学生時代は優秀だったのに…「勉強」はできても「仕事」ができない人の共通点

上司や部下との関係が上手く行かない、学生時代は優秀だったのに仕事が上手くできない、など職場の悩みを抱えている人は少なくありません。本記事では、CPAエクセレントパートナーズ株式会社代表取締役の国見健介氏による著書『一生モノの「学ぶ力」を身につける:国見流結果を導く会計学習メソッド』(中央経済社)から、職場での人間関係を良くする方法や、仕事を円滑にする思考法について解説します。

「手段」のアドバイスは再現性が高くない

よく、名プレイヤーが名コーチになれるわけではないと言われます。それは人徳がない、人を統率できないなどの要因もありますが、「なぜうまくいったのか」を因数分解して、言語化することができないことが大きいからです。

同様に、成績の優秀な人に「どうやって勉強しているか」を漠然と聞くことも実は危険を含んでいます。なぜなら、自分が勉強できるようになった理由を他人に因数分解して説明できないことがあるからです。

成績優秀な人が「この問題集を10回解いたら、できるようになったよ」と話していたとしても、問題集を10回解いたという手段が本質ではありません。その問題集を10回解く過程で、きちんと理解ができ、きちんと暗記ができ、初見の問題に対応できる力が身についたから、できるようになったのです。

その理解の仕方や暗記の仕方、初見の問題への対応力のところまでを具体的に説明できる人はそう多くありません。だから、こういう話の多くは、手段に着目したアドバイスになりがちなのです。

手段のアドバイスは、効果を生み出すための再現性が高くありません。勉強では、理解と暗記という要素が欠かせないので、その力が養えなければ、すべての結果は偶然の産物である可能性が高いのです。

勉強はできたのに、仕事はできない人

時折、勉強では優秀だったのに仕事では結果が出せない人がいますが、それはたまたま勉強ではうまくいった可能性が高いです。

仕事ではさまざまな要因が絡み合います。たとえば、対人スキル1つを挙げても、「どうしたら良好な人間関係が築けるか」を戦略的に考えられず、うまくチームプレーができないといったこともありえます。

また、勉強では自分の持ち時間のうち90%の時間を使って目標を達成できていたとしても、仕事では自分の持ち時間に対して5 倍も10倍も、それ以上にもやることはあります。どうやっても、自分の持ち時間でやりたいことが終わるわけがありません。

だから、「限られた時間の中で優先順位を付けて、何をやると決め、何をやらないと決めるか」を、環境や周りのメンバーの個性なども考えて判断していかなければならないのです。

そうした選択が必要な時にいきなり「10の持ち時間で100の仕事をこなせ」と言われると、完璧主義者であればあるほどパニックに陥ってしまいます。その結果、目の前の10までは完璧に仕上げて、残り90の仕事はギブアップする可能性もありえます。

それが「勉強はできたかもしれないけど仕事はできない人」といった評価につながってしまう一因です。

うまくいかない理由には共通点が2つあります。1つは戦略の立て方が間違っていること。もう1つが再現性がないやり方をしていることです。さらに言えば、プライドが高い人は、そういった状況の時に「どうして自分が評価されないんだ」と他責思考になって、悪循環に陥りがちです。

思考法が変われば空気が変わる

では、どうすればうまくいくのでしょうか。その1つとしてとても大切なことが、上述した他責思考から自責思考へ思考法を変えることです。

対人スキルの話で言えば、たとえば友人を思い浮かべて「なぜ自分はあの人と仲が良いのか」と考えると、その答えはとてもシンプルで、自分にとってプラスを与えてくれる人だからです。

誰しも、人生の主人公は自分です。だから、「自分はこうなりたい」、「自分はこうされたら嬉しい」という願望があります。当然、それは皆が皆、個々にオリジナルな思いを持っています。

良い関係性を築き合えている人は一緒にいることでお互いの願望が満たされ合っています。だから、良好な人間関係を築けるようになるのです。

逆に、「なぜ仲が悪いか」も考えてみると、それは自分の願望に対して足を引っ張ったり、悪口を言ったりするからではないでしょうか。だから、悪口を言うような人とは絶対に良い人間関係を築くことはできません。

人間関係を良くしたいのであれば、相手の願望を理解して、それに対して貢献をすれば良いのです。そうすれば、相手も心地よく感じてくれるので、相手もまた自分に貢献してくれます。

非常にシンプルな法則にも関わらず、理解できていないがゆえに相手の嫌がることをしてしまうのです。

もし、部下が仕事で壁にぶつかった時に、「なんでできないんだ! もっとちゃんとやれ!」と他責思考で怒鳴っても、何の問題解決にもなりませんし、物事はさらに悪化してしまいます。

「なぜうまくいっていないのか」を紐解いて、「これとこれがうまくいってないから、こういうふうに改善すれば、もっと良くなるのでは」とアドバイスし、うまく壁を乗り越えることができれば相手も嬉しいはずです。

そうすれば上司と部下の関係も必ず良くなり、その組織にも良い空気が流れるようになります。

つまり、相手が悪いという他責思考ではなく自責思考で自分がどのようにコミュニケーションをとればよいのか、自分の思考と行動をどのように変えればよいのかという視点で考えることが重要です。

国見 健介

CPAエクセレントパートナーズ株式会社 代表取締役

公認会計士

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