「少なくともこの20年で一番難航」大山雪崩、2人依然不明 特有の気象と地形の難しさ

 鳥取県大山町の大山(1729メートル)で福岡市の男性3人が雪崩に巻き込まれ、このうち2人が行方不明になった遭難から9日で1週間となった。県警などによる捜索が続くが、発見に至っていない。今季起きた3件の遭難は、大山特有の天候の急変に起因しており、山岳関係者は気象状況の把握や万全な装備での入山を呼びかける。

 3人は2日、雪山登山のためのロープワーク訓練を中止して下山する途中に、北壁の西側の行者谷辺りで雪崩に巻き込まれたとみられる。位置を知らせるビーコン(電波送受信機)は持っていなかった。

 「荒れた時の大山は3千メートル級の山より危険。ベテランという言葉は通じない」と、日本山岳ガイド協会認定登山ガイドの久保昌之さんは警鐘を鳴らす。

 日本海に面した大山は海風による湿った空気の影響で雪や雨、強風が発生し、気象が急変する。久保さんは「気象条件や地形を調べ、リスクを考えないといけない」とし、悪天候時は無理に進まず、下山やビバークなど適切な判断をするよう強く訴える。

 大山では昨年、記録が残る1995年以降で最多の41件の遭難が発生。昨年12月24日と、今年2月10日にも山岳経験者が遭難した。

 12月と2月は、いずれも吹雪や霧で視界が失われるホワイトアウトが起きた。12月は縦走路で道を誤り、2月は夏山登山道9合目付近で道を外れて転落した。今回の遭難も気温の乱高下で雪崩が発生しており、直近3件はいずれも不安定な気象条件で起きた。

 冬の遭難は、主に夏山登山道や行者コースから外れたバックカントリーで発生している。今回雪崩に巻き込まれた3人は、尾根を通る通常の登山コースから外れ、雪崩が起きやすい沢を横切るルートを選んだ。

 大山隠岐国立公園管理事務所によると、立ち入る期間や区域に規制はない。自己責任だからこそ、山岳関係者は知識や技能を習得し地形や気象を調べ、万全な装備で登るよう訴える。特にビーコン、雪に刺して埋まった人を捜す棒のプローブ、シャベルの「三種の神器」は必須だ。

 また、鳥取県山岳・スポーツクライミング協会の神庭進・遭難対策委員長は「危険な場所は一人ずつ通ってリスク分散する知識が重要だ」と話す。

 ひとたび遭難が起きれば自己責任では済まない。救助隊を指揮する琴浦大山署地域課の井上将課長は「沢が密集する漏斗(ろうと)状の地形で起きており、捜索が難しい。

少なくともこの20年で一番難航している」と述べた。捜索は9日も行う。

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