落とし物の現金が県の収入に 過去最高額を記録 根強い現金主義 拾った人がお礼断る理由とは?

神戸新聞NEXT

 兵庫県警が取り扱った現金の落とし物で、落とし主が見つからず、拾得者が受け取りを断るなどして県の「収入」となった2023年の額が1億4311万円に上り、統計の残る1978年以降で過去最高を記録した。電子マネーなどが普及する一方、依然として現金を持ち歩く人が多い上、「お礼」のやりとりのため個人情報を伝えることへの抵抗感も背景にあるという。

 県警会計課によると、落とし主が3カ月たっても見つからず、拾得者にも引き渡されなかった現金は県の一般財源に入る。県内では80~90年代は2千万~4千万円台だったが、2018年以降は1億円超で推移している。

 現金拾得の届け出額は、バブル期に9億円台に達し、その後減少したが、10年代から再び増加傾向。15年以降は毎年8億円を超えており、カードや電子マネーによる決済が浸透しつつある一方で、財布を手放す人が少ない実情がうかがえる。

 ただ、財布の中身は変化しているようで、同課の担当者は「ポイントカードなどがスマホに集約され、中身から落とし主を特定できる情報が少なくなっている」と説明。警察から落とし主に連絡できるケースが減っており、県に入る額が増える一因になっている可能性があるという。

 さらに、プライバシーに対する意識の高まりもあるようだ。現金を拾って届け出た場合、落とし主が見つかれば、遺失物法に定めるお礼の「報労金」を当事者間でやりとりする。そのため、名前や電話番号などの個人情報が落とし主に伝わることになる。

 同課によると、現金を拾って交番などに届けた段階で、連絡先が伝わるのを嫌って受け取る権利を放棄したり、手続きそのものを煩わしがったりする人が増えているという。実際、落とし主が見つからずに拾得者へ渡った額は近年、届け出額の十数%程度で、30%台だった1980年代初めと比べ大きく減っている。

 2023年の遺失の届け出額は17億9300万円で、拾得は9億9764万円。新型コロナウイルス禍前の水準に戻りつつあり、担当者は「落とし物の管理には保管場所と人の手間がかかる。現金など大切な物は肌身離さず持ち歩くようくれぐれも気を付けて」と呼びかける。(小川 晶)

© 株式会社神戸新聞社