深刻化する食料品アクセス問題

実家の父が今春で運転免許を返納する。優良ドライバーを自認し、定年退職後は悠々自適に過ごしてきたが、75歳を迎えて身体機能の衰えを感じ、卒業を決めたようだ。

▼ハンドルを握ってゴルフや温泉に行けなくなるのは残念だが、一番困るのは買い物という。何でも揃う郊外のショッピングセンターは遠くなり、普段の買い物は古くからの地元スーパー頼み。コンビニ、ドラッグは増えたが、生鮮品を売る店は見当たらず、路線バスも日中の本数がめっきり減った。地元スーパーが閉店したら生活に支障が出るという。

▼近隣店舗まで500m以上かかり、65歳以上で自動車免許を持たない「食料品アクセス困難人口」は2020年時点で、全国で推計904万人。65歳以上の25%超、75歳以上の3割超に達する。買い物に不便や苦労を感じる高齢者の増加は、過疎地域だけでなく都市部でも課題。

▼小売店も移動スーパーや配送サービスを充実させるが、人手不足とコストの問題がつきまとう。食料品アクセスの確保は、自治体や公共交通機関と連携した取り組みが求められている。

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