peanut butters「新しいボーカルとの出会いで大きく変わっていきそう」

コンポーザーのニシハラによるソロプロジェクト「peanut butters」。2017年に楽曲制作を開始し、現在までにアルバム2枚をリリース。『ツナマヨネーズ』や『she so come!!!』など、海外メディアのプレイリストにも取り上げられるなど、国内にとどまらずグローバルな人気を誇っている。

2023年末に発表し、高い評価を受けた『peanut butters Ⅱ』でサポートボーカル穂ノ佳の参加が一区切りになり、新たにサポートボーカルの新規募集を行うなど、2024年も勢いが止まらないpeanut buttersのニシハラに、楽曲へ込めた思いやこれからの展開についてインタビューした。

▲peanut butters【WANI BOOKS-“NewsCrunch”-Interview】

ネガティブなことのほうが歌詞に当てはめやすい

――大阪・愛知・東京を巡る初のワンマンツアーの手応えはいかがでしたか?

ニシハラ 人が来てくれてよかった、というのが率直な感想です。今までは対バンのみしかやってこなかったので、ワンマンに観客が集まるのか不安だったんです。東京の会場では、メタバース空間も用意して、予算もかけていましたし(笑)。当日、幕が開くと、たくさんの人が駆けつけてくれていてホッとしました。

また、サポートボーカルとしては一区切りになる穂ノ佳さんを、これまでで一番大きな舞台で送り出せたのは良かったです。お客さんを盛り上げるのはもちろんですが、メンバー全員で楽しむことも目的としていて、すべて達成できたツアーになったと思います。

――昨年11月15日に発売したセカンドアルバム『peanut butters II』は、2年間の集大成だと聞きました。ファーストアルバムと比べて、どのような違いを意識しましたか?

ニシハラ ファーストアルバムは、現在所属している「UK.PROJECT」でデビューする前に作り始めました。なので、当時もっていた曲のストックをもとに、流れなどを意識して作ったんです。一方でセカンドアルバムは、穂ノ佳さんがサポートボーカルになってからの作品を詰め込んだイメージです。アルバムを作るためというより、活動のなかで積み上げていった曲をまとめた形なので、集大成としています。

――ファーストアルバムの『メロンD』と、セカンドアルバムの『スイカP』は、何か関連性があるのでしょうか? メロンとスイカ、という安直な発想になってしまって申し訳ないのですが…(笑)。

ニシハラ いえいえ(笑)。『メロンD』と『スイカP』の共通点で言うと、コード進行が同じところがあるところですね。穂ノ佳さんの持ち味を全部出す作品を作っていくなかで、ファーストアルバムと対になる曲も出したいと思ったんです。『メロンD』と曲の展開・タイトルを寄せて、つながりを意識して作ったのが『スイカP』になります。

――曲調がポップなのに、歌詞がネガティブなところに好感を抱くファンも多いですよね。ただ、ニシハラさん自身は、歌詞を書くのはあまり好きではないと聞きました。

ニシハラ 歌詞を書くのが好きではないというよりも、曲作りのなかでの優先度が低いと言ったほうが正しいかもしれません。初めて音楽にのめり込んだのが、歌詞の意味を理解できない洋楽だったのが大きな理由です。

普段は、曲に発音の響きがいいものを当てはめるイメージで歌詞を書いています。ただ、ある程度は意味が通じるようにだけは意識して作っているんですよね。あまりに適当すぎると、曲として覚えられなくなるので(笑)。

――(笑)。

ニシハラ 歌詞がネガティブになっているのは、僕自身がマイナスな感情で書いているからです。たとえば「眠る」「眠りたい」って言葉が多いことに、朝が苦手な僕の気持ちが表れています。ネガティブなことのほうが、歌詞として当てはめやすいのはあるかもしれません(笑)。

音楽に興味を持ったきっかけはレッチリ

――ニシハラさんは、どのようなきっかけで楽曲制作を始めたのでしょうか?

ニシハラ そもそも音楽に興味をもったきっかけは、子どもの頃に聴いたRed Hot Chili Peppers(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)ですね。ギターのフレーズがかっこよくて、自分も楽器を弾けるようになりたいと思いました。

作曲を始めたのは、スマートフォンのアプリで曲が作れることを知ってからです。現代の技術のおかげで、曲作りをするハードルが低かったのは運が良かったかもしれません。

ただ、世の中に発表をするクオリティに仕上げるのは、簡単なことではなかったですね。本格的に曲を作るためスマートフォンからパソコンへ移行したのですが、操作が複雑でなかなか覚えられないんです。

曲作りもうまくいかず、何度も挫折をしたのが本当のところです。それでもなんとか続けていたら、ある日、急にコツをつかんだような感覚を覚えたんですよ。そして、気づけばコンポーザーとして活動できるようになっていました。

――楽曲も素晴らしいのですが、毎回テイストの異なるMVも魅力だと思います。ニシハラさんは、どこまでMV制作に関わっているのでしょうか?

ニシハラ 作品によって、僕の考えを反映させているものと、クリエイターの世界観に任せているものがあります。今回のアルバムでいえば『ジャスコ、上野』と『スイカP』は、僕がイチから構想を練って作りました。

『Girl Is a Hard Rocker』でも、ハードロックな格好をしたおじさんたちが、激しく音をかき鳴らすアイデアが浮かんでいたんです。クリエイターにイメージを共有したところ、想像を超えた作品に仕上げてくれましたね。

〇peanut butters - 「Girl Is a Hard Rocker」 Music Video

アイコンみたいな人を探してます

――個人的には、デジタルEPとして発売した『E-Peanut』のCDジャケットもかっこいいなと思っています。

▲「E-Peanut」ジャケット

ニシハラ あ、この写真、僕がスマートフォンで撮影したやつですね。

――ニシハラさんが写真を撮られたのですか?

ニシハラ 時間がないなかで、焦って撮影したんですよ。それでも、たまたま良い構図になったのでジャケット写真に採用しました。

――最近、心を揺さぶられるようなことはありましたか?

ニシハラ 先ほども話に出たRed Hot Chili Peppersの来日公演に行けたのは、最近でも特に心が震えましたね。レッチリは、僕が子どもの頃にも日本へ来てくれていたのですが、どうしてもタイミングが合わず行けませんでした。でも今回は、東京・大阪の2公演どちらにも参加できたんです。S席を取った大阪では、憧れだった存在を間近で見れて本当に良かったと思いました。

もうひとつは、スピッツさんのレギュラーイベント「豊洲サンセット 2023」に参加アーティストとして呼んでいただいたことですね。草野マサムネさんが、以前からpeanut buttersの楽曲を評価してくださっていたようで……。それでも、最初に出演オファーを受けたときは「スピッツって、本当にあのスピッツ?」となっていました(笑)。

イベント当日、peanut buttersとしてステージに立ったときに、“ようやく本当なんだ”という実感が湧きましたね。とても刺激的な体験でした。

――昨年は、アイドルやバーチャルシンガーなどへの楽曲提供も活発だったと思います。peanut buttersとして作る曲とは、何か違いがありますか?

ニシハラ peanut buttersとして作る曲は、自分で選んだ穂ノ佳さんに歌ってもらう想定なので、すぐにピタッとハマるんです。でも、やはり楽曲提供となると、もっと繊細なイメージを持ちながら作る必要がありますね。ただ、自分にオファーをもらったからには、楽曲にこだわりを持ちながらやっていきたいと思っています。今後も、楽曲提供の仕事は積極的に受けていきたいです。

――穂ノ佳さんが一区切りとなり、新しくサポートボーカルの募集を始めていますよね。今回も女性ボーカルを応募要件にしていますが、どのような人が来ることを期待していますか?

ニシハラ peanut buttersといえばボーカルが連想されるような、アイコンみたいな人に来てほしいと思っています。この1年、多くのライブに出演して、お客さんは女性ボーカルに注目していると強く感じたんですよ。

バンドとしては、サポートボーカルの方がこれまで培ってくれたイメージを、今後も継承していくつもりです。ただ、コンポーザーとしての楽曲提供に関しては、男性でも積極的に受けていきたいですね。

――これまでのサポートボーカルは、ウィスパーボイスが得意なイメージの方だったと思います。声の質に関しては、似たような人を探すのでしょうか?

ニシハラ いえ、聞いてみないとわからないと思っています。自分でも、どのような声が琴線に触れるかわからないんですよね。今後のことは楽しみではありますが、次のサポートボーカルに出会えなければ、解散するかもしれない(笑)。

ただ、新しいボーカルに歌ってもらうための曲は、たくさんストックしています。peanut buttersがどのように展開していくかは、新しいボーカルとの出会いで大きく変わっていきそうです。

(取材:川上 良樹)


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