12人で100キャラクターを演じるノンストップ100分間のミュージカル「カム フロム アウェイ」開幕

ミュージカル「カム フロム アウェイ」が、日生劇場にて2024年3月7日(木)~3月29日(金)の期間、公演されています。

9.11時の実話をもとにしたミュージカル

日生劇場60周年イヤーの締めくくりを飾るブロードウェイミュージカル。東京を皮切りに、大阪・愛知・福岡・熊本・群馬の6都市で5月までツアー公演を行います。

舞台は2001年9月11日。アメリカ同時多発テロ事件を受け、アメリカ連邦航空局は領空を飛行禁止にし、飛行中の飛行機は最寄りの空港へ着陸するよう命令しました。

カナダ北東部のニューファンドランドの小さな町ガンダーに、38機もの飛行機が到着。町の人口に匹敵するほどの世界中から突然現れた人々「カムフロムアウェイズ」を受け入れることを余儀なくされた町で起きた5日間の実話をもとに描きます。

12人の出演者のみで100人近くの役を演じる

ミュージカル最大の特徴は、12人の出演者のみで100人近くの役を演じること。休憩なしの約100分間の舞台で、開演から演じる役が次々と変わっていく濃密な展開が行われていきます。

ケルト民謡やイギリスの音色が色濃く出る10曲以上の印象的なナンバーを奏でるのは8人のバックバンド。オーケストラピットを使わず、舞台上に位置し、キャストの演技を強力にバックアップ。そして、製作発表時にキャストの一人である橋本さとしさんからの「星空の様なバミリの数に眩暈がした」のコメント通り、14脚の椅子はその膨大な設置位置をキャスト自らが覚えて移動させ、時に足場として、また時には座席として、演者のパフォーマンスを支えるセットとして機能しています。

5日間の奇跡の物語

1日目、9月11日

ガンダーの街の人々の日常がキャストの巧みな歌唱と演技、テンポ感溢れる進行で描かれます。天気の良い何時もの一日。しかし、アメリカで未曽有の大惨事が起きたことをラジオが伝え、街の人たちは運命の日9.11に直面し、それぞれの物語が始まります。

テロ勃発によりアメリカ国内へ向かっていた各国の旅客機が国外空港へのルート変更を強いられる中、行先の一つに指定されたのがガンダー国際空港。長距離飛行が実用化される以前の時代に北米のハブ空港として、また軍事拠点として利用されていた歴史を持つこの空港は、街一つに達する程の巨大空港であることから、大型旅客機を受け入れるキャパシティーが見込まれました。ガンダーへの臨時着陸は緊急事態を表すという航空業界の裏常識を知る各機の乗務員は、機内に待機させられ、現在のようにスマートフォン等で手軽に情報が得られない状況下で不安にかられたり、怒り出す乗客たちをなだめます。

1日6便程度の離発着しかない辺境の空港に押し寄せた旅客機の数は実に38機、機内には約7,000人の乗客が。そしてガンダーの人々は突然現れた約7,000人の“カムフロムアウェイズ(遠くから来た人々)”のために町中大わらわになりながらも動き始めます。機内の様子はキャスト自らが椅子を動かし機内座席の様に整然と並べ、出身国籍も仕事も異なる乗客とそれに対応する乗務員を演じ、そして一転してガンダーの人々によるカムフロムアウェイズへの対処のシーンをスピーディーに描いています。

乗客・乗員はガンダーにある学校や公共施設に移されることに。赤ちゃんから80歳の老人、猫や犬、動物園に向かうチンパンジーの姿までと様々。見知らぬ異国でどこに連れていかれるのか不安と恐怖の表情のカムフロムアウェイズ。様々な国の人々が集まっているという状況で、国籍や分化の違い、宗教信仰上の偏見、そして言葉の壁がガンダーの人達の親切心の前に緊張感として立ちはだかります。

その夜、カムフロムアウェイズは宿泊先のTVでテロの全容を知ることに。ガンダーの街の人々はカナダの中でも訛りが強いということで、キャストの一人である森公美子さんが稽古場公開で話していた通り、日本の方言やイントネーションを取り入れた会話シーンも。

2日目、9月12日

街の人々は彼らに服や食べ物、故郷の者と連絡を取れるように電話を提供し、インターネットも繋いで、街を挙げて乗員乗客の7,000人余りが快く過ごせる様にと限りを尽くします。宿泊場所から街にも出向くようになった訪問者たちを、ガンダーの街の人たちは暖かく迎え、自宅に招待して食事を共にしたり、車を貸してあげる人々まで。様々な障壁を徐々に取り払い、次第にお互い友情を育んでいく変化の様子は見事なもの。

3日目、9月13日

テロ発生時刻に黙祷をささげる街の人々とカムフロムアウェイズ。山積みの問題の前に丸三日間寝ていない者がいたり、TVで流れるテロ攻撃の映像から受けるショックも合わせて、徐々に疲弊に苛まれる人々。さらに悪いことにハリケーン「エリー」のガンダー上陸が予報される中、町長のクロードは懇親のため、皆を街のコミュニティセンターに集めます。そこで行われているのは極めて特異なニューファンドランド島民になる為の歓迎儀式「Screech In」。バンドの面々も前面へ出て文字通りのお祭り騒ぎに。

4日目、9月14日

ついに民間機への空域制限が解除され、ガンダー国際空港の各機にも随時離陸許可が出される中、この出会いの日々に終わりを感じ始める乗員・乗客とガンダーの街の人々。せめてものお礼にと、お金を渡そうとするカムフロムアウェイズ。しかし受け取れないとお金を断る街の人々が彼らにかけた言葉は皆「あんただって同じことしただろ?」。そして…。

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