『フリースタイル日本統一』#20ーー白星なしの呂布カルマ、スタンスの違いに「意味分からない」

2023年10月より放送中の『フリースタイル日本統一』(テレビ朝日/ABEMA)。同番組では、全国16地区で活躍するラッパーが3名1組となって、それぞれの地元の威信を賭けてフリースタイルバトルに挑戦。勝利チームは敗退チームから好きなラッパー1名を吸収し、最終的に日本統一を果たすと、その暁として賞金100万円が贈られる。

以下より、3月5日に公開された【#20】のハイライトを振り返っていく。細かなネタバレもあるためご注意いただきたい。

・呂布カルマ v.s. CIMA、平行線を辿ったバトル「別に好きにやったらええじゃない?」

前回の【#19】に引き続き、TEAM東海(呂布カルマ×泰斗a.k.a.裂固×楓×KANDAI×歩歩)とTEAM兵庫(CIMA×P-PONG×Sirogaras×FEIDA-WAN×だーひー)が、準決勝(五十万石の戦い)で対戦中。KANDAIが連勝すれば、CIMAがひっくり返す。残り1名で背水の陣だったTEAM兵庫が形勢逆転を見せ、TEAM東海のフルメンバーを削りに削り、いまや土壇場まで追い詰めるまでに。TEAM東海も、残すところは呂布カルマと泰斗a.k.a.裂固のみ。状況はほぼ、互角といえる。

CIMA、5人抜きまであとふたり。最初の相手は、体力満タンの呂布カルマ。先攻は呂布カルマで、ビートは阿修羅MIC「The Men」だ。

呂布カルマ:テレビにめちゃくちゃ呼ばれてタレント扱いされても 俺 テレビでダッサイラップなんかやってない/ここにまた戻ってきて 本物ラップを聴かせる為にやってきた お前となら出来そうだ

CIMA:別に好きにやったらええじゃない? それがHIP HOP Life アンタがどんだけメディアに映ろうが アンダーグラウンドには届かない

呂布カルマ:そらそうや 寝ぼけB-Boy いつも昼まで寝てるから 俺の事なんて見えないから 世間から置いていかれて いつまでも暗い所でウジウジやってんのがB-Boyか?

CIMA:だから好きにやったらええやん 何もお前のスタイル ディスってへんやん だから気になってるのは数字 追っかけてる How many【コンプラ】

呂布カルマ:俺は数字なんかどうでもいいけど 持って帰りたい 今日の1000万 そんなんじゃ全然足んない KANDAIにたくさんあげたいから お前なんかぶっ側して帰りたい

CIMA:いつまでも暗い所にいときなさい ならば俺 KANDAIとアンダーグラウンドに居たい

若手ながらあれだけの健闘ぶりを見せただけあり、両チームからモテモテのKANDAI。モテラッパーランキングをいま作れば、間違いなく上位に……というのは冗談で、両者のスタンスがぶつかったこのバトル。

メインの話題は、いわゆる“テレビ”でマスな存在としてセルアウトするかだが、これを持ちかけたのは呂布カルマの方。もしかすると、“アングラ”を大切にし、レプリゼントする意識が強いCIMAだからこそ、この釣り針に引っかかると思ったのだろうか。とはいえ、繰り出されたアンサーは〈別に好きにやったらええじゃない?〉。自分の領域とは無縁だと、垂らされた針に見向きもしない。

それに対する呂布カルマの返しも秀逸。〈そらそうや 寝ぼけB-Boy いつも昼まで寝てるから〉と、“アングラ”=世間の流れに後退するものだと、イラつきを誘う気の利いた言い回しでチクリと刺す。だが、CIMAもブレることなく“興味なし”の姿勢を貫いたまま、件のKANDAIの取り合いとなった。〈How many【コンプラ】〉のあたり、CIMAのフロウが心地よさも含めてかなりの加点ポイントだったと思われるため、ぜひ見逃し配信で確認してみてほしい。

平行線が続いたバトルの結果は、2-3でCIMAの勝利に。この番組でまだ白星なしの呂布カルマにとって、スタンスの違いを感じたのはCIMAだけでなく、審査員にも同様らしい。講評に対して「言ってること全然意味わからなかったっス」と首をかしげながら、ステージを去っていった。

・裂固、呂布カルマに託された“大将”のプライド「岐阜から東京 ぶっちぎる東海道」

両チームとも、残すところはあとひとり。KANDAIが4人抜きをすれば、CIMAも同じことをしてみせる。TEAM東海が序盤、あまりに優勢に見えすぎて“このまま勝ち進むのでは?”と思っていた頃を振り返れば、恥ずかしくなるくらいだ。

TEAM東海の大将は、裂固。先攻は裂固で、ビートはDJ RYOW「WHO ARE U ? feat. TOKONA-X」。決勝戦への切符をもぎ取るのは、裂固か、それともCIMAか。

裂固:さっき言ってたな「勝つのはそう遠くねぇ」 荒唐無稽なラップじゃ 絶対に得れない高得点 煩悩だらけなら相当くだらねぇ CIMAさんの首切る 妖刀村雨

CIMA:またコイツも数字追ってんかい 最高到達点 最高の兄弟たちで 俺は雲の上まで飛ばす HIIKIGANEにもリスペクトは忘れねぇ

裂固:俺は口喧嘩代表 アンタの舌切る閣魔大王/時代を切り裂く革命児 金髪MC アンタの首切って一援千金

CIMA:いやいやどっちなん? 首切るん? 舌切るん? お前の方が二枚舌やんけ

裂固:どっちだろうが二枚舌 じゃなく俺も二刀流 武蔵 宮本 取り戻す無駄にしたもの/俺はなってやる西日本代表 岐阜から東京 ぶっちぎる東海道

CIMA:東京代表大将 俺たちはリスペクトありきで対等/お前は顔に追われてる数年後 AIに負けちまう 愛がないぜこのカルチャーに

結果は……3-2で裂固が勝利。裂固自身もジェスチャーでツッコミを入れていたが、〈東京代表大将〉など、CIMAが裂固の直前のライムに引っ張られ、このバトルとまったく関係のないラインを残してしまった場面がちらほら。裂固もこの日、相当数のバトルを重ねてきてはいるが、CIMAの体力切れもかなり見えかけていたあたり、敗因のひとつとなったのだろうか(とはいえCIMAはこの後、TEAM東海に吸収され、決勝戦でもバトルをすることになるわけだが)。いずれにせよ、チームごとの人数がここまで膨らむと、全員抜きのレベルも格段に上がるのは間違いない。

また、あの呂布カルマから大将のポジションを託される形となった裂固。しっかりと仕事をこなしたあたり、呂布カルマの見たても間違いなかったのだろう。両者とも、この日の調子の良し悪しもあるが、かつて前身番組『フリースタイルダンジョン』での共演時に育まれた信頼関係……少し大袈裟にはなるかもしれないが、親から子への世代交代を予感させるような瞬間だった。困ったとき、ここぞというときに、頼りになるのは裂固。そんな共通認識が、TEAM東海、ひいては番組視聴者にも浸透したのではないだろうか。

それにしても、ここまで白星なしにも関わらず、しっかりと決勝戦に駒を進めている呂布カルマ、さすがである。ということで次週より、TEAM神奈川 v.s. TEAM東海の決勝戦が開幕。番組タイトルの通り、日本統一を果たすのはどちらか。その行方を、しっかりと見届けてもらいたい。

(一条皓太)

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