J1初勝利目指す東京Vの城福浩監督、試合クローズの改善求めるも信念曲げず「時間をうまく使わないといけないが、“時間稼ぎ”は選択肢にない」

C大阪戦での初勝利期す城福浩監督[写真:©超ワールドサッカー]

東京ヴェルディを率いる城福浩監督が、3戦目での初勝利を目指すセレッソ大阪戦への展望を語った。

16年ぶりJ1復帰となった東京Vは、開幕節の横浜F・マリノス戦(1-2●)、第2節の浦和レッズ戦(1-1△)と2試合共に善戦と言えるパフォーマンスを見せたが、いずれも終盤の失点によって初勝利を逃した。

そして、3度目の挑戦での初白星を目指す緑の名門は、9日にヨドコウ桜スタジアムで開催される明治安田J1リーグ第3節のC大阪戦に臨む。

その一戦に向け、7日にクラブハウスでの公式会見に出席した城福監督は、あと一歩で勝ち点3を逃した直近2試合を振り返った。

いずれも相手のスローインの流れで喫した失点場面に関しては「途中から入った選手がアラートになる状況で、相手の方がそれに対する準備が早いというようなことはあってはならない」と、改めて試合のクローズ役を担う途中出場の選手の準備に対するアラートさ・準備の重要性を説く。

さらに、その2試合で奪えなかった追加点を含め、相手を押し返すことができない後半終盤の戦い方に関しては自身の采配を含め、チームとしての課題であることを認めている。

「終盤攻められるというところは、自分の采配のところももう一度しっかり考え直さなければいけないところもありますし、ゲームを断ち切るような大きなクリアを含めて、仕切り直しできるようなボールキープにおいても守備においても、そういうメリハリというのは大事。それと同時に我々が70分、この前の試合で言えば、75分ぐらいまで展開したサッカーというか、志向したサッカーをいかに続けられるかというのは自分たちの課題だと認識しています」

「バトンを受けた選手がしっかりとグレードダウンしないという言い方よりも、グレードアップするようなチームにしていかないといけないと思います。いつも言っている言葉かもしれないですが、牛歩のごとく前に進むしかない。それをやり続けていれば、おそらく2点目もどこかのタイミングで入ると思いますし、ゲームクローズとしても、もちろん最後の5分ぐらいはまた様子が違うゲームクローズになりますが、全員で達成感を得られるような終わり方ができればと思います」

一方で、以前からJリーグのアクチュアル・プレータイムの増加を提言してきた指揮官は、リード時の試合終盤における、“したたかに時計を進めるプレー”という選択肢を除外。チームとしてボール保持の課題を口にしながらも、今後も意図的に時間を稼ぐようなプレーを選手たちに求めることはないと、自身の強い信念を示した。

「確かに時間をうまく使わないといけない。ただ、いわゆる時間稼ぎをしていると周りから思われるようなことを、自分たちは手段として選ばない。過剰に痛がってプレー続行ができないような状況から、次の瞬間にパッと立ち上がってプレーするという類の形で時間を稼ぐということは我々の選択肢にはないです」

「もちろんそうしたらひょっとしたら、逃げ切れたかもしれないという思いもあります。ただ、フィロソフィーという言い方がいいか、自分がサッカーに関われるのであれば、何かを伝えたいし何かを残したいし、やっぱり譲れないものというのがなければ、自分のいる意味がないと。貫くものは貫きたいです」

「ただ、自分たちのボールを大事にして、それが時間の経過につながっていく。これは、我々にとって重要な手段だと…。それをあえて僕は選手にボールを大事にすると言いましたが、自分たちのものにしっかりとして、それで相手がファウルをしたのであれば、そこからもう一度我々は、普通のフリーキックで再開するなり、相手に当ててタッチラインに出せば、それは我々のスローインになるわけで、自分たちの方にボールがあれば、相手は攻めようがない。そういうところの工夫と言うべきか勇気と言うべきか、チームとしての統一感というのは、もっと持っていいかなと思います」

「もちろんクローズというのは相手に隙を見せない、守備の反応という言葉がメインになりますが、自分たちのボールを大事にするというアラートさ、勇気も我々は大事にしたい」

開幕2試合連続ドローも、個々のタレントの質に加え、練度の高さを窺わせるC大阪については、「ミスを期待するような守備をしていたら、ボールは取れない」とその実力を警戒している。

「個人のスキルが高い。前線の外国籍の選手、おそらくメンバーが変わるかどうかは分かりませんが、前線の全員が外国籍の選手である可能性もありますし、日本人は非常にレベルの高い選手が控えていますし、両サイドバックが非常にスキルが高い。我々が相手のミスを期待するような守備をしていたら、これはボールは取れないと思います」

16年ぶりの大舞台に挑んでいる今季J1最年少スカッドは、開幕から2試合連続で5万人を超える大観衆を前に、トップ・オブ・トップと評価される強豪と対戦。ピッチ内外でJ1基準を肌で感じる中身の濃い2試合を経験した。その経験は百戦錬磨の指揮官にとっても、さまざまなことを考えさせられるものになったという。

「チームとして考えれば、(5万人超えの試合は)3試合連続になります。だから本当に貴重な経験が、今できているなと思います」

「これは選手だけではなく、自分もゲームを大体2回ぐらい振り返りますが、オフ明けにどういうふうにフィードバックするかとか、どこを強調するか、毎試合考えながらやりますが、今回で言えば、途中から入った選手、我々でいうところのバトンを受けた選手にクローズアップされがちです。そこはもちろん大きな問題であったことは確かですが、自分はこの2試合を経験して、もう一度整理をしたときに、私はまだ就任して2年経っていないですが、我々が立っていたJ2での立ち位置がどういうものであったか。その中で何を勝ち取ったのか。この前の15年間というのがどんなに苦しかったであろうか…」

「だからこその昨年末の5万人超えがあり、今年の開幕戦にマリノスというカードが用意されたわけです。そういう立ち位置の中で、このクラブが置かれた、経験した歴史の中で、この5万超えのお客さんが来てくれて戦うという意味が何なのかを自分の中で少し考える機会になりました」

その上でヴェルディが志向する「ハイライン・ハイプレスのアグレッシブな姿勢」、「ボールを大事にして勇気を持ってつなぐ」という両輪を通じて、サッカーの魅力を提供していきたいと、より深い部分でのJリーグ・日本のサッカー界への貢献を志している。

「我々はそういうふうに多くのお客さんが来てくれることに満足するというよりも、そういうお客さんに注目された状態で何を見せるかだと思っています。自分たちが志向するものを見せることで、Jリーグにこんなスタイルのチームがあるのか、Jリーグの目指しているものを新たに感じてくれたりとか、僕らが言えるような立ち位置ではないですが、Jリーグとかサッカーの価値を感じてくれるような試合を、多くのお客さんに見てもらうというところが、そもそも我々がJ1に上がった大きな意義だと感じています」

「別に偉そうに言うつもりはないですが、これまでサッカーの価値というところまで、意識できていたかないう意味では、ちょっと目の前の勝負のところに意識がいって、選手がそこで硬くなったというか、リラックスした状態、普段通りの力を出させられなかった場面もあったのではないか。特に交代選手の部分ではそういう思い返しもありました」

「もちろんヴェルディはこんなにプレスに行くのか、こんなにみんなが献身的なのか。その背景にはこんなにハイラインを保っていることで、あの速いプレスになるんだなとかという部分と、もう一つはサッカーというのは、ボールを大事にして、勇気を持ってつなぐ。そこの両輪があってサッカーは面白いねと…」

「ハードワークだけでなくて、こんなに勇気を持ったつなぎがあって、それをリカバリーする全員の献身的な動きがあって、さらにまた勇気を持ってボールを大事にしようとする姿がある。そういうような物を見せるのが、ヴェルディが16年ぶりに戻った意味なのではないのか。ちょっと自分なりに少し反省というか、なぜ我々が16年ぶりに戻ったのか。その意味は何なのか。何を伝えなければいけないのかを、ちょっと考えさせられました」

「これからもヴェルディの試合には多くの方が来てくださると思っていますし、その中で我々が見せなければいけないものがあると、そういう思考というか。単に今、勝ち点がいくつだとか、この選手のプレーが良かった、この選手のプレー悪かったことにとどまらないようなものを感じさせるのが、我々の上がった意義なのではないか、自分がここでやることに意味があるのではないかと思います」

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