性別によっては『珍しい毛色』3選とその理由 オスの三毛猫以外にもいる!

性別によっては「珍しい毛色」とは

猫をお迎えする際に、その魅力的な毛色が決め手になった…という飼い主さんも少なくないかもしれません。

そのように、さまざまな毛色の猫がいる中で、実は性別によっては「珍しい毛色」を持つ猫が存在しているのをご存じでしょうか。

そこで今回は、猫の性別によっては「珍しい毛色」について解説します。

1.オスの三毛猫

文献によって多少異なる数値が示されていますが、一般的にオスの三毛猫が生まれる確率は1/30000程度だと言われています。長年臨床医として活躍されている獣医師でさえも、お聞きすると「数十年獣医師をしていますが、オスの三毛猫にあったことはありません。」と仰ることが多いようです。

かつては、その希少性から『オスの三毛猫は幸運を呼ぶ』と言われ、船に乗せて長い航海の無事を祈ったと言われています。日本でも、初めての南極観測船には、オスの三毛猫タケシを同行させ、無事に日本に帰国したことが知られています。

このように、そもそもオスの三毛猫自体が珍しいため、その毛色も珍しいと認識されているのですね。

2.オスのサビ猫

オスのサビ猫も、オスの三毛猫と同じように「珍しい毛色」の猫です。

サビ猫とは、三毛猫から白い色を除いた、黒と茶の二色で構成されている猫のことで、三毛猫と同じように日本には古くからいました。

濃い黒と茶の毛に覆われた見た目から、錆のようだという意味で「サビ猫」と呼ばれることが多いのですが、同じく黒と茶の毛が不規則に混じり合っている柄から「べっ甲のように美しい猫」だという意味で「べっ甲猫」と呼ばれることもあります。

錆のように見えるかべっ甲のように見えるかで、外見上の好みは分かれることの多い毛柄のひとつと言えそうです。

ただし、黒と茶の混じり方は複雑で、1匹として同じ模様のサビ猫は存在しないため、そこに魅力を感じる方も多いようです。

3.メスの茶トラ

オスの三毛やサビと比べると「珍しい」と言うほどには感じないかもしれませんが、茶トラ猫も性別によっては珍しい毛色で、『茶トラ猫のうち、メスはわずか2割程しかいない』と言われています。

猫の毛色と性格にはある程度の関連性があると言われていますが、茶トラ猫の性格に関して調べると「甘えん坊で欲求に対してストレートな反応示す子が多い」というような、オスによく見られる性格が挙げられていることが多いです。

また、茶トラ猫というと「顔が丸くて大きく、体格もがっしりした子が多い」という印象があるかもしれません。これらは、茶トラ猫の8割がオスであることを考えると、納得できるように思えます。

遺伝の仕組み

猫の毛柄が何色でどのような模様になるのかは、遺伝子によって決まります。そのため、こちらでは簡単に「遺伝の仕組み」について整理しておきましょう。

遺伝子は、体を構成しているすべての細胞の染色体という所にあります。染色体には複数の常染色体と、性別を決定する1つの性染色体があり、それぞれ父親と母親から1本ずつ受け継いだものが対となって構成されています。

猫の場合は、18組の常染色体と1組の性染色体の合計19組から構成されています。なお、オスの性染色体はX染色体とY染色体、メスの性染色体はX染色体が2本の組合せになっています。

1組の染色体には、同じ遺伝子が格納されています。つまり常染色体とX染色体には、同じ遺伝子が2つずつあるということです。ただし1つの遺伝子には異なる変化を引き起こす性質があり、2つの遺伝子の組み合わせによって、どういった変化が現れるかが決まります。

性質の異なる遺伝子が組み合わさった場合、その特徴が出やすい方の遺伝子を「優性遺伝子」、出づらい方の遺伝子を「劣性遺伝子」と言います。

例えば、遺伝子の名前がX遺伝子だとすると、優性遺伝子を大文字で「X」、劣性遺伝子を小文字で「x」と表記するのが一般的です。具体的には、「XX」とか「Xx」、「xx」のように書き表すわけです。また、XXとXxのどちらの場合も同じ変化が現れる場合は、「X-」と表記することもあります。

猫の毛柄を決める遺伝子

ではここからは、性別によっては珍しい猫の毛色を決定する遺伝子を例に、その毛色が性別によっては珍しくなる理由を見ていきましょう。

猫の毛柄を三毛やサビ、茶トラにする遺伝子には、3つの遺伝子が関わっています。

O遺伝子

毛柄を決める遺伝子のほとんどは常染色体上にありますが、この遺伝子だけは性染色体のX染色体上にあります。そのため、オスとメスでは持っている遺伝子の数が異なります。

メスのOO、オスのOで茶色の毛になり、メスのoo、オスのoでは黒い毛になります。メスのOoの場合は、受精卵から子猫になる過程で、茶色の毛になる部分と黒い毛になる部分とができるため、茶と黒の二色が同時に現れる毛色になります。

S遺伝子

Sが1つでもあると「白毛のブチ」を作り、ssの場合は「ブチなし」になります。

T遺伝子

Tが1つでもあると「縞模様」になります。

それぞれの毛柄を上記の遺伝子の組み合わせで表すと、下記のようになります。

  • サビ猫:Ooss
  • 三毛猫:OoS-
  • 茶トラ:OO(O)ssT- ※(O)はオスの場合

黒と茶の毛を同時に出すためには、O遺伝子がOoの組合せで存在しなければならないため、三毛やサビはオスではありえない毛色になります。

ただし稀に、突然変異でXXYの3本の性染色体を持つ猫が生まれることがあります。その場合、外見はオスなのに、毛色が三毛やサビの猫になります。

また、サビ猫は黒と茶の二色しかないため、S遺伝子はssの組み合わせとなり、黒と茶に白のブチが出る三毛の場合はS-という組合せになります。

茶トラにメスが少ない理由も、O遺伝子がX染色体上にあることによります。オスの場合、両親のどちらかにO遺伝子があれば茶トラになりますが、メスの茶トラは両親の双方にO遺伝子がなければならないため、数が少ないのだと考えられます。

まとめ

今回は、性別によっては「珍しい毛色」について解説しました。

学生時代は遺伝の授業が苦痛だったという方も、猫好きになったことで、猫の毛柄が現れる仕組みを調べているうちに面白くなった、という方は少なくありません。

愛猫家の方は、ぜひ猫の毛柄を見て遺伝子の組み合わせに思いを馳せてみてください。きっと、今までとは別の楽しみ方を手に入れられるのではないでしょうか。

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