茨城県内、就活が本格化 安定や職場環境重視 企業は休日数アピール

就職活動の学生に業務内容などを紹介する企業担当者=水戸市新原

2025年春に卒業予定の茨城県内学生の就職活動が本格化している。コロナ禍からの経済回復や企業の人手不足などから、求職側に有利な売り手市場が続いており、学生からは企業に安定や働きやすい環境を求める声が上がる。企業側は年間休日数や健全な経営状況などをアピールし、学生の囲い込みを狙う。

水戸市内で5日開かれた就職セミナーには、地元企業を中心に約70社の採用担当者らが顔をそろえた。多数の学生が訪れ、各社のブースでは担当者が業務内容や業績について、学生にアピールする姿が目立った。

求職する側が有利な売り手市場。学生たちには慎重に企業を選ぼうとする姿勢が目立つ。採用特化型広告事業などを展開するインタツアー(東京)が25年卒学生を対象に実施した調査によると、企業選びで重視するのは「社風に引かれる」との回答がトップ。次いで「人(社員)に魅力を感じる」「自分が成長できる」などの回答が続いた。

桜川市出身で神奈川大3年の竹川真未さん(21)は「県外へ出て茨城の良さに気付いた」とUターン就職を希望。「給与が高くても仕事が続かなければ意味がない。仕事選びでは人間関係や働きやすさ、経営の安定を重視したい」と話した。

県内福祉施設への就職を希望するという常磐大3年の鈴木修太さん(21)も「職場の雰囲気や希望職種に就けるかどうか」を重要なポイントに挙げる。

こうした学生の志向に沿うように、県内企業は自社に関心を持ってもらおうと懸命だ。

県内で食品スーパーを運営する小売業「カワサキ」(水戸市)では25年4月に1~5人の採用を計画。「小売業は激務」というイメージ払拭を狙って、年間120日の休日を前面に出して学生にアピールする。

約15人を採用予定というディーラー「スズキ自販茨城」(同市)の担当者は「ブースに来る学生が減り、厳しい状況」と吐露。このため、説明会へのブース出展だけでなく、インターン制度などを通して早くから学生にアプローチしているという。

企業の採用活動を巡っては、予定採用人数が確保できない企業も少なくない。就職情報会社マイナビによると、企業が新卒採用を実施する理由で多いのが「退職者の増加」「前年に新卒採用ができなかった」などで、必要な人員確保が難しくなりつつあるのが実情。多くの県内企業もこうした状況に置かれているとみられる。

マイナビ茨城営業部の遠藤友貴部長は「働き方や福利厚生、職種など、学生からの要望にどれだけ応えられるかが、企業の(採用活動で)課題となっている」と話した。

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