2024シーズンの日本人メジャーリーガー早見表! チーム状況から読み解く各選手の役割

日本人メジャーリーガーの黄金期が到来しました(筆者は昨年からずっと唱えています)。日々、野球の歴史を塗り替えている大谷翔平選手は言うまでもなく、投手として史上最高契約を締結した山本由伸選手、新たにメジャー入りを決めた今永昇太選手、松井裕樹選手、上沢直之選手……など。

ここ数年で多くの日本人選手がアメリカンドリームを追って渡米しています。気がつけば、日本からメジャー挑戦中の戦士が13名にものぼっていますが、今回は各選手の所属チームにおける概況、そして各選手の求められる役割を簡単にご紹介できればと思います。

エースとしての活躍が期待される千賀滉大

【デトロイト・タイガーズ】チーム状況:チーム再建中

プレーオフから遠ざかっているチームから、ベテランスターのミゲル・カブレラが引退し、積極的な補強はせず過渡期に突入。2020年ドラフト総合1位指名スペンサー・トーケルソン選手(一塁手)、昨季ブレイクのライリー・グリーン選手(外野手)やケリー・カーペンター選手(指名打者)ら若手有望選手や、マイナーで成長中の有望株が台頭をすれば面白い存在にはなり得る。

前田健太 投手 求められる役割:ベテランとしてローテを牽引

エースのタリク・スクバル選手に次ぐ2番手として、若手中心のローテ(他は全員24~28歳)を安定させる要として起用が見込まれる。

【ボストン・レッドソックス】チーム状況:チーム再建中

オフシーズンに新編成責任者を迎え入れ、タイガースと同様、過渡期に突入。しかし、例年とは裏腹に大型補強はせず、昨季不調に陥ったベテランの復活や若手有望株の活躍によるサプライズコンテンドを期待する、一種の様子見モード中。

吉田正尚 選手 求められる役割:打つ、打つ、ひたすら打つ

今季は大半の試合でDH起用が見込まれ、昨季、懸念として挙げられた守備は封印となったなかで、とにかく打撃に集中し、打線の中核を担うことが期待される。日本で魅せた高いコンタクト率、選球眼、パワーを兼ね揃えた総合力をメジャーでも通用することを証明できるか。

【サンフランシスコ・ジャイアンツ】チーム状況:再建はしていないものの、プレーオフ進出を狙うには少し戦力不足な状態

大谷選手の勧誘時に話題にもなった、本拠地サンフランシスコの治安悪化問題により大物フリーエージェント獲得が難航をしてしまっている。

それでも、主砲不在の打線に要となる韓国から輸入のジャンホー・リー選手、守備マスターながら、近年は比較的打撃不振のマット・チャップマン選手、調子の波が著しく激しいホルヘ・ソレア選手、中継ぎから先発へ転向を試みるハイリスクハイリターン案件のジョーダン・ヒックス選手など、少し変わり種の選手が加入。エースのローガン・ウェブ選手を筆頭に、シーズン前の予想から下剋上を果たせるかが見どころ。

筒香嘉智 選手 求められる役割:掘り出し物ヒッター

マイナー契約での加入となっている点、守備が芳しくない点を踏まえると、打撃成績で良い数字を残さないとメジャー昇格は難しいものの、全体的にまだまだ打撃力が弱いチームなので食い込むチャンスはあるでしょう。……と考えていた矢先に故障で離脱をしてしまったため、回復のスピードに要注視。

【ニューヨーク・メッツ】チーム状況:2025年からの本格始動に向けた繋ぎの一年

2023年シーズン前に大金を叩いて大型補強をしたものの失敗に終わり、シーズン途中にトレード放出をした選手らの年俸負担が今季ものしかかっているため、今季は積極的な補強ができず。1年かけて若手の見極めや巧みなトレードなどで戦力を整え、来季こそ悲願の世界一を目指す。

千賀滉大 投手 求められる役割:メッツのエース

残念ながら右肩の怪我でしばらく離脱が見込まれているが、復帰後は圧巻な投球でローテーションを先導することが期待される。ルーキーイヤーの昨季は、レジェンドのジャスティン・バーランダー選手およびマックス・シャーザー選手がダブルエースとして君臨していたが、今や両選手とも退団(トレード放出)。重役が千賀選手に回ってきたが、どう応えるか。

藤浪晋太郎 投手 求められる役割:リリーフとしてフル稼働、あわよくば勝ちパターン入り

昨季は後半に改善したとはいえ、通年防御率が7.18、とメジャーで通用したとは言い難い結果となってしまった。しかし、平均球速98.4マイル(158km/h)のストレートが秘める可能性を買われ、マイナー契約ではなくメジャー契約を勝ち取った。メッツの賭けに応え、比較的安価(335万ドル)な中継ぎとして活躍をし、勝ちパターンの一角を担うことが期待される。

ワールドシリーズ優勝の大本命・ドジャース

【シカゴ・カブス】チーム状況:巧みにプレーオフ進出を狙う

昨季は惜しくもプレーオフ進出を逃したが、オフシーズン最大の課題といえた主砲のコディ・ベリンジャー選手との再契約が無事に実現された。さらに先発ローテの一角を担っていたマーカス・ストローマン選手に代わり、目玉補強である今永投手で穴埋めに成功。

戦力を落とさないうえ、上振れ要因となり得る有望株のマイケル・ブッシュ選手やピート・クロー=アームストロング選手の台頭により、昨季の積み残しを回収できるか。

今永昇太 投手 求められる役割:退団したストローマン選手に代わり先発2番手

昨季開花した若きエースのジャスティン・スチール選手以外では、ピークを超えてしまっているジェイムソン・タイヨン選手とカイル・ヘンドリックス選手、フルシーズンの先発投手としては未明なハビエル・アサド選手など、若干不安定なローテーションとなっているなかで、今永投手の活躍により安定感を与えられるだけでチームの見通しがかなり良くなるでしょう。

鈴木誠也 選手 求められる役割:ベリンジャー選手と並ぶチームの主砲

昨季スタメン野手のうち、ベリンジャー選手を除き最も高いOPSを残したのは鈴木選手(.842)。前述のブッシュ選手やクロー=アームストロング選手など候補はいるものの、すでにメジャーで実績を残しているのは鈴木選手のみであるため、彼らのブレイクを待ちながら、もう一段階の開花が待たれる。

【サンディエゴ・パドレス】チーム状況:資金繰り問題による制約はあるものの、基本的には優勝狙い

オフシーズンに高年俸の主砲フアン・ソト選手をトレード放出し、代わりに若手先発候補を4選手も獲得することで、ローテーションを一瞬で立て直したものの、打線面ではソト選手が残した穴は大きい。

穴埋めとなるような大型補強はできなかったものの、フェルナンド・タティスJr.選手、マニー・マチャド選手、ザンダー・ボガーツ選手らスター選手がどれだけ結果を残せるか注目。

ダルビッシュ有 投手 求められる役割:心身ともにローテーションのリーダー

本来の投球へ返り咲きつつ、持ち味のメンターシップで新加入かつ若手中心のローテを全力で引っ張れれば、盤石な投手陣が完成されるでしょう。

松井裕樹 投手 求められる役割:不動のセットアッパー

昨季、守護神を務めたジョシュ・ヘイダーが退団し、穴を埋める形で獲得されたのが松井選手。クローザーは主に阪神の元守護神ロベルト・スアレス選手が務める見込みであるものの、ゆくゆくは松井選手にもセーブ機会が託されるでしょう。

【トロント・ブルージェイズ】チーム状況:プレーオフに向けてオールイン

一時期は大谷翔平選手の移籍先最終候補にも入ったものの、最終的には大型補強はせずにシーズン入りをしそうではあるが、すでに投手陣も野手陣もかなり盤石。2021年に大谷選手とMVPを争ったブラディミール・ゲレーロJr.選手が以後2年、不振気味となっているが、3年ぶりにその打棒を爆発させられるかが鍵。

菊池雄星 投手 求められる役割:堅実なローテ4番手

昨季は制球をかなり改善し、渡米後、初めて防御率3点台(3.86)を残し、頼れる先発要因として信頼を勝ち取ることに成功。ローテ5番手が不振にあえいだ元エースのアレック・マノア選手を筆頭とし、未知数な選手が多いなかで、4番手までは計算できる盤石な先発体制を組めることに大きい意義があるでしょう。

【タンパベイ・レイズ】チーム状況:プレーオフに向けてオールイン

例年通り多くの資金を使用せず、若手の育成や巧みなトレードによる掘り出し物の獲得により立ち回りを試みるなか、今季もエースのタイラー・グラスノー選手をドジャーズへ放出する大胆なトレードも遂行。レイズのことなので、対価で獲得したライアン・ペピオ選手がサイ・ヤング賞級の投手に覚醒することでしょう。

上沢直之 投手 求められる役割:掘り出し物の先発5番手

マイナー契約での獲得となった以上、レイズ的には戦力の基盤では計算に入れておらず、あくまでも実れば吉のノーリスク・ハイリターン案件として見ているといえるでしょう。しかし、これは上沢選手を評価していないのではなく、大きいリスクを取れないレイズのやり方にすぎず、毎年多くのマイナー契約選手がメジャー登用をされている。上沢選手もレイズの育成力、指導力に着目しマイナー契約でも入団を決意している以上、存分に吸収をしてメジャー戦力に食い込んでWin-Winを実現したい。

【ロサンゼルス・ドジャーズ】チーム状況:ワールドシリーズ優勝以外は許されない究極のオールイン

大谷選手の歴史的な大型後払い契約により、今後10年のために、その先10年を犠牲にした捨て身の技がどう転ぶか。大谷選手に加え、契約の後払い加工により生まれた余剰資金で獲得をした山本由伸投手、タイラー・グラスノー選手、テオスカー・ヘルナンデス選手ら、豪華新加入組が大きな期待に応えられるかに全世界が注目。

山本由伸 投手 求められる役割:大谷選手不在中のエース

投手による史上最高額の契約を与えられた以上、エース級の活躍は至極当然とされるでしょう。実績ベースでは生きる伝説であり長年エースを務めているクレイトン・カーショー選手や、前述のグラスノー選手が相応しいかもしれないが、役割期待上では、2~3番手級にはとどまってはならない。

大谷翔平 選手 求められる役割:打線の中核を担う大砲、およびスター性を駆使したチーム、そして野球全体の盛り上げ役

今季は投手としては全休見込みも、打者としてはホームラン40本、OPS 1.000以上が既定路線であり、それを疑う者はほぼいないでしょう。それに加え、大谷選手中心のチームを形成し前代未聞の注目を集めるドジャーズにとっては、戦力面でも集客面でも圧倒的な存在になれる絶好な機会を手にしている。それが実現されるか否かも、大谷選手に大きくかかっていると言えるでしょう。

▲2024シーズンは打者としてチームを牽引する大谷翔平選手 写真:AP/アフロ

日本が誇るスーパースターの2人を獲得したドジャースは、間違いなく注目の的となるでしょう。そのほか、新しく海を渡った選手、さらなる活躍が期待される選手など、今シーズンも日本人メジャーリーガーたちの動向から目が離せません。

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