座っていいのか迷う、キャラクターベンチのあれこれ【さんぽの壺】

街歩きに疲れた時、ベンチがあると有難く感じるものである。しかし、そのベンチに先客がいた場合は、座るのに少し躊躇(ちゅうちょ)するのではないだろうか。

そんな「先客がいるベンチ」が、意図的に設置されているところがある。何らかのキャラクターがいるベンチだ。なぜそこにキャラクターがいるのか、各所のキャラクターベンチを観察してみよう。

おなじみのカーネル・サンダース

マクドナルドでは、ドナルドが座っているベンチが設置されている店舗がある。

実際にこのような人がいたら絶対に隣に座りたくないが、ドナルドなら許される不思議(神戸・元町)。

実際にこんな横柄な格好で座っている人がいたら隣に座りたくなくなるものだが、このドナルドベンチの場合、2人で両脇に座れば、まるでドナルドが肩を組んでくれているような写真を撮ることができてとても楽しい。

ケンタッキーに行くと、おなじみのカーネル・サンダースが座っているベンチがあった。

おじいちゃんが「よっこいしょ」と座っているイメージ(大崎)。

KFC公式サイトによれば、子供ともっと触れ合えるようにと2018年に新しく作られたそうで、今では全国16店舗に展開されているとのことだ。そもそもカーネルがおじいちゃんということもあり、こちらは記念写真を撮るというより「今まで立ちっぱなしで疲れたよね、座れて良かったね」という安堵感でいっぱいになる。

ねずみ男ベンチは座れない? ドラえもんと仲良く撮影

他にもこうしたキャラクターベンチは、キャラクターゆかりの公園や

調布駅近くにできた「鬼太郎ひろば」の呼子ベンチ。ひろば内には「ゲゲゲの鬼太郎」のキャラクターがあちらこちらにいる。
「これじゃ座れないじゃん!」と思うが、安心してほしい。調布駅近くにあるねずみ男のオブジェである。

オフィシャルショップ前、

お台場にあるドラえもんオフィシャルショップ近くに設置されている。ドラえもんと仲良く撮影できる。
実際にこんな場面に出くわしたとしたら、気まずくてとても隣には座れない(お台場)。

ミュージアムなど、いかにも皆が記念写真を撮りそうなところに設置されている。

広島県三次市にある『三次もののけミュージアム』前に設置されている、アマビコベンチ。両脇をアマビコに囲まれる。

中にはなぜここにキャラクターが、というベンチもあるが、それでも横に並んで座っている分には特に支障はない。

なぜここにトイプードルがいるのかは不明だが、殺伐とした喫煙場所がかわいらしい雰囲気に(仙川)。

カッパが何をしたというのか

ところがキャラクターベンチの中には、不穏な気持ちにさせられるものがあるのだ。まず、キャラクター自体がベンチになっている場合。

以前、動物オブジェのコラムでも紹介した稲城のダックスフント。確かにベンチに適した体形ではあるが……。

背中に乗ってしまっていいのかしら、重くて申し訳ない、という気持ちになる。

さらに申し訳なさが増すのが、「座面を両脇から動物が支えているベンチ」である。酒田の幼稚園に設置されていたベンチのように、「支えている感」が薄い場合はまだ良い。

山形県酒田市の幼稚園外に設置されたかわいらしいベンチ。これは「キャラがベンチを支えている」感は薄い。

寺社などに設置されている、恐らく石材店が制作したと思われる石製の動物ベンチは、明らかに重そうな石板を動物が支えている。

池上で見たパンダベンチ。パンダの表情がいい。
こちらはブタ。石板を軽々持っているようにも見えるので、罪悪感は薄めか(馬込沢)。
御岳山(東京)に行くと、多くの石像キャラベンチを発見できる。こちらは胸板で石板を支えるフクロウ。
御岳山の犬ベンチ。だんだん辛そうな体勢になっている。

その中でも御岳山で見つけたカッパのベンチは、正座をしているカッパたちの膝の上に石板が置かれている。

石像ベンチの中で一番辛そうな、カッパベンチ。カッパのとぼけた表情がまた悲しみを誘う。

これは江戸時代の拷問、石抱(いしだき)の刑ではないのか。カッパが何をしたというのか。いかに山道を歩いて疲れていたとしても、ここに座る勇気は私にはない。

今後も街でキャラクターベンチを見かける機会は多そうだが、恐らく私は腰かける前に、「ここに座ってよろしいですか」と心の中で問いかけてしまうような気がする。

イラスト・文・写真=オギリマサホ

オギリマサホ
イラストレータ―
1976年東京生まれ。シュールな人物画を中心に雑誌や書籍で活動する。趣味は特に目的を定めない街歩き。著書『斜め下からカープ論』(文春文庫)。

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