沖縄の「動かない観光バス」、”乗客”30人を笑いの渦に巻き込んだスーパーガイドの話術とは?

 沖縄県宜野湾市の普天間1区自治会(新垣隆会長)によるお年寄り向けのミニデイで2月27日、スーパーバスガイドとして知られる「てぃーだ観光」の崎原真弓さん(60)主催の特別ツアー「動かない観光バス」があった。公民館のホールをバスに見立て、崎原さんのガイドで那覇からやんばるまで巡る企画。歌と踊り、笑いと涙を織り交ぜたうちなーぐち満載の演出に約30人が拍手を送った。(中部報道部・平島夏実)

 崎原さんは「動かないバスですからね。皆さん、ご自分で左右に揺れて、ゆったいくゎったいしみそーれー(ゆらゆらしてください)」とアナウンス。「今日の旅が目薬(みーぐすい)、耳薬(みみぐすい)、命薬(ぬちぐすい)ないるぐとぅ、みーまんとーてぃ うたびみしぇーびり(見守っていてください)」と安全祈願をしてから「発車」した。

 ツアーは国道58号(旧軍道1号)を北上するルートで進行。「1号線が今や58号線。ひるましむん(不思議だ)。おばぁも年を取るけど道も年を取るんだねぇ」と冗談を飛ばした乗客の逸話で、拍手を浴びた。

 「車窓」から沖縄都市モノレールが見えると、戦前まで走っていた軽便鉄道を重ねた。音楽グループ「フォー・シスターズ」の「軽便鉄道節」を歌ってタイムスリップし、「あふぃー♪ あふぁー♪」と汽笛の音をまねた。

 浦添市勢理客(じっちゃく)を通過した際には、名字の多くが大和読みに改められた一方、地名にはうちなー読みが多く残されていると説明。地区ごとの競技大会で、「1番は勢理客(10着)でございました」との結果発表が混乱を招いたと紹介し、会場を笑わせた。

 大阪へ出稼ぎに行くわが子を見送る民謡「涙の那覇港」を寸劇風に歌い、涙を誘う場面も。「沖縄はその土地その土地に歌と踊りがありますね」と語りかけ、伝承してきた先祖への感謝をにじませた。

 崎原さんは2001年9月11日の米国同時多発テロで沖縄観光が落ち込んだ際、県内の公民館を回ってお年寄りにトークと歌を届けた。自身が還暦を迎えられたのは苦しい時期に支えてもらったおかげだとの思いで、ことしから各公民館で「動かない観光バスツアー」を本格化させている。

会場を盛り上げる崎原真弓さん=2月27日、宜野湾市・普天間1区公民館
拍手を送る参加者

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