれぞれ良さを認め合えば、社会はもっと良くなります」と話す大城五月さん=2日、沖縄市胡屋

後輩の挑戦を後押し

友利公子さん(57)沖縄県出納事務局参事

 4月、県の知事部局などの部長級に女性3人が昇進する。そのうちの1人、会計管理者に就任する。

 商工労働部や子ども生活福祉部、出納事務局で働いた経験があり「会計管理者は性格に合っていると感じた」と内示を受けた時の感想を語る。

 「女性が意見を発信することで職場環境は良くなる。尻込みしないで、チャレンジしてほしい」と後輩職員を後押しする。

 出産や育児では「夫がいろいろと手伝ってくれたから苦労はあまりなかった」と二人三脚の取り組みを振り返る。一方、仕事では男女の差を実感したことがあるという。「大事な局面で男性が起用されると感じたことはある」。ただ、現在県では「県職員の女性活躍推進及び仕事と子育て両立支援プラン」を策定しており「環境は整っている」と話す。

 職員同士のコミュニケーションで、風通しの良い職場の作り方を先輩たちから学んできた。「私ができているかは分からない」と謙遜しつつも「良いことも悪いことも報告しやすい状況をつくることが大切」と語り、意見を発しやすい環境整備に取り組む。

 女性が意見をさらに出すことで業務の効率やスピードは上がると考える。「前例踏襲ではない柔軟な発想が必要で、そこに性別の差はない」と語る。

 好きな言葉は「微力だけど無力じゃない」。小さな声も拾っていく。(政経部・國吉匠)

「女性職員にチャレンジしてほしい」と話す沖縄県出納事務局の友利公子参事=5日、県庁

食で沖縄盛り上げる

下地友香さん(48)オフィス・シモジ代表

 手がけるグルメイベントは月に4~5本。企業から商品PRや、施設への集客の相談を受けては、アイデアを出す。広報のため企業の担当者とメディアを回り、イベント当日には現場で精力的に動き回る。

 年に250食を食べるほどのカレー好き。自身が仕掛けた那覇カレーグランプリは今年で10回目を迎え、すっかり定着した。昨年、沖縄アウトレットモールあしびなーが開催したラーメンフェスタが大成功で「ラーメン店がびっくりするぐらいの売り上げだった」と笑顔を見せる。

 もともとは、東京の大手レコード会社勤務。沖縄の歌手を担当したことがきっかけで、沖縄の魅力に引かれ、29歳で会社を辞め、埼玉から沖縄に移住した。

 テレビ局などで仕事をしているうち、県内企業に知り合いも増え、2016年にグルメイベントを企画・運営する「オフィス・シモジ」を立ち上げた。

 泡盛マイスターやカレーマイスター、食育スペシャリストの資格や認定を取得し「グルメイベントをやる上で、信頼度も上がったと思う」。

 グルメサイト「ちゅらグルメ」の編集長でもある。

 男性と一緒に仕事をする場面が多いが、「『例えばハーフサイズを出せば女性が来やすい』など、女性の視点を生かすことができる」と自信をのぞかせる。「出店者や企業が喜んでくれた時が一番うれしい。食で沖縄を盛り上げたい」と話し、きょうも奔走する。(政経部・大城大輔)

「食を通して地域を活性化したい」と話すオフィス・シモジの下地友香代表=4日、那覇市・沖縄タイムス社

育児中の母親つなぐ

登川めぐみさん(40)ママ夢ラジオ沖縄代表

 子育て中の女性と地域をラジオでつなごうと、昨年9月に発足した「ママ夢ラジオ沖縄」。代表の登川めぐみさん(40)は、沖縄市のFMコザで月2回番組を持ち、メンバーと一緒にパーソナリティーとして、子育ての悩み相談を受けたり、子ども連れでも気軽に行けるスポットなどの情報を発信している。

 2児の母。ラジオを始めたのは自身の育児経験がきっかけだった。8年前に第1子が生まれた時、育児は母親が全てやるものだと思い込んでしまった。ふさぎ込むようになり、月1回の助産師の訪問も断ったり、友人に会うのも避けたりするようになった。育児休業後に職場復帰したものの仕事と家庭の両立に悩んだ。「自分と同じような思いをする人を増やしたくない。『一人で抱え込まなくていいんだよ』ということを何らかの形で発信したい」と思うようになった。そんな時に出合ったのが、全国各地で展開するママ夢ラジオの存在だった。

 番組には「子育てで自分の時間が取れない」「世間の目が気になって、外出して自分の趣味を楽しめない」といった声が寄せられるという。今年2月には子育て中の母親が美容や趣味を楽しみ、他の母親と交流する初のイベントを開催。無料の託児所を設け、好評だった。

 現在、沖縄のメンバーは11人で全員子育て中の女性。活動は手探りだが「お母さんたちが気軽に参加できる交流の場をつくりたい。沖縄の女性を元気にしたい」と前を向く。(中部報道部・伊集竜太郎)

「沖縄の女性を元気にしたい」と語る「ママ夢ラジオ沖縄」の登川めぐみ代表=2月29日、沖縄市・沖縄タイムス中部支社

依頼者の声聞き前へ

野崎聖子さん(50)弁護士

 依頼者を少しでも幸せな気分に、一歩でも前へ-。離婚やDVなど家事事件を主に扱い、弁護士として「少しでもエンパワーメントできれば」と心がける。県内大手企業の社外取締役も務め、4月には県出身女性で初の沖縄弁護士会会長に就任する。

 宮古島出身で、高校卒業までサトウキビ収穫を手伝った兼業農家育ち。琉球大学に進学後、友人の影響で弁護士を目指し、4度目で司法試験に合格した。企業法務に魅力を感じて東京の大手事務所に就職、出産・育児を機に沖縄へ戻った。

 東京では性別で業務が偏ることはなく、「女性と意識して仕事することはなかった」。一方、帰郷した2006年の沖縄は今以上に女性弁護士が少なくニーズが高かった。「女性だからって家事事件を押し付けるのはやめてください」。事務所の上司にそう言い放ったこともあった。

 しかし外部の法律相談で深刻な女性の状況を目の当たりに。女性弁護士だから聞けること、共感できることも多いと実感した。何をやりたいかより、自分に何が求められ、何ができるのかを意識し始めた。

 家庭と仕事のバランスに悩み、葛藤も多かったが、依頼者や周囲に育てられたという。「自分の時間と能力を生かせるようにしてくれた」と感謝する。

 誰もが枠にはめられず、自然に自分らしく活躍できる社会を望む。「みんなそれぞれ。私は私なりに社会にしっかり恩を返したい」(社会部・新垣玲央)

「みんなそれぞれ。自分らしく活躍を」と話す野崎聖子弁護士=5日、那覇市・うむやす法律会計事務所

 

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