新しいJクラブ候補は三重、滋賀、栃木シティの3チーム!JFL開幕前に3チームの実力を徹底分析

アマチュア最高峰の全国リーグである日本フットボールリーグ(JFL)が今月10日に開幕する。

Jリーグからライセンスを交付されたチームが優勝すればJ3参入の権利が与えられ、2位チームはJ3下位チーム(ライセンスを保有していなチームが優勝した場合は、J3最下位チームと対戦。保有チームが優勝した場合はJ3の19位チームと対戦)とのホーム&アウェイの入れ替え戦で勝利すればJ3参入の権利が付与される。

今季は昨季リーグ制覇を果たした優勝10度(最多)の絶対王者Honda FCに、今季昇格した栃木シティ、ヴィアティン三重、レイラック滋賀FCが優勝争いを繰り広げるだろう。開幕前にJリーグ入りを狙う栃木、三重、滋賀について迫る。

横浜FCを5-0で粉砕!2季連続の“昇格”を狙う栃木シティ

GK相澤ピーターコアミ

昨季各地域リーグチームのJFL昇格を決める全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL)で優勝を果たした栃木シティは、今季のJFLで躍進を見せそうだ。昨季はMF田中パウロ淳一、MF表原玄太とJリーグでも実績のある選手が所属していたが、今季は豊富なキャリアを持つ選手が複数加入した。

新加入選手※()は前所属チーム

GK
高山梓(作新学院大)、相澤ピーターコアミ(ヴァンラーレ八戸)
DF
奥井諒(V・ファーレン長崎)、西山大雅(横浜FC)
MF
ペドロ(藤枝MYFC※期限付き移籍)、土佐陸翼(VONDS市原)
FW
吉田篤志(ヴィアティン三重)、丹羽一陽(ヴァンラーレ八戸)、鈴木国友(松本山雅FC)、山崎亮平(テゲバジャーロ宮崎)

計10人が加入し、Jリーグクラブ経験者は7人と実力者がそろった。

中でもギュンギュンの愛称で切れ味鋭いドリブルを披露する山崎、大型ストライカーの鈴木の存在感が目立つ。既存の田中や表原との連係がフィットすればリーグ随一の攻撃力が期待できそうだ。

DFもヴィッセル神戸や大宮アルディージャで印象的な活躍を見せた攻撃的右サイドバックの奥井諒や昨年のJPFAトライアウトで好パフォーマンスを見せた西山が加入したため、守備のテコ入れにも成功した。

JPFAトライアウトに参加したDF西山大雅

そしてこのチームの特筆すべきところは、プレシーズン中に見せた攻撃力だ。先月24日にJ1浦和レッズとの練習試合(1本45分を計2本)で山崎、表原が得点して2-1とアップセットした。さらに翌日にはJ2横浜FCとの練習試合で5-0(得点者は山村、宇都木、丹羽×2、宍戸)と大勝した。

この結果からメイン、サブチームともにかなりの力を持っていることが判明した。通常2日連続の試合は主力組とサブ組とで分けて試合に臨むため、恐らくサブ主体のチームが横浜FCに大勝するということは、チーム力の高さを証明してみせた。

以前トライアウトで西山を取材した際に「横浜FCを倒すために頑張ります」と公言しており、自身が所属するチームが公言通りに前所属チームを粉砕した。今季はJリーグクラブを圧倒するほどの決定力で悲願のJリーグ入りを目指す。

Jクラブに3連勝!オシムの継承者が率いる三重

JFL8年目となるヴィアティン三重は、三重県勢初となるJリーグ参入を今季で決めようとしている。これまで数々の強力な選手を加えてJ参入を目指してきたが、最高順位は2020年シーズンの6位と険しい壁にはじき返されてきた。絶対的エースFW田村翔太を筆頭に、強力な新戦力を加えた三重はプレシーズンから実力の片りんを見せている。

新加入選手※()は前所属チーム

GK
折口輝樹(富士大)、松本龍典(ヴェルスパ大分)
DF
伊従啓太郎(カマタマーレ讃岐)、饗庭瑞生(ヴァンラーレ八戸)、篠原弘次郎(VONDS市原)
MF
稲福卓(松本山雅FC※育成型期限付き移籍)、大橋尚志(大宮アルディージャ)、服部航平(レイラック滋賀FC)、楠本羽翼(FC岐阜※期限付き移籍)、野口竜彦(ファジアーノ岡山)
FW
瀬尾純基(ソニー仙台)、木戸皓貴(ラインメール青森)、加倉広海(ティアモ枚方)

計13選手が加わり、Jリーグクラブ経験者は9人(折口はセレッソ大阪U-23時代に経験)と戦力の増強に成功することができた。

GK折口は昨年の総理大臣杯で富士大を史上初となる日本一に導いた逸材であり、セーブ力に定評がある。

総理大臣杯初制覇に導いたGK折口輝樹

C大阪U-18時代には2019年シーズンJ3第25節北九州戦に出場して、FW町野修斗(現ドイツ2部ホルシュタイン・キール)を完封するなど優れた実力を持つ。複数のJリーグクラブが動向を追っていたが、地元愛知県の隣県三重でシニアキャリアを始める。

DFラインは伊従、饗庭、篠原とJリーグでプレーした新戦力に、既存のDF谷奥健四郎、DF野垣内俊と元Jリーガーがいるため守備陣の層はリーグ屈指レベルと考えられる。

JPFAトライアウトに参加したDF伊従啓太郎

中盤もツエーゲン金沢や大宮で実績豊富の大型MF大橋に、精度の高いレフティー野口が加わった。昨季JFLで9アシストを挙げたMF安西海斗も在籍しているため、中盤の構成力にも期待ができそうだ。

今季から昨季東海社会人リーグ1部でwyvernを無敗優勝に導いた間瀬秀一監督が就任し、優勝を果たすためのチームビルドに励んでいる。これまで元日本代表監督イヴィチャ・オシム監督の下で通訳を務め、ブラウブリッツ秋田、愛媛FC、モンゴル代表の指揮官を歴任した名将の手腕はプレシーズン中に片りんを見せ始めている。

wyvernを東海社会人1部無敗優勝に導いた間瀬秀一監督

プレシーズン中にJリーグクラブ5チームと対戦して3勝1分1敗と好調であり、先月24日にJ1名古屋グランパスに2-1、25日にJ3岐阜に3-2、今月3日にJ3カターレ富山に3-1と怒とうの3連勝を飾った。特に名古屋と岐阜は中ゼロ日での対戦であるため、メイン、サブ問わずチーム力の高さを見せつけた。

エース田村が練習試合5試合6得点と絶好調であり、既存戦力の活躍も目立っている。前線、中盤、後方隙が見当たらない総合力の高い三重が、Jリーグ参入を目指して大暴れする。

元Jリーガーを大量補強!層の厚さがリーグ屈指の滋賀

昨季から数々のJリーグ経験者を補強して注目を集めたレイラック滋賀FCは、今オフのストーブリーグで多数の元Jリーガーを加えて衆目を集めた。昨季は史上最高順位となる3位と躍進したが、Jリーグ参入条件の2位以内に入れなかった。今季は昨季の雪辱を晴らして、J入りを決める。

新加入選手※()は前所属チーム

GK
笠原淳(FC大阪)
DF
平井駿助(横浜F・マリノス)、面矢行斗(栃木SC)、岸本駿朔(アルビレックス新潟シンガポール)、前川智敬(アスルクラロ沼津)、小野寺健也(栃木SC)
MF
白石智之(ザスパクサツ群馬)、久保田和音(ザスパクサツ群馬)、竜田柊士(アルテリーヴォ和歌山)、山下雄大(徳島ヴォルティス※期限付き移籍)、田部井悠(ザスパクサツ群馬)、ロメロ・フランク(鹿児島ユナイテッド)、南拓都(横浜F・マリノス)、小松駿太(FC大阪)
FW
五十嵐理人(栃木SC)、奥田陽琉(早稲田大)、大里皇馬(サガン鳥栖※育成型期限付き移籍)

新加入選手は17人に上り、一大戦力を形成した。Jリーグクラブ経験者数はリーグ最多となる15人もおり、圧倒的な層の厚さを誇っている。

守備陣は昨季5得点と空中戦でも強さを見せた平井、面矢は優れた実力の高さを昨季の期限付き移籍期間中に証明しており、空中戦に優れる小野寺やクレバーな守備を見せる前川と充実している。既存戦力もDF山口真司、DF井出敬大、DF平尾壮とJリーグ経験者がおり、充実したDFラインを形成できそうだ。

空中戦で強さを見せたDF平井駿助

中盤は鹿児島のチャンスメイカーとして活躍したロメロや、中盤でさまざまなタスクをこなせる久保田、サイドからのドリブル、クロスに定評がある白石、優れた身体能力と対人守備能力を誇る小松とタレントが揃っている。

前線はスピードを生かしたアタックを得意とする五十嵐や柏レイソルアカデミー時代から実力者として注目を受けていた大型ストライカーFW奥田陽琉にも注目したい。

強力な新加入選手と既存戦力の化学変化により強大な戦力を形成できるかで今季の明暗が分かれそうだ。昨シーズンから期限付き移籍で加入していた戦力もいるため上積みは栃木、三重より上回っているため継続性を見せたい。

「3.11震災」で父を亡くしたJリーガー、アスルクラロ沼津MF菅井拓也の決意とは。

栃木シティ、三重、滋賀と強力なチームが目立つ一方で、長年J参入を目指すチームの障壁として君臨してきたHondaやラインメール青森、ヴェルスパ大分、クリアソン新宿などJ参入を目指すチームも虎視眈々と頂点に狙いを定めている。今季はどのようなドラマを見せてくれるのか。アマチュア最高峰の戦いを見逃すな。

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