スピン渦、解明に喜び 江崎玲於奈賞の十倉、于氏 茨城・つくばで表彰

江崎玲於奈賞を受賞した十倉好紀氏(中央左)と于秀珍氏(同右)=つくば市竹園

ナノテクノロジー分野で世界的な業績を上げた国内研究者を表彰する「第20回江崎玲於奈賞」の授賞式が8日、茨城県つくば市竹園のつくば国際会議場で開かれた。スピン渦結晶の直接観察とその物性の研究で同賞を受賞した理化学研究所創発物性科学研究センター長の十倉好紀氏(70)、同センターチームリーダーの于秀珍氏(58)に賞状と盾が贈られた。

授賞式で十倉氏は「スピン渦の発見や解明に関われて、ナノサイエンス分野で業績を上げることができうれしい」、于氏は「受賞を励みに微力ながらナノサイエンスの未知の世界を探索したい」と喜びを語った。協賛の関彰商事から副賞1千万円が贈られた。審査委員長の江崎氏もビデオメッセージを寄せ「多様な応用の道を開き、持続可能な社会実現に向けた卓越した研究」と祝福した。

スピン渦は、電子スピンの集団構造(直径約1万分の1ミリ)で、準粒子として存在している。さらに格子状に規則的に配列し、スピン渦結晶を形作る。理論的には存在が示されていたが、十倉氏と于氏が2010年に、初めて磁気顕微鏡で直接観察に成功。その後、室温以上で結晶が安定的に存在し、超低電流で結晶の構造を動かせることなどを発見した。低消費電力の次世代高速演算素子などへの活用が期待されている。

茨城県内研究者を対象とした第34回つくば賞、第33回つくば奨励賞の授賞式も行われ、それぞれ受賞者に賞状などが贈られた。

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