女子プロレス界で多くのトップ選手を輩出するスターダム。
業界歴41年の女子プロ界きっての名伯楽、ロッシー小川社長に現在・過去・未来についてロングインタビュー!
パート②では新人発掘、外国人選手招聘、団体エースに求める事、今後の方向性、所属選手へのメッセージなどプロレスTODAY山口総監督が質問形式で対談。
【自前の道場】
山口:今回、自前の道場を持たれましたよね。なにか選手の心境だったり、変化を感じたりすることはありますか?
ロッシー:昔は道場がないと団体じゃないという定義があったんですけど、最近はリスクヘッジじゃないけど、道場は借りてやってるところも多いですよね。やっぱりこれはやむを得ない事情(借りていた道場がビルの取り壊しにより閉鎖)、道場を探すことになって、たまたまいい物件があって、レンタルではあるけど自分達がフルに使えるものなんですよね。
山口:自由に出来ますよね、いつ行っても練習が出来るという。
ロッシー:その中での時間の制約はあるんですけどね。夜中は駄目だとか、近隣の問題で。ただ今までみたく限られた2時~5時とかの枠ではなく、もっと枠が広がっているので。この夏休み入るのに合わせてじゃないですけど、プロレス教室みたいなのはやっていこうかなと。
山口:いいですね。
ロッシー:女の子の。その中からプロレスラーになる子もいるだろうし、体を鍛えるだけの子もいるだろうし、入口を作っていこうかなと。まあ遅いんですけどね。
山口:固定費が結構かかりますよね?
ロッシー:それは言い方が悪いんですけど、辞めていった選手の分がそこに補われると思えばいいんじゃないですかね。
山口:道場でのイベントも考えてらっしゃるんですか?
ロッシー:いや、それはやらないですね。それをやってしまうと、やることがどんどん小さくなってしまうんですよ。全くやらないとは言わないですけど、道場マッチとかやったら、道場マッチに来るお客さんのためになっちゃうから普通の興行に来るお客さんが少なくなっちゃうと思うんですよね。
山口:なるほど。
ロッシー:それだけたくさんの人数がいて、若手だけはやりますというようならいいんですけど、みんな出てしまうような道場マッチならやる必要はないと思います。
山口:選手も相当増えてきているので、練習場所が確保できているっていうのはやっぱりいいですよね。
ロッシー:選手っていうのは増えたり減ったりなので、油断してはいけないんですよ。油断しちゃうと減っちゃうから。常に増やしていかないと。スターダムも7年間やってきてデビューしたのが37人いるんですよ、その選手全部いたら大所帯じゃないですか。だからうまい具合に回ってるんじゃないかな。
山口:いい意味で新陳代謝がうまくいってるんですね。
ロッシー:早いですけどね。昨日も渡辺桃がチャンピオンになって。でも渡辺桃は3年半もやってるんですけどね、急に出てきている印象になって。それはそれでいいと思うんですよ。新しい選手が急に出てくるものなんですよ。だからオカダカズチカと比べちゃいけないけど、彼が出てきた時だってもう5年くらいキャリアがあったわけじゃないですか、でも全く違う人が出てきた印象だったし。だから素材さえあればスターは作れると思ってます。人材とかがすごい大事。
【新人発掘】
山口:ロッシーさんが素材を見抜く力というか、どういう子がいけるなと感じますか?
ロッシー:あのいけると思っても、ビジュアルがいい子っていっぱいいるじゃないですか。今いろんな団体があって。でも本当に団体として栄えるのってその子達がちゃんとしたプロレスを出来るかどうかなんですよ。ちゃんとしたというか、スキルの高い。結局プロレス団体なので、ビジュアルだけ良くても駄目なんですよ、ビジュアルがいいに越したことはないですよ。そりゃ2つ兼ね揃えているのが一番いいですけど。
山口:まずはプロレスですもんね。
ロッシー:どっちでもいいと思うんですよ。入口はどっちでもいいんだけど、ビジュアルからの子はよっぽど頑張らなきゃ駄目ですね。ある程度まではいくけど、もっといくにはプロレス技術やスキルがないと。でも自分はそこまでさせないですもん。そこがスターダムの聖域なんで。それを簡単にさせちゃったら駄目だと思うし。ある程度まではチャンスを与えるけど、それ以上はちゃんとなっていかないと。線引きをしていかないと勘違いをしちゃうしね。
山口:今は色んな形のプロレスがあるのでプロレスラーの線引きが難しいですね。
ロッシー:それもいいんだけど、本当にプロレスラーとして認められるにはそれだけでは駄目だね。それがその人気だけですごいものがあれば別だけど、そういうことじゃないじゃないですか。人気と実力の2つがうまい具合に兼ね備えているのが当然ながら。
山口:そうですね、今回世代交代までではないと思いますが、渡辺桃さんが出てこられたというのも。
ロッシー:まあ世代といってもイオと10歳位違いますからね、ひと世代違ってきますよ。渡辺桃の例が出てますけど、本当は10代後半で出てくるのが好ましいですよね。ハタチに届く前くらいに1回上がってきて、ハタチから25歳くらいまでで完成して終わっていくという(笑)
山口:(笑)
ロッシー:でも今は30歳ですかね。これやっぱり自分も男性だから思うんですけど、男性って新しいものが好きなんですね。絶対数からいったら。古くていいものもあるかもしれないけど。でもプロレスって観る方が哀れんじゃ駄目じゃないですか、かわいそうだなとか、よくやってるなぁとか思ったら駄目なので。
山口:そうですね。ニュースターっていうのは、ワクワク感や若返った感が出てきて、いい風が吹いているなって思いますよね。
ロッシー:団体としてはこれが新しいスターですよっていうのをどんどん出していったほうがいいと思うんですよ。それをファンがどうかっていう問題は別にあるし。それも提示していかないとどうにもならないし。
山口:それもプロデューサーとしての腕の見せどころですね。
ロッシー:繰り返しですね。常に同じことを41年間。ここまではいけるんだけど、これ以上はいけないというような。
山口:じゃあ壁を感じているという。
ロッシー:壁は常に感じてますね。
山口:その常に上昇志向というか、足掻き続けるというスタンスが成長をさせてくれているんですかね?
ロッシー:もう足掻きたくないんですけどね(笑)。なんとかもうひと皮剥けさせてよと思うんだけど、常に足掻いてる。もうそんな小さなことまで気にしてるのってことまで気にするかもしれないし。
山口:ロッシーさんの性格はご自身ではどういう性格だと思われてるんですか?
ロッシー:なんだろうな。細かいことと大雑把なことが両極端にあるんじゃないですかね。でも最近思うのは、自分がやれる範囲ていうのは限られているから、いかにうまく人を使うかなんだろうなと。自分でなんでも出来るわけじゃないし。
山口:選手からはロッシーさん、どういう風に思われてると思いますか?
ロッシー:どう思われてるんですかね。難しいですよね、友達じゃないから。俺はちゃんと給料を払っていけば、いい給料を払えば彼女達にはとっては最高なんだろうし。
山口:年齢差を感じることとかもあると思いますが、選手とのコミュニケーションで気をつけていることはありますか?
ロッシー:難しいですね、女の子だから。なんだろうな。まあ、どこかに勞ってあげなきゃいけないこともあるじゃないですか。
山口:心のケアであったり、体のケアであったりですか?
ロッシー:心のケアも体のケアも出来ないですけど(笑)。なんだろうな、本当はあまり接触したくはないんですよね。接触したくないというか、あんまり蜜になっちゃってもどうなのかなと思って。
山口:じゃあクラッシュ時代との繋がりかたとは全く違った形ですか?
ロッシー:いや、もうそれは全く違いますね。もう自分は一番上に立ってるわけだから、そういう目で見てるし。ただあまりそういう所ばかり出しても、人はついてこないし。
山口:選手とはたまに話したりとかしたりするんですか?
ロッシー:話す時間を設けたりとかはなかなか出来ないですけど、会場行ったら1回は声かけますよ。
山口:各選手?
ロッシー:別に回って歩くわけじゃないけど。
山口:あと会場に軽食がありますよね。
ロッシー:あ、ケータリング?そうだね、毎会場ね。
山口:そうそう、ちょっとびっくりしました。あれもケアのひとつですよね。
ロッシー:ひとつなんだけど、当たり前になっちゃってるよね。他の団体でこれを見た人は「え?こんなことまでやってるんですか?」ってよく言われるけど、うちでは当たり前のシステム。
山口:じゃあまた新システムを検討中?またWWE行かないとですね(笑)
ロッシー:新システム?どうなんだろう。そうですねー、もうちょっと頂点に行きたいですね。プロレスのことだけを考えたい。経営とかね、そうは言っても数字のことばっかりですよ、頭の中。
山口:やっぱり経営者って数字ありきで仕事をしなくてはいけない部分はありますもんね。
ロッシー:だからね、選手のことも数字で見てますよ。どこかで。これだけ今日は試合内容がよくて盛り上がってるのに、物が売れないなとか。それって必ずしも比例するもんじゃないんですよ。だから自分の中の価値基準は、会場を沸かせられる選手、またはグッズを売上げられる選手。
山口:会場人気も判官びいきで応援するファンも結構いますしね。
ロッシー:でもなんだっていいんですよ、支持があれば。その人の存在理由があるわけですから。
山口:たしかにグッズの売上は如実に数字に現れますからね。
ロッシー:それが全てではないんですけどね、ひとつのバロメータになりますよね。それが売れる選手は当然ギャラのプラスアルファが多くなりますもんね。だから1ヶ月、同じくらいのキャリアの子が働いても売れる選手のほうが支払いが多くなりますよね。それがだってプロだから。一緒の訳がないし。でもなんか、それが全ての女子プロレスラーの所得番付を仮に公開されたとして、スターダムの選手はベストテンに何人いるのかなとか。そしたらそれなりのものを払っていかなくてはいけないですよね。スターダムがトップだとか言っておきながら、そんなにもらってないな、なんてなりたくないもんね。それはトップ団体の努めじゃないですかね。じゃないとトップ団体とは言えないですよね。
山口:新しい人にも夢を与える職業であってほしいですよね。
ロッシー:ただ給料公開してるわけじゃないから、内部でも分からないけど。でも立ち振る舞いで分かるじゃないですか。お金が全てじゃないんですけどね、あるほうが嬉しいじゃないですか。
山口:そりゃ嬉しいですよ!
➡次ページ(外国人選手の招聘・団体エースに求めること)へ続く
【外国人選手の招聘】
山口:外国人選手の招聘というのが他団体と比べても圧倒的に多いと思うのですが。
ロッシー:そうですね、他団体はほぼ呼んでないですからね。
山口:これはロッシーさんのこだわりみたいなのはあるんでしょうか?
ロッシー:こだわりはないんですけど、プロレスだからいろんな国の人が集まって競い合うのがプロレスなのかなとも思うし。でもここに来てWWEとかいろんな影響があって、彼女達はやっぱりあそこに行くのが一番理想だし、そこから声がかかったら試合したいし。そういう意味ではちょっと足かせになってるな。見えないとこでね。
山口:でもWWEに上がっていない選手からすると、スターダムに上がるというのは嬉しいんじゃないですか?
ロッシー:それはあるんですけど、WWEから声がかかったらそっち行きたいじゃないですか。WWE以上の組織ではないので、当然。そこが今、女子プロレスにもWWEも力を入れているから、昔は枠が少なかったけど今は女子に対して枠を広げてるじゃないですか。うーん、だからそれは自分達が育てないと駄目ということですよ、外国人も含めて。
山口:日本のマット界の技術が世界でも1位だって言われてるじゃないですか、そこで鍛えて向こうに上がるという意識を持っている人も多いんですかね?
ロッシー:いやぁそれはないと思いますよ。WWEが一番の夢で、一番のチャレンジだから。そこはスターダムがいいと言ったって規模が違いますよ。だからそれでも我々は、それをくぐりながら選手を見つけてこなくてはいけないしね。
山口:でも本当いい選手を見つけてきますよね。
ロッシー:あのいろんな人が出てきて、何回も呼ばれて来てる人はいい人材だろうし。1回しか来ない人もいるしね。
山口:バイパー選手とか、あれだけ大きくて動ける選手とか、トニー・ストーム選手はビジュアルもいいし動きも素晴らしい選手ですね。
ロッシー:それも日本人と一緒で次々に見つけていかないと駄目ですよね。
山口:外国人選手があれだけ多く出てるというのは、幼少期のプロレスを観たときの面影が強いんですか?
ロッシー:どこかにあると思いますよ。今でも外国人選手は自分が迎えに行ってるんですよね。そこでしかコミュニケーション取る時間もあまりないし。だって来たらわざわざ会って話ををすることもほぼないし。
山口:一緒にご飯を食べに行ったりとかもないんですか?
ロッシー:ないですね。初来日のときは一緒に行ったりもしますけど、入ってしまったらほとんどないですね。なにかの機会があれば行きますけど。なんだろうな、これも常にWWEとのいたちごっこじゃないけど、目の上のたんこぶですね。
山口:新しい選手をひっぱってくるというのは、ロッシーさんメインでやられてるんですか?
ロッシー:いやそうではないですね。
山口:そうなんですね。
ロッシー:うち、外国のスタッフもいるし、あとは人の紹介もあるし。年中売り込みはありますよ。今日もいっぱい来たし。例えばアニメとコラボしたと聞いたら、アニメキャラのこの子どうですかって連絡も来たりするし。
山口:じゃあその中で実力もいけそうな人がいたらという感じですか?
ロッシー:でも俺映像とか観ないんですよ。だって見たってここでやることが大事だから。実際そのとおりに出来ないですもん。
山口:それって1回観て呼んでみようという基準とかってあるんですか?
ロッシー:観た感じじゃないですね(笑)。直感、直感(笑)。あと若さは必要!若さで30%増し。
山口:本当にいい人材が揃ってますよね。
ロッシー:これもだから、常に探して活性化していかないといけない。
山口:あれだけ外国人選手が揃っていると、楽しいですよね。
ロッシー:自分はそう思うんですけどね。今、新日本プロレスがあれだけ豊富に使ってるじゃないですか。新日本プロレスが楽しいなって思うのは、今度6月の大阪城ホールとかって、全部、対外国人じゃないですか?それはここ何ヶ月、何年と外国人選手を育ててきているから出来ることですよね。
山口:いっときは、日本人同士対決じゃないとっていうときもありましたよね。
ロッシー:そうですね、だけどそれだと短期間で出し尽くしちゃうんですよね。やっぱそこで外国人を起用して、僕はそういうことをやりたいなと。
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【団体エースに求めること】
山口:では、団体のエースに求めることは何でしょうか?
ロッシー:求めること・・・。それはその団体のスターだという絶対的な気持ちじゃないですかね。行動ね、言動。その選手がスターを体現してくれないと、エースではないし。それは思いが言葉で出るかもしれないし、試合で出るかもしれないし。
山口:やっぱり今で言うとイオ選手が女子プロ界の象徴みたいになってるかと思うんですけど、イオ選手はご自身の努力があったからこそですが、ロッシーさん的にはスターに育て上げるというところで、ここが引っかかったというものはあったのでしょうか?
ロッシー:最初にタイトルを取ったときは苦戦してましたよね。チャンピオンになったけれど、まわりもファンも認めていないというか。自分なりに1個1個積み上げていった結果だと思うんですよね。だからめげずにやることじゃないですかね。それが選ばれたものだから、誰でも選ばれるわけじゃないですから。他にないものがあったから選んだんだろうし。あれはもう5年前なのかな、両国国技館で当時の赤いベルトのチャンピオン、アルファ・フィーメルから高橋奈七永に移って。その前かな、両国をやるって段階で新しいスターが欲しいわけですよ、団体としては。でも本当は白羽の矢が立ったのは、美闘陽子だったんだけど、彼女はその前の年の夏に辞めたんですよ。で、団体生え抜きのスター候補生が初戴冠してっていう絵を描いてたんだけど、そうはいかなくなった。ということで、イオかなとその前の年の秋くらいからずっと頭に描いていて。描いていたけど、すぐ実行には移さなかったですよ、時が来るのを待って。
山口:そのへんがマッチメイカーとしていうかプロデューサーとしていうか、すごいですよね。
ロッシー:そういうことはいっぱいありますよね。そうやって長いスパンで決めてると成功しますよね。
山口:ワインを寝かせて開けるような、楽しみというかプロデューサー冥利につきますね。
ロッシー:だから昨日は渡辺桃がチャンピオンに勝ったけど(取材日は、渡辺桃選手がワンダー・オブ・スターダム初戴冠した翌日)、2月にも1度やってるんですよね。その試合を観たときに、あ、次はチャンピオンは桃だなと直感しましたね。
山口:スイッチが入ったような感じなのでしょうか。
ロッシー:ああもう彼女しかいないんだなと。他にもいるんだけど、今現在は彼女が出てくることがいいんじゃないかなと。
山口:次世代のエースを見せていくためにされていることはあるんですか?
ロッシー:これは入ったときから見てますよ。この子がどういうふうに育っていくか、この子がどうやって上に上がっていくか。その子の言動だったり、評判だったり、いろんなことを聞きながら。自分が常に見れるわけではないから、他の人の話も聞きながら常に機会を見てますよ。
山口:そういうのが一番面白いんじゃないですか?
ロッシー:当たればね(笑)。でもそれは常にね、考えちゃいますよ。練ってるわけじゃなくて、直感かな。なんかそういう感がはたらくって面白いじゃないですか。それが一番のやりがいかな?だからよく松永会長が出来上がったものに関して、全く興味がなかったんですよ。入ってきた子ばっかかわいがっていたんですよ。当時はなんでそんなことしてんのかなって分からなかったんですよ。今いる選手には全く興味を示さずに、まだデビューもしていない子達に興味を持ってたんです。今は自分も分かるような気がします。
山口:面白いですね。
ロッシー:次々に選手を輩出していきたいんですよ、それが止まると団体としても止まってしまうから。でもそれがタイミングを見てますよ、誰にしても。
山口:マッチメイカーとしても腕の見せどころですね。
ロッシー:あとプロレスに納得させるものがないと。
山口:愛川ゆず季選手とかはグラドルでありながら、プロレスで納得させるだけのハートと技量がすごかったなと思います。
ロッシー:彼女はほとんど1回か2回でほぼモノにして。どうすればプロレスはいいって、彼女は分かってたんですよ。
山口:やっぱりある程度すじがよかったんですかね?
ロッシー:感覚。プロレスの感覚ですよ、プロレスの感覚が分からない人は、それがなかなか。
山口:ファンも認めてくれないですよね。
ロッシー:だから時間がかかりますよね、人材を育てるのは。でもエースっていうかスターというものはいきなり出てくるがいいんじゃないですかね。
山口:それが昨日の桃選手だったのかもしれないしということですね?
ロッシー:それはゆくゆく、あれがそうだったのかなとなるし、なんないのかもしれないし。違う人が出てくるかもしれないし。
山口:そうなんですね、でも若いので、とても可能性を感じますよね。
ロッシー:でもそれは一人に固執しているわけじゃないから、団体としては。次の選手、次の選手と。また夏にもデビューさせなきゃいけないから。
山口:じゃあ道場にも練習を見に行ったりするんですか?
ロッシー:いや、ほとんど行かないですね。見ないけど、人の評判って大事じゃないですか。だから選手にも聞きますもん、今あの子どんな感じ?とか。それで情報を得たりはしてますね。
山口:選手が一番お互いを見ているところはありますよね。
ロッシー:この選手間の中で認められることも大事じゃないですか、俺がいきなりこいつだと言っても周りに認められなきゃいけないし、認めさせなきゃいけないし。だから情報はよく聞くんですけど、昨日渡辺桃のことを聞いたらある選手が「もう伸びしろしかない!」って言ってましたよ。
山口:そうですね、そしてベルトを失ったイオ選手や岩谷選手も今後どうなるのか興味があります。
ロッシー:そうだね、岩谷麻優ははっきりしない立場にいるからね。でも彼女は1期生でスターダムの象徴でもあるんですよ、彼女がいなかったらスターダムは全く違ったもの。彼女が残っていることで初期のスターダムのイメージを1人で保ってますね。後はどんどん新陳代謝をしてるからね、ジャングル叫女なんてまだ3年、2年半だっけなデビューして。みんなそうだな、桃も3年くらいか。
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【今後の目指す方向性】
山口:今後の目指す方向性みたいなものをお伺いさせてください。
ロッシー:あと3年で10周年なんですよ。10周年ではまた両国国技館でやりたいなという希望はあるんですけど、ただ3年も待つのもどうかなとも思って。この3年間で柱となる大会をやりつつ、そこに向かっていくのも1つだし。それは1つの通過点だから。でもそういう大きな大会を根付かせないといけないよね。
だから興行の充実、そしてスターダムワールドの会員を増やしたいと思うんだけど、それは足踏みしてますね。それはやっぱり世界的に見ると、女子ってまだもうひとつなんですよね。
山口:そうなんですね。
ロッシー:とにかくこの10年、15年、私の命が尽きるまで。もっとそれ以降も継続していきたいなと、自分だけの世代じゃなくて、その後の世代も。だって今歴史を作っている途中なんだから、途絶えると過去がなくなってしまうから。過去がなくなるってことは、その選手の過去がなくなるってことだから。だから継続していきたいんだけど、そのためには一山あてないと難しいと思うんですよね。松永兄弟は日本女子プロレスを根付かせたんですけど、自分は世界を目指したいと思ったんですけどもう時間がない。
山口:まだまだいけるんじゃないですか?
ロッシー:それにしても時間が足りない。今40歳くらいだったらなぁと思いますよ。なんだろうな、本当は世界を束ねたいんですけどね。その前に日本もしっかりやりたいし。ひとつの絶対的な大国を作りたいんですよね、スターダムは「あ、ちょっと別なんで」みたいな。
山口:ロッシーさんは後継者は考えていらっしゃるんですか?
ロッシー:考えたことありますよ。
山口:それは選手から?それともフロントで経営者寄りの方から?
ロッシー:少なくても20歳、30歳下じゃなきゃ駄目ですね。なぜかというとそうしないと、世代が一緒だから(笑)あとはリスクを負えるかなってとこですね、経営のリスクを。負う必要はないんですけど、負う覚悟がないと駄目ですよね。リスクがないに越したことはないんですけど。
山口:経営者は少なからずその覚悟は必要ですよね。
ロッシー:うまく行っているときはいいんですけどね、うまく行かなくなったときが腕の見せ所というか。ただ、俺このスターダムでうまく行かなくなった経験がないんですよ。だからそのときどうなるのかなとは思いますけどね。だってこの7年間、そこそこよかったですもん。
山口:上手くやられていますよね。
ロッシー:堅実にやってますよ。派手に見せながら、堅実にやるというね。昨日もアニメファンがたくさん来てくれたんですけど、違う会場に来たのかなって思いました。何やっても沸くんですもん。アイドルファンやアニメファンは共通するところがありますもんね。プロレスファンが一番ひねくれてるんじゃないかなって思いますけどね。
山口:プロレスファンは斜に構えている部分とかありますよね。
ロッシー:なんかその環境でやってしまうとね。選手をアメリカに連れて行くと、みんなアメリカはいい!って言うんですよ。試合がよければリスペクトしてくれるし、反応してくれるし。
山口:日本のファンは腰を据えて見てやろうという人が多いですよね。それに日本人の気質的なものもあるかもしれません。
ロッシー:そうですね、あとはひねくれてるんですよ(笑)
山口:海外のファンはライブ感というか、その場を楽しもうというエンジョイ型というか。
ロッシー:自分が楽しもうというね。まあスターダムのファンは割とみんな楽しむという人が多いですけどね。海外のWWEの試合に行ったときに、ほとんどのファンがベルトを肩に背負って歩いているんですよ。日本じゃありえないじゃないですか。中にはベルトを2つも3つも持っている人がいて、あんなに重いものを。
山口:国民性の違いなんですかね?
ロッシー:でも昨日のアニメファンとかはめちゃくちゃ騒いで楽しんでたんですよ。同じ日本人じゃないですか。だから今の新日本プロレスとかはそうですよね。アニメファンもプロレスファンも本質は一緒だと思うんですよね。ただ、ファンも入れ替わってますよね。とにかく他の団体と比べられないような揺るがないようなところまで行きたいですね。そのためには絶対的な人数がいないとね。
【所属選手へのメッセージ】
山口:最後に経営者として所属選手へのメッセージをお願いします。
ロッシー:うちの選手はスターダム愛が当然あって、団体に忠誠を尽くしている選手が大半だと思うんですけど。それはやっぱり自分たちがそこで生まれて育ってるから、愛情とかもあると思うんですよね。だからそれは彼女達も自分たちの次の世代、またその次の世代を作ることが自分達の飛躍というか団体を守ることだと思ってると思うし、争いがないですからね。
山口:争いがないってすごいですよね、仲良さそうですもんね。
ロッシー:うん、やたら誕生会だとかレクリエーションが多いですよ。あと、周年興行終わると必ず1泊旅行行ったりしてるんですよ。試合とは関係なく。
山口:それはすごいですね。
ロッシー:そういう小さなことなんですけど、花見とか去年だったりバーベキューだったりとか。そうやってみんなで遊ぶとか、騒ぐだとか、健康的にね。それは子供もいるし、酒の匂いがしない団体じゃないですか。やっぱり彼女達が歴史を作ってくれているから。歴史を繋ぐ選手もどんどん作ってほしいなと思いますね。
山口:次世代への継承ということでしょうか?
ロッシー:そうですね、次世代への継承ですね。
山口:今日は長時間のインタビュー有難うございました。
<インタビュアー:山口義徳 / プロレスTODAY総監督>
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