中部企業 暖冬の影響総点検 花粉対策品 30%増に スタッドレスタイヤ降雪少なく苦戦

例年より2週間ほど前倒して花粉症対策コーナーを設置(V・drug大須店で)

 全国的な暖冬となった今シーズン。花粉の飛散が例年よりも早まり、ドラッグストアでは鼻炎薬など花粉症対策商品を集めたコーナーを急きょ、前倒しで設置した。また、野菜の一部は生育が良く、収穫量が増えたことでスーパーでは売れ行きが良く、飲食店では仕入れの安定化につながったもよう。一方で、コートなどの冬物衣料や雪道を走行するためのスタッドレスタイヤの販売は苦戦した。中部企業への影響を総点検した。

鼻炎薬好調
 暖冬でスギ花粉の飛散開始が例年よりも早まり、ドラッグストアは花粉症対策商品の売り上げを伸ばした。バローホールディングス(HD、本社多治見市)傘下のドラッグストア「V・drug」は、1月末から鼻炎薬や目薬などの花粉症対策商品をそろえたコーナーを設置。例年と比べると2週間ほどの前倒しで、関連商品の売上高は1~2月で前年同期比約3割伸びた。
 「スギ薬局」を展開するスギホールディングス(本社大府市)も1~2月、内服薬や点鼻薬などの既存店売上高が15.9%伸長。日差しの強い日が続いたため、日焼け止めも34.7%増えた。
仕入れ安定
 気温が高めに推移したことで、野菜の生育も良好。バローHDが展開するスーパー「バロー」は、スナップエンドウなどの豆類の全店売上高(1月1日~2月28日)が前年同期比約6割増だった。農林水産省の市場調査では、1~2月の卸売価格はサヤエンドウやソラマメで2割以上低下し、値段が手ごろだったことが影響したとみられる。
 野菜の収穫量が増えた恩恵は、飲食店にも。青菜炒めや中華飯など野菜をふんだんに使ったメニューが売りの中華料理店、浜木綿(本社名古屋市)は、「1~2月は暖冬でホウレンソウなど野菜の仕入れが安定した」(担当者)と実感する。降雪があると収穫が遅れ、価格が高騰しやすいが、今シーズンは大きな影響がなかったという。
衣料品低調
 一方、スタッドレスタイヤを取り扱う、トヨタモビリティパーツ(本社名古屋市)のカー用品店「ジェームス」では、スタッドレスタイヤの売れ行きが鈍化した。最近の値上げと降雪が少なかった影響が重なり、営業部担当者は「二重パンチだ」と肩を落とす。2023年12月~24年1月の全国のタイヤ販売額は、前年同期比10~15%減で、ジェームスも同水準の落ち込みだった。
 百貨店では、コートなど冬物衣料の販売が伸び悩んだ。ジェイアール名古屋タカシマヤ(名古屋市中村区)は、2月の婦人服売り上げでロングコートは前年同月比約2割減少。手袋やマフラーなど防寒具の展開を減らし、代わりに薄手のストールやスカーフなどの売り場を増やした。
 名古屋栄三越(名古屋市中区)も、2月の婦人服売り上げはコート類が約7%減少。松坂屋名古屋店(同)は1~2月、手袋の売り上げが24%減少した。シューズ類ではブーツの売り上げが減ったが、スニーカーなどのカジュアルシューズが10%増と好調。「シーズンに特化したアイテムより、オールシーズンのアイテムに売り上げがシフトしている」(松坂屋名古屋店広報)と話す。 
 気象庁によれば、今年の冬(23年12月~24年2月)の平均気温は平年値を1.27度上回り、1898年の統計開始以来、20年に次ぐ2番目の暖かさだった。来シーズン以降も暖冬が続く可能性もあり、関連各社は、柔軟な対応が求められそうだ。

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