【Netflix配信中】第96回アカデミー賞ノミネート作紹介!カンバーバッチ主演短編や『マエストロ:その音楽と愛と』『ナイアド ~その決意は海を越える~』ほか

Netflix『マエストロ:その音楽と愛と』『ナイアド ~その決意は海を越える~』『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』独占配信中

世界が注目する2024年のアカデミー賞だが、ひと昔前までは日本で劇場公開される一部の作品を観ることはできても、受賞作、ノミネート作を網羅するなんてほぼ不可能だった。しかしいまは事情が違う! 動画配信サービスのおかげで、技術賞や短編ドキュメンタリーのようなマイナーな部門でもチェックできる作品が激増したのだ。

そこで、授賞式も間近に迫った第96回アカデミー賞のノミネート作品から、配信で観られる作品をいくつかピックアップして紹介してみよう。

『マエストロ:その音楽と愛と』

ノミネート:作品賞、主演男優賞、主演女優賞、脚本賞、撮影賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、音響賞

作品賞、両主演賞という目玉部門も含む全7部門ノミネートとなった、アメリカが誇る作曲家・指揮者のレナード・バーンスタインと妻フェリシア・モンテアレグレの伝記映画。映画スターのブラッドリー・クーパーが『アリー/スター誕生』(2018年)に続いて主演を兼ねた監督第2作でもある。

クラシックの名指揮者であり、『ウエスト・サイド・ストーリー』のようなブロードウェイミュージカルも手掛けたバーンスタインの生涯を描くにあたって、ブラッドリー・クーパーはコンサートやミュージカルの形式を取り入れ、遊び心あふれる映像表現を追求。映像と音楽、音響と演技が渾然一体となったアグレッシブなアプローチはかなりの攻めっぷりだと思うのだが、賞レースでは思いのほか存在感を発揮できていない。しかし、クーパーの監督&俳優としての才能、そして主演女優賞候補となったキャリー・マリガンの凛とした名演技がギュッと詰まった力作であり、ゲンコツのようなインパクトを堪能して欲しい。

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『ナイアド ~その決意は海を越える~』

ノミネート:主演女優賞、助演女優賞

ノミネート数の多さが作品の優劣を決めるわけではないが、主演女優賞と助演女優賞にノミネートされている『ナイアド ~その決意は海を越える~』の最大の見どころは、実在のアスリートを演じたアネット・ベニングと、その挑戦にとことん付き合った親友役のジョディ・フォスターであることは間違いない。

まず、基になった実話がぶっ飛んでいる。元水泳選手のダイアナ・ナイアドは、20代のときに失敗した、約180キロのフロリダ海峡を一気に泳ぎ切るという前人未到の偉業に、60歳を機に再チャレンジしようとしたのである。そもそもが潮の流れが早く、サメや毒を持ったクラゲがウヨウヨする海を3日間泳ぎ続けないといけないのだから、老若男女関係なく狂気の沙汰としか思えない。しかしナイアドは、何度失敗しても取り憑かれたような意思の強さでまた荒海に分け入っていくのだ。

アネット・ベニングは、ナイアドの強烈な個性と不屈の魂を、現在65歳の年齢をものともしないエネルギーで体現。ジョディ・フォスターも、ナイアドのテンションに負けずに叱咤激励するトレーナーのボニー・ストールを大熱演。正直、こんな挑戦は無謀だと思ってしまうが、この女性コンビのパワーには圧倒される!

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『伯爵』

ノミネート:撮影賞

スティーヴン・ソダーバーグ、トッド・ヘインズ、ロバート・アルトマンらと組んできた名手、エドワード・ラックマンが撮影賞にノミネートされた本作は、チリの大統領であり独裁者として悪名を馳せたアウグスト・ピノチェトが、実は永遠の命を持った吸血鬼でした! という、とんでもないアイデアで魅せるダークコメディ。

フランス革命から現代まで独裁者の系譜をファンタジーに置き換えた物語で、ぶっちゃけ歴史に相当詳しくないとすべてを理解するのは至難の業。しかし何がなんだかわからんけど、圧倒的に美しい映像を眺めていると、この奇妙キテレツな怪作が一遍の詩のようにも思えてくるから不思議なもの。アタマで考えるのは後回しにして、映画とは映像のメディアであることに改めて打ち震えていただきたい。

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『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』

ノミネート:短編実写映画賞

短編部門にまさかの超大物が参戦!『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001年)『アステロイド・シティ』(2023年)のウェス・アンダーソン監督による、39分の短編映画がノミネート入りしたのだ。

ウェス・アンダーソンといえば、異様にシンメトリーにこだわった箱庭的映像を駆使した唯一無二の世界観で知られ、近年はもう「ウェス・アンダーソン」としか呼びようのないジャンルをますます先鋭化させている。正直、映像や雰囲気は好きだけど、どこまでついて行けているのかわからないという人は筆者だけではないはずだ。

しかし39分のサイズ感は、ウェス離れした人にこそオススメしたい。ロアルド・ダールの短編小説を原作に、ギャンブルのために透視術を身に着けようとする男の数奇な人生を描いた摩訶不思議な物語は、凝りに凝った絵本を見ているようで実に楽しい。

さらにウェス・アンダーソンは予算より安くこの映画を完成させて、残った製作費でさらに同じ趣向の短編を3本作ってしまった(すべてNetflixで視聴可能)。どの作品にもベネディクト・カンバーバッチ、レイフ・ファインズ、デヴ・パテルらが出演していて、まるで一座の公演を見ているかのような感覚もクセになる。

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今回はたまたまNetflixに偏ってしまったが、本当にたまたまであって他意はないのですと言い訳をしておく。とはいえアカデミー賞にNetflix作品がガッツリ絡むようになったのは近年顕著な傾向であり、いまやハリウッドの勢力図と配信サービスの動向は切っても切り離せない。ランダムに選ぼうとしてNetflix作品にぶち当たるのは、それだけ充実しているということでもあるのだ。

第96回アカデミー賞授賞式は3月11日(日本時間)開催

クリストファー・ノーラン監督やマーティン・スコセッシ監督作、キリアン・マーフィーやロバート・ダウニー・Jr.、ロバート・デ・ニーロ出演作などラインナップ「2024年(第96回) アカデミー賞ノミネート関連作」はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年3月放送

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