どのくらい難しいの? 辺野古の軟弱地盤改良 防衛の専門家が「永遠に完成しない方が日米に好都合」と皮肉るわけ【3月2日~8日 タイムス+プラスから】

 しきりに難工事と言われているけれど、どのくらい難しいのだろう? 「マヨネーズ並み」って、実際どんな感じ? そんな「そもそも」な問いに答えようという調査報道です。

 今週、最も読まれたコンテンツが、新基地建設が進む名護市辺野古の大浦湾側に広がる軟弱地盤を巡る企画。国が設計変更を不承認とした沖縄県を裁判で退け「代執行」という手段で建設を強行している中、沖縄タイムス取材班は軟弱地盤の改良工事の側面から、本当に実現可能で必要性があるのか、検証に挑んでいます。

海底に軟弱地盤が広がる大浦湾側の海域=2023年10月1日、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部(ドローンで飛行禁止区域外から撮影)

 まずは、新基地の規模や工法などについて分かりやすくイメージしてみました。 

 大浦湾での改良工事は1月に着手したばかり。工期も費用もどこまで膨らむのか不透明な状況で、比較対象として取り上げたのが、世界最深とされる水深70メートルの軟弱地盤を改良してできた韓国・巨加大橋の沈埋トンネル工事です。一部工法が辺野古で採用される計画で、社会部の塩入雄一郎記者が工事に携わった土質・基礎技術の専門家や大手ゼネコンの関係者に韓国で取材しました。

サンドコンパクション(SCP)船。名護市辺野古の新基地建設工事でも用いられる工法で、海底に砂くいを打ち込むために装備された円柱状の「リーダー」は数十メートルに及ぶ

辺野古はギネス超えの難工事!?

 2003年から8年かかった事業では、砂で固めた地盤の中から泥が噴出したり、作業船が事故を起こしたりとトラブルが続出。多くの困難を乗り越えた結果、工事全体で五つものギネス記録を打ち立てたそうです。 

 一方の大浦湾は、最も深い「B27」地点で水面下90メートル。韓国のケースより20メートル深いことになります。しかし防衛省はB27地点の地層強度は調べず、なぜか150~750メートルほど離れた3地点のデータから地層の種類は同じだと推察。海面下77メートル以深は「非常に固い層」だと結論付けています。県庁の高さとほぼ同じ70メートルの深さまでは、砂くいを打って地盤を強化しますが、残る20メートルは改良しない方針です。

 韓国の工事で技術指導した専門家は「マヨネーズ並み」とされる地盤について「足が沈んでいく泥干潟のようなイメージ」と指摘します。同じく韓国の大手ゼネコン関係者に「辺野古」の実現可能性を問うと「時間とお金をかければできないことはないだろう。ただ、そこまでのコストに見合う工事なのか」と投げかけました。

 防衛ジャーナリストで、本紙ウェブ「エキスパートEye」でコメンテーターを務める半田滋さんは、宜野湾市の米軍普天間飛行場の代替としての新基地建設を痛烈な皮肉を込めて批判します。

【半田滋さんのコメントを一部抜粋】
 韓国の例を見る限り、防衛省が示した9300億円の工費はさらに膨れ上がり、約12年という工期も延長される可能性がある。そして完成するのはオーバーランを含めても1800メートルという重武装した戦闘機や物資を満載した輸送機が利用できない中途半端な滑走路である。

 一方、普天間基地は滑走路が約2800メートルあり、近くに障害となる山もない。米軍幹部が「代替施設よりも普天間基地の方が軍事的に優位性が高い」と述べたのは正直な感想だろう。普天間基地を使い続ける方が良いならば、辺野古新基地の完成は遅いほどありがたいことになる。工事が続く限り、日本政府は移設の努力を米軍や日本国内に示し続けることになり、米軍との間でウイン・ウインの関係を維持できる。

 もはや辺野古新基地は建設すること自体に意義があり、できるならば永遠に完成しない方が良い。そう思っている日米関係者は少なくないのではないだろうか。

 果たして膨大な時間と巨額の税金を投じて、辺野古に基地を造ることにどんな正当性があるのでしょうか。決して沖縄だけの問題にせず、全国の人たちに関心を持ってほしいです。検証企画をまとめて読める特設ページは以下から。

 これからも企画は続く予定です。取材班の調査報道に引き続き、ご注目ください。

国際女性デーで特別展開

 さて、3月8日は女性の権利向上や差別解消などを目指す「国際女性デー」でした。8日の沖縄タイムス朝刊の題字は、女性デーのシンボル花であるミモザで彩られていました。

「国際女性デー」に合わせ、1面の題字をミモザで飾った他、さまざまな企画を展開した3月8日付沖縄タイムス

 この日は共同通信が大学教授らと実施している都道府県版ジェンダー・ギャップ指数の沖縄分の分析や、沖縄県内の各界で活躍する女性たちの紹介、タレントのRIKACOさんのインタビューがフロントを飾る4ページ特集など、盛りだくさんの内容で構成。ウェブでもチェックできます。

 女性デーに関連し、9、10の両日には、浦添市のサンエー浦添西海岸パルコシティで、女性の健康課題をテクノロジーで解決する技術やサービスを指す「フェムテック」にフォーカスした沖縄タイムス主催イベントも開催中です。ぜひ足を運んで、更年期や若年妊婦支援などをテーマにしたトークショーや親子で学べる性教育、各種フェムテック商品の展示を楽しんでください。詳しいプログラムや出展団体などはこちらから。

 また、沖縄タイムスの音声番組「サクッと沖縄」では、国際女性デーに合わせた特別番組を9日正午に配信。ジェンダー・ギャップ指数に詳しい共同通信の山脇絵里子編集局次長をゲストに招き、指数から見える沖縄の現状を深掘り解説します。音声配信サービス「Voicy(ボイシー)」の他、ポッドキャストで聞けます。

 さらに、共同通信のポッドキャスト番組「きくリポ」では10日、本紙学芸部くらし班の嘉数よしの記者、勝浦大輔記者が取材を通して感じたことを語ります。午前5時配信予定です。

 以上、今週のデジ編チョイスは新垣綾子が担当しました。皆さま、すてきな週末をお過ごしください。

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