暑く、雨の多い日本で“優秀なワイナリー”が続々登場…「和食とのマリアージュ」も楽しめる日本ワインの魅力【ワインエキスパートが解説】

日本の気候は、ワイン用ブドウを栽培するには暑すぎたり、降水量が多すぎたりとさまざまな課題を抱えていましたが、生産者のたゆまぬ努力の結果、日本からも優秀なワイナリーが続々登場しているといいます。本記事では、Tamy氏の著書『世界一おいしいワインの楽しみ方』(三笠書房)より一部を抜粋し、ブドウの産地ごとのワインの違いや、おすすめの日本ワインについてみていきます。

ワインの世界地図

年間を通じた平均気温や日照時間、降水量などが品質に影響するワイン造りは、主に北緯30度〜50度、南緯20度〜40度の地域で行われており、北半球と南半球にそれぞれ帯状に広がるこのエリアは「ワインベルト」とよばれています。

温暖化の影響で、この範囲は今後移動していくといわれているものの、世界の高品質なワイン用ブドウは、この2本のワインベルトの中で栽培されているのです。

温暖な地域では、ブドウの果皮がしっかりと色付くため、ワインの色調も濃くなります。糖度とともに発酵後のアルコール度数も高くなり、穏やかな酸味のワインが造られます。

一方、冷涼な地域では、ブドウの果皮が色付きにくいため色調は薄く、アルコール度数の低いキレのある酸味のワインになるのが一般的です。

農作物の栽培には、豊かな土壌が適しているものですが、ワイン用のブドウに関してはそうではありません。肥えた土地だと、果実より枝や葉が育ってしまうからです。

ワイン用ブドウは、木が水分や養分を求めて深く根を張ることで良質な果実が生まれるため、水はけがよく痩せた土壌が適しているのです。そうした厳しい環境で育てられたブドウは、根から吸収した栄養をしっかりと果実に蓄積し、質の高いワインになります。

「痩せた土地」と「肥えた土地」のブドウの違い

ワイン用のブドウ栽培に適した条件

エリア…北緯30度〜50度、南緯20度〜40度

年間平均気温…10℃〜16℃

開花から収穫までの日照時間…1250時間〜1500時間

年間降水量…500㎜〜800㎜

北半球の主なワイン生産地

フランス、イタリア、ドイツ、ハンガリー、オーストリア、ジョージア、ポルト

ガル、スペイン、アメリカ、カナダ、日本

南半球の主なワイン生産地

オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチン、南アフリカ

日本でのワイン用ブドウ栽培には課題も多かったが…

日本でのワイン造りは、明治時代に現在の山梨県甲府市で始まりました。その後、山梨県のほか、長野県、山形県、北海道など、日本全国に広がっています。

ワイン用のブドウを栽培するには、日本の気候は暑すぎたり、降水量が多すぎたりと、課題もありましたが、生産者たちのたゆまぬ努力によって、日々進化を遂げています。

意外にも、ゆるゆるだった日本ワインのルール

日本ワインはルールが曖昧で、海外から輸入したブドウジュースで醸造したワインでも「国産ワイン」と表示されていました。しかし、2018年から国税庁が策定したワイン法が施行され、

「日本ワイン」は国産ブドウのみを原料とし国内で製造された果実酒

「国内製造ワイン」は国内製造された果実酒。海外の果汁が使われることも

「輸入ワイン」は海外から輸入された果実酒

と表示されるようになりました。また2018年から日本ワイナリーアワードも開催。受賞ワイナリーの格付けなどが行われ、大手メーカーから個人ワイナリーまで高品質なワインを造るワイナリーが認知されるようになってきました。

日々進化を遂げる日本のワイン

日本独自の品種も誕生

日本の固有種、白は「甲州」赤は「マスカット・ベーリーA」で、どちらも国際ブドウ・ワイン機構(OIV)に品種登録されています。とくに「甲州」は、日本で最も栽培されているワイン用ブドウです。

「甲州」という名前ですが、どこの地域で作られても「甲州」です。生食用で販売されていることもあるので、見かけた際はぜひ食べてみてください。

甲州ワインは、一昔前の香りも味もひかえめなイメージから、技術の向上によりフレッシュでクリーンな個性を感じられ、お寿司や天ぷらのような和食にも相性抜群です。「和食にワインなんて!」という方も、ぜひ和食×日本ワインのマリアージュにご挑戦を。

マスカット・ベーリーAは、1927(昭和2)年新潟県初のワイナリー、「岩の原葡萄園」の創設者である川上善兵衛氏によって交配、開発されました。アメリカ系ブドウ品種のベーリーとヨーロッパ系ブドウ品種のマスカットハンブルグが交配親です。名前にも引き継がれていますね。ストロベリーやキャンディのような香り。タンニンもひかえめで早飲みタイプが多いです。

そのほかに、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンなどヨーロッパでメジャーな品種も多く栽培されています。

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