ペットと引っ越し、飼い主が注意すべきポイント 新居への適応や移送にも必要な気配り【杉本彩のEva通信】

ペットと引っ越し、飼い主が注意すべきポイント 新居への適応や移送にも必要な気配り【杉本彩のEva通信】

引っ越しがピークとなるこれからの時期、 飼い主から捨てられる犬や猫などのペットが増えるという。今まで共に暮らしていた愛犬や愛猫を、人の勝手な都合で捨てるという、理解しがたい選択をする人がいるのだ。

何か人生の大きな問題に直面し、苦渋の選択の末に「手放す」 というケースはあるだろうが、そうであっても動物が幸せに暮らしていけるよう、次の環境を責任持って用意する。それが人の道である。しかし、安易にその道を踏み外してしまう人がいたり、心のどこかに罪悪感を抱きながらも、「仕方ない」という言葉で都合よくその責任から目をそらしてしまう人がいる。問題に直面し選択を迫られた時こそ、人の真価が問われるのだ。

人生には、結婚や離婚、病気や入院、出産、就職、転職、転居とさまざまな変化が訪れる。その中で10年から20年、飼い主がいなければ生きていくことができないペットの世話を、ペットの寿命までまっとうできるのか自分に問うてほしい。途中で投げ出すことなど許されないのだ。そんな自覚と覚悟を持っている人だけが、ペットと暮らす資格があるというもの。 その出発点からしっかり考えてほしい。

そして、もしペットと一緒に暮らしている人が引っ越しをすることになったら、必ず注意しなければならないことがある。当然だがペット可の住居への引っ越しだ。そうでないとトラブルになる可能性がある。ペット飼育可なのか書類で確認せずペットを飼育し、大家さんや管理組合からペットを手放すように言われる事例が後を絶たないそうだ。貸主や管理人などに、事前にペット飼育の可否、許可されている場合は、ペットの種類・頭数・大きさの制限を書面で確認することが必要だ。

またペットと一緒に引っ越しをする場合、自家用車での移動が難しい場合は、最低限、ペット専門の信頼できる移送サービスを利用すること。移送にはペットに大きなストレスがかかるので、温度環境等のケアが適切にできるサービスの提供が必要だ。もちろん距離や場所、サービス内容にもよるが、可能なかぎり陸送や、行先によっては海路など、飼い主とともに移動するのが安心である。

新居に着いたら、特に猫は新しい環境に慣れるまで時間が必要なので、隠れてしまいそうな危ない場所には入れないように対策を施したり、自宅内に安全で落ち着けるケージスペースを確保したり、刺激を与えないように気をつけながら、環境に少しずつ慣れてもらう。それまでは脱走にはより注意が必要だ。窓やドアは開けっ放しにならないよう必ずロックも忘れずにお願いしたい。 飼い主自身もまだ新居に慣れていなかったり、把握できていないことがあるので、犬や猫の行動を予想しながら、 防止柵やネットを使って隅々まで脱走対策をする必要がある。

そして引っ越し後は30日以内に新居の市区町村に犬の登録変更をすることも忘れてはいけない。マイクロチップを装着している場合も連絡先が変わる場合は変更届けが必要だ。また、 遠くに引っ越す場合は、新居近くの動物病院を見つけておくとよい。信頼できる動物病院を見つけ、必要な場合はすぐに相談できるようにしておくと緊急の時も安心だ。 転居先もペット可の住宅を選ぶことは、ペットと暮らしているものにとって当然のこと。将来、 転居や転勤があるかもしれないことを想像し、日本の住宅事情を踏まえて、ペットを迎える時は慎重に。そして、ペットを迎えるなら、家族の一員としてその命と幸せに、最後まで責任を持ってほしいと思う。 (Eva代表理事 杉本彩)

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 杉本彩さんと動物環境・福祉協会Evaのスタッフによるコラム。犬や猫などペットを巡る環境に加え、展示動物や産業動物などの問題に迫ります。動物福祉の視点から人と動物が幸せに共生できる社会の実現について考えます。

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