アングル:2年金利が13年ぶり0.2%台、日銀利上げシナリオに現実味

Tomo Uetake

[東京 8日 ロイター] - 日本国債市場で短中期ゾーンの金利上昇が顕著となっている。新発2年国債利回りは8日、2011年4月以来初めて、節目の0.2%に上昇した。背景には日銀の政策正常化観測と政策金利の先高観の強まりがある。

イールドカーブの手前部分にある2年金利は、政策金利との連動性が高い。1月半ばのマイナス0.005%を起点とし、過去8週にわたって一本調子の上昇基調をたどり、13年ぶり高水準の0.200%をつけた。同じ期間の上昇幅が限られた長期・超長期の金利とは対照的だ。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは「もはや近い将来のマイナス金利の終了は確定的として織り込み済みで、足もとの市場の関心はその先の追加利上げの有無にシフトしている」と指摘する。

当初、市場では日銀がマイナス金利を解除する際は、現在の当座預金金利の三層構造(基礎残高、マクロ加算残高、政策金利残高)のうちマイナス金利が付利される政策金利残高を終了し、ゼロ金利と0.1%金利の二層構造となると見る向きが多かった。

しかし内田真一日銀副総裁が2月の講演で「仮に」と前置き、マイナス金利導入前の状態に戻すシナリオを披露したことをきっかけに、当座預金の付利は二層ではなく0.1%に一本化されるとの観測が急速に広がった。このため債券市場では、0.1%が事実上の金利の底として意識されるようになった。

りそなホールディングス市場企画部の石田武ストラテジストは「この先、4月からの政策金利が0.1%、その次の1年間が0.25%だとすれば、2年物金利の理論値は0.175%になる。今それを上回ってきたということは、それより早い時期の利上げがあるといった織り込み方になってきたということ」だと説明する。

<フェアバリューか、通過点か>

市場では、現在の2年債利回りはマイナス金利解除後の追加利上げ1回をほぼ織り込んでいるため、フェアバリューに到達したとの見方も出ている。一方で、上昇の通過点との見る向きもある。

BNPパリバ証券の井川雄亮マーケットストラテジストは「これから利上げするにも関わらず(2年金利の)上昇スピードはゆっくりで、遅ればせながら0.2%をつけたという感想だ。まだ上昇する余地はあると考えている」と話す。

一方、りそなの石田氏は「現時点で出ている情報を基に想定される利上げペースとしてはこのあたりがフェアな水準だろう」との見方だが、「来週以降、春闘の強い結果など新しい材料が出てくれば、2年以内の追加利上げの可能性が高まって一段の上昇可能性はある」とも付け加えた。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「2年債の主な投資家は外国人と銀行勢だが、今後プラス金利が復活すれば、一時期マイナスの利回りを理由に2年債から離れていた地銀勢も戻ってくるだろう」という。

BNPパリバの井川氏は「投資家の間では長らく、短期金利は上がらないとの前提で投資戦略が考えられてきたが、今後は上昇する前提で戦略を考える必要がある。日銀の動きを予想するだけでなく、海外市場からの影響なども考えるという、より複雑な分析が要求されるだろう」との見方を示した。

(植竹知子 編集:平田紀之)

© ロイター