全国企業倒産集計 2024年2月報 倒産件数、22カ月連続で前年同月を上回る

倒産件数推移

概況・主要ポイント

1.倒産件数は734件(前年同月574件、27.9%増)と、22カ月連続で前年同月を上回った。前年同月より160件多く、2月としては過去10年で最多となった。2023年4月-2024年2月の累計は8011件と、2022年度(6799件)を17.8%(1212件)上回った

2.負債総額は1361億6600万円(前年同月1005億4600万円、35.4%増)。3カ月連続で前年同月を上回り、2月としては4年連続で前年同月を上回った

3.業種別にみると、7業種中5業種で前年同月を上回った。増加率でみると、『製造業』(前年同月49件→88件、79.6%増)が最も高く、12カ月連続で前年同月を上回り過去最長に並んだ。『製造業』では「出版・印刷・同関連産業」(同5件→10件)が2倍に増加した

4.業歴別にみると、『新興企業』が219件で、24カ月連続で前年同月を上回った

5.地域別にみると、9地域中8地域で前年同月を上回った。『東北』(前年同月34件→59件、73.5%増)が、4カ月連続で50%超えの大幅増加となった。2023年4月-2024年2月の累計では、39都道府県が2022年度の件数を超えた

6.「人手不足倒産」は16件発生し、7カ月連続で前年同月を上回った

7.「後継者難倒産」は54件発生し、2カ月ぶりに前年同月を上回った

8.「物価高(インフレ)倒産」は71件発生し、高止まりの水準が続いた

注目の倒産動向-1

「印刷業」倒産動向

■23年度倒産、10年ぶりの100件超えも

紙代、インク代高騰で小規模事業者の倒産急増

 2023年度の印刷業の倒産は2月までに91件となり、すでに2022年度(59件)を54.2%上回り、3月末までに100件に達する可能性が高くなった。100件に達すれば、2013年度(112件)以来10年ぶりとなる。一方、2月までの負債総額は197億8200万円で、こちらも2022年度(179億2000万円)をすでに上回っている。

 2023年度の特徴は、負債額の大きい倒産が少ないことだ。2022年度の負債20億円を超える倒産は、冨士印刷㈱(東京、破産、負債43億5600万円)、土山印刷㈱(京都、民事再生法、同27億4400万円)、㈱東光社(東京、民事再生法、同21億円)の3件だったが、2023年度は音羽印刷㈱(東京都、破産、同20億5900万円)のみとなっており、1件あたりの負債額が小さくなっている。

 近時の業界環境について関係者は、「倒産のみならず廃業も多く、ここ数年で取引先が相当数減っている」「ペーパーレスが叫ばれるなか、見通しは厳しい。社長の高齢化問題も根深い」「さらに値上げしたいが、値上げすれば販売量が落ちることが目に見えているため決断しにくい」などと話し、解決すべき課題は多い。

 コロナ禍では、ゼロゼロ融資をはじめとする各種支援策が中小企業の資金繰りを改善させ、2021年度には2000年度以降最少となる46件にまで減少した。しかし、近時は原材料価格の高騰により紙やインク代の値上げが進み、資金繰りに窮する事業者が増えている。2024年度も業界環境が好転する材料は乏しく、倒産件数は高水準で推移するとみられる。

ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産

■2024年2月は56件発生 緩やかな増加基調が続く

 「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は、2024年2月に56件(前年同月41件、36.6%増)発生した。前年比1.5倍を超える急増局面は一段落したものの、依然として緩やかな増加基調が続いている。「不良債権(焦げ付き)」に相当するコロナ融資喪失総額は推計で約775億7700万円にのぼり、国民一人あたり600円超の負担が発生している計算になる。

人手不足倒産

■2024年2月は16件発生 7カ月連続で前年同月を上回る

 「人手不足倒産」は、2024年2月に16件(前年同月9件、77.8%増)発生した。23年8月以降、7カ月連続で前年を大きく上回る水準が続いた。職人不足が深刻な建設業や、対面接客が中心となるサービス業での発生が目立つ。従業員や経営幹部などの退職・離職が直接・間接的に起因した「従業員退職型」の倒産は3件にとどまり、4カ月ぶりに前年同月を下回った。

注目の倒産動向-2

「スキー場」倒産動向

■「雪不足」が深刻 スキー場の倒産増 過去10年で最多に並ぶ

訪日客のスノーリゾート熱など追い風も 今後の降雪が来シーズン占うカギに

 スキー場の倒産が増加している。2023年に発生したスキー場運営企業の倒産は、リゾート会社やホテル、第三セクターなど合計7件判明した。前年(3件)から倍増したほか、コロナ禍が直撃した20年と並んで過去10年で最多となり、スキー場倒産の増勢が強まっている。

 近年続く記録的な暖冬と雪不足により、営業ができない、または営業エリアや期間の縮小を余儀なくされるといったスキー場が増加している。スキー場運営サイトの情報などを元に帝国データバンクが調査した結果、昨年12月に営業を開始した全国約300カ所のスキー場のうち、半数超が今年3月中まで営業を予定していた。

 ただ、営業中のスキー場でも雪不足からゲレンデの一部をクローズするといった対応が目立つほか、東北以南では2月までに営業を終了したスキー場もみられた。新型コロナが5類へ移行して初めてとなるフルシーズン営業にかける期待も大きかっただけに、雪不足に意気消沈した施設は少なくないとみられる。

 北海道では訪日外国人のスノーリゾート熱も背景に客足は好調なほか、大手スキー場では気温に左右されない降雪機を導入するなどの対策が進んでいる。ただ、中小スキー場では老朽化した機材における更新費用の捻出が難しいなど営業継続には課題も多い。今後の降雪予報次第では閉場や廃業を決断するスキー場がさらに増加する可能性もある。

後継者難倒産

■2024年2月は54件発生 2カ月ぶりに増加

 「後継者難倒産」は、2024年2月に54件(前年同月32件、68.8%増)発生した。このうち、経営者の病気・死亡が直接の要因となった倒産は25件発生し、46.3%を占めた。経営者の体調不良や死亡により事業承継が行き詰まった企業や、自社の経営環境が悪化したことで、後継への事業承継をあきらめた企業の倒産が多く発生している。

物価高(インフレ)倒産

■2024年2月は71件発生、高止まりの水準続く 「値上げ難型」は6件

 「物価高(インフレ)倒産」は、2024年2月に71件(前年同月53件、34.0%増)発生した。23年10月(86件)がピークとなり、「物価高」直撃の影響は緩和されつつあるものの、高止まりの水準が続いた。このうち、十分な価格転嫁ができず経営破綻に至った「値上げ難型」の物価高倒産は24年2月に6件発生した。

今後の見通し

■2023年度はコロナ禍前の9000件近くに、2024年は1万件突破も視野

 2024年2月の企業倒産は734件発生し、前年同月(574件)を27.9%(160件)上回った。2022年5月から22カ月連続で前年同月を上回り、2月としては2014年(765件)以来10年ぶりに700件台となった。中小規模の事業者を中心に、物価高や人手不足、コロナ支援策縮小の影響を複合的に受けた倒産が増えた。

 年度ベースでは、2023年4月-2024年2月の累計は8011件となり、2月時点で2022年度(6799件)を17.8%(1212件)上回った。例年3月は2月よりも倒産が増え、今年も800件前後の件数が見込まれることから、2023年度はコロナ禍直前である2019年度(8480件)の水準を上回り9000件近くに達する可能性がある。また、年ベースでは今後の発生状況次第で、1万件突破も視野に入る。

 負債総額は1361億6600万円となり、前年同月(1005億4600万円)を35.4%(356億2000万円)上回り、2月としては4年連続で前年同月を上回った。太陽光発電システム販売の「スマートテック」(茨城、負債45億円)、佃煮製造の「野村佃煮」(京都、同34億400万円)など、負債数十億円クラスの倒産が各地で目立ち始めており、今後は倒産件数とともに「負債総額の増加」に注目したい。

■目立つ「突然死」、引き続き「優良先」の粉飾決算発覚に警戒

 負債額の増加は、倒産企業に対する融資金の焦げ付きを通じて、金融機関の与信費用の増加につながる。2月中旬までに出そろった上場地銀の決算発表をみても、融資先の経営悪化や倒産に備えた与信費用が増加した。さらには、金融機関が「優良先」として融資していた先で粉飾決算が発覚し、「突然死」する案件も昨年来相次いでおり、先行きへの警戒感は強い。

 2月から3月にかけても、粉飾発覚後に倒産するケースが判明した。中古自動車卸の「彦根相互ホールディングス」(滋賀、負債27億4700万円)、販促グッズ企画・制作の「スピンドル」(東京、同52億6400万円)などで、いずれも負債額は数十億円にのぼり、取引金融機関は相応の与信費用を強いられた。

 現時点で倒産していないものの、過去の粉飾が明らかとなり、金融機関との間でバンクミーティング中の企業も水面下で複数判明している。金融機関が融資先を見る目もいっそう厳しくなるなかで、今後も引き続き「優良先」の粉飾決算発覚(『粉飾倒産』含む)が増えそうだ。

■各種リスクイベントが重なる「4月」以降、「あきらめ倒産・廃業」続出も

 3月4日、日経平均株価が初の4万円の大台を超えた。企業業績も大企業を中心に好調さが目立つ中で、今こそ注意が必要なのが「景気回復期に増える中小企業の資金繰り破綻」だ。深刻な人手不足やエネルギーコストの上昇に加え、ゼロゼロ融資の返済も相まって、旺盛な需要に資金調達が追いつかない中小企業の「黒字倒産」も警戒したい。①建設、運輸業などに残業時間の上限規制が適用される「2024年問題」、②民間ゼロゼロ融資の返済ピーク、③日銀によるマイナス金利政策の解除など、各種リスクイベントが重なる「4月」以降、自社の存続をかけて正念場を迎える業績不振の中小企業が増えるだろう。

 官民挙げて推し進める企業の賃上げも、「新陳代謝」の流れを促す。賃金と物価の好循環を目指した「力強い賃上げ」に、対応できない中小企業が一定数出てくるからだ。企業間の「優勝劣敗」の動きが明白になるなか、来年度以降、各種コスト増に耐えかねて「あきらめ倒産」や「あきらめ廃業」が続出するおそれは十分ある。

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